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Re:ひねくれヒーロー

作者:無花果
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第一部
死と共にはじまるものは、生である
  24時間営業中

 
前書き

家庭——最後の頼みの綱として語れる場所。24時間営業中。
—ビアス—
 

 



ナルトと同居生活を始めて早一ヶ月
いつのまにやら食事担当はオレになり、洗濯(主にオレの血拭きタオル)担当はナルトになった
ナルトは有り得ないぐらい野菜を食べないし、放っておくと三食ラーメンで済まそうとする
好物だから良いかもしれないが・・・飽きないのだろうか
今でも三日に一度はラーメンを出してはやるが、野菜炒めをのせたりと工夫している
野菜食え!

そしてオレが気を使っているのか
初めての同居人に対し、人見知りが発動しているナルトのおかげか
同居生活は十分に機能していた
起きぬけにお互いの顔を二度見し合うのはもはや日課となった
何やら気恥しいものがあり、顔をそむけて赤らめることもある ちくしょう
そんなオレ達を確認し、自来也は取材旅行に行くと木の葉を発った
大蛇丸や暁についての動向を調べに行ったのだと、信じたい
信じたかったのに向かう先は温泉で有名な観光地だった
人を信じるって、何なんだろう

「ナルトー、弁当出来たから鞄に入れとけー」

弁当作りを終え、洗いものに取りかかる
朝食を終えたテーブルを拭いていたナルトが、弁当を詰め始めた
洗いものを終え、支度を整え、家を出る
今日こそ早退せずにアカデミーを終える、そう心に決めアカデミーに向かった





教室に入るとサスケを中心に輪になった女子が騒いでいた
朝っぱらから元気だなお前ら、オレにその元気を分けてくれ
後生だからなどと他愛ないことを考え、彼らを生温かい目で見守った
そんな俺の様子に些か引いたようにナルトは瞳を曇らせた

「コン、顔がこわいってばよ」
「・・・だれかおらにげんきをわけてくれー」

半泣きでナルトに向かい手を伸ばす
切実な願いは顔を背けるというあっさりとした行為で流された
そんな俺達をシカマルとチョウジが生温かく見守っていることなどつゆ知らず
何やら視線を感じるなぁと思うことぐらいであった
そして2人の男女が近づいてくる

「おはらっきぃー、ナル君コン君」
「・・・さがそうぜ龍玉〜いや狐玉を・・・!」

男子はモノクルをかけた、口元をバンダナで隠しつつも隠しきれない含み笑いが特徴の――油女シュロ
女子の方は天然パーマを高い位置で結わえた、雪のように白い肌の志村イカリ
アカデミーで新しく友となった同士である
彼らについて思う所はたくさんある
しかし、イカリ、それだと九つ球を集めることになるのか?
というかドラゴンボールって全部で何個あるんだったか
2人揃ってオレ達を抱きしめ、あいさつを交わす
イカリに抱きしめられたオレ達を睨みつける遠くのサスケ・・・

「あぁ、青春だな」

イカリはくのいちクラスで五指に入る美人だからな
性格というか中身はともかく、そんな美人に抱きつかれて・・・気持ちはわからんでもない
オレだって中身の性別知らなきゃ惚れてたさたぶん

「気をつけろ青春師弟に目をつけられるぞ!」

シュロが慌てて止めに入る
俺は割とあのノリ好きだよ、黄金期の飛躍少年のようでは・・・いや違うな
そしてコイツは油女一族の異端児と呼ばれるだけあってうるさいな
無口が初期装備の油女一族なのに、こいつだけ何か違う
その理由もわかるのだが、油女と名乗られると首を傾げてしまう

「コン、今日の放課後は――あぁ、無理だな
 お前が入城したら話がある」

ナルトは自分がサスケに睨まれたと勘違いし、喧嘩を売りに行った
お前も元気だなナルト
おいシュロ、何故俺が放課後までいれないと思うんだ

「オレが保健室へ駆け込むこと前提に言うな、あと保健室はオレの城じゃねぇ」

保健室通いなのは否定しないが、今日ぐらい放課後まで頑張れるさ
あと別に保健室は俺の私物でもなければ居城でもない
・・・多分

「保健室の主が何を言う「え、何だ、ねたみの奴もう保健室行くのか!?」・・・あーあ」

イカリの言葉を遮って犬塚の奴が割って入ってくる
その光景にうんざりとしたイカリはため息をついた
編入初日からケンカして犬塚と仲が悪い、が、決してオレのせいではない
体が弱いことを馬鹿にしてくる奴が悪い
ギャンギャンと何事か喚いている犬塚を無視して席に着く
どうせ放課後になればシュロやイカリが勝手に集まってくるだろう
出席簿を持って入室してきたイルカを見ながらため息をついた

―――そういえば、もう一ヶ月経ったのか
出席を取るイルカの声が遠く聞こえる
最初にアカデミーに来た日は・・・酷かったなァ






◇一か月前◇





心臓が痛い
鼓動の速さが尋常ではない
あまりの緊張に血を吐きそうだ、いつものことだが
イルカに連れられ、とうとう教室の前まで来てしまった
というかもう教壇に立っている
視線が突き刺さり、そのまま黒板まで貫通するのではないかと錯覚する
怖い
転入生というのは質問攻めにされたりとチヤホヤされる立場―――とか思っていた過去の自分を殴りたい
この視線はツライ
時折緊張をほぐそうとこちらに笑いかけてくれるイルカの気遣いがまたツライ
飛びそうになる意識を手繰り寄せて、なんとか口を開く

「―――ねたみ、コンです 中途半端な編入ですがよろしくお願いします」

最低限の一言は言えた・・・!
ほっとしてしまったからか、急激に足の力が弱まる
立てなくなりへたり込んでしまった俺を、ナルトが心配そうな目で見つめてくる
イルカに支えられて立ち上がった

「――あ゛ーなんというか、ねたみはちょっと体が弱くてな
 今みたいに何かの拍子に倒れる事があるだろう
 その時は皆、実習で教わったように応急処置をしてあげるように」

あれ俺教材にされる?
生徒たちは一部を除きはーいと良い子の御返事をくれた
―――一部を除き、

「――うわーモヤシみてぇひょろひょろじゃねーか
 なぁ赤丸
 あんなのが忍者になれるかよ?」

・・・落ち着こう
素数を数えても落ち着けるわけがない
そう考えた時には体が動いていた
スローモーションで動く視界には驚いたような、戸惑ったような生徒たちの顔が見れた
一同を見渡した時にはもう、犬塚キバに掴みかかっていた

「――ッ
 なにすんだよモヤシ!!」

振り払われた手を見る
なんだか首筋と腹部がぞわぞわと総毛立つ
熱を持ち始めた腹部をそれとなく触りながら、低く、自分でも驚くほどに低く呟いた

「―――― ウ ル サ イ ――――」

一瞬ひるんだように瞬きした犬塚に、彼の首を狙って手を伸ばす
その様子を見て彼の愛犬、赤丸はひどく畏縮したようにか細い声を出した

「ッ キュゥンっ・・・?!」

まるで俺ではなく、別のナニカに恐れるように
犬塚はただやられてたまるかと蹴りをかましてくる
そのまま2人して取っ組み合いのケンカが始まった―――

「お前らぁ~!!
 いい加減にしろ!あとねたみは血を拭え!というか吐血して大丈夫なのか!?」

教師であるイルカの前でそんな喧嘩が始まる訳もなく
彼によって両者引き離され、騒動は終わった
初日にして乱闘(未遂)騒ぎを起こした転入生として、しばらく皆の態度がよそよそしいのは仕方ない
体の弱さをバカにすると血を吐きながら掴みかかってくる
そんな光景を目の当たりにした一部の者たちが俺を馬鹿にすることはなかった

しつこいほど絡んで来るようになった犬塚を除いて―――― 







過去の事を考えていると、いつの間にか寝ていた
机に突っ伏したまま、寝起きに吐血してしまい、それを教師に発見された
・・・結局、二時限目に保健室送りとなってしまった

「堂々とサボリか貴様ら」

まだ授業中だというのに、シュロとイカリまで保健室に居座っている
桶を抱えて血反吐を吐いてるオレを見ながら、弁当を取り出しやがった

「それでは第9回転生者会議始めるザマスよ!」

お茶と新しいタオルを配りながらシュロが宣言した
そう、何を隠そうここにいるオレを含めた三人は、転生者なのである
しかも、オレと同じように一度並行世界に転生してからこちら側に来ているのだ
それでもって、こいつら前世の性別と現在の性別が違う
シュロは元々女子高生で、イカリは大学生、男だったらしい
そのせいかイカリは自分の性別について悩み過ぎ、軽い鬱に陥っている

「宣誓!今週もワタクシ油女シュロは里の中心たる大広場でイカリはオレの嫁と叫ぶことを誓います!」

そういうことするからサスケから(恋の)ライバル扱いされるんだよお前は

「・・・宣誓、私志村イカリはシュロかコンと結婚することを誓います」

そういうこと言うからオレまでライバル扱いされるんですよイカリさんや

「コン君どう思いますか、この清々しいまでの二股宣言!」

二股かけられてるのに嬉しそうだなシュロ
いくら同じ転生者だからって惚れた女の二股発言を喜んではいけない

「オレを巻き込まないで頂きたい
 ・・・で、前回は自己紹介で終わっちまったけど・・・今回の議題は?」

前回は本当に自己紹介、
すなわちオレが人柱力であること、
シュロが油女シノと従兄弟であること、
イカリがあの志村ダンゾウの養女であること

内容が内容だっただけに話が重かった
特にイカリ

「うーん・・・今さら意味がないかもしれないけれど・・・
 原作介入する?しない?をはっきり決めちゃうおうぜ!」

ナルトと同居してる時点で介入してるような気がする

「前にも言ったが自来也に長門情報教えてあるから・・・あぁ、試験の話か?」

イカリが弁当の米で蛇を模る所を見ると――
中忍試験いや木の葉崩しのことを言っているらしい
器用だな

「自来也様はねーまぁ正直原作でも止めれなかったから、ストーリー通りになると思うよ」

・・・ということは死んでしまうじゃないか
せめて自来也は生存してもらいたいぞ

「卒業試験を半年後に控えた今、現在の成績から考えても私達が班になる可能性は高い
 体に問題があるが座学はサクラと同等な後衛コン、
 実技はサスケの次でナルト、キバと並ぶ馬鹿トリオな前衛シュロ、
 孤立しがちなコン、シュロと問題なく合わせられる忍術の評価が高いこの私が中衛
 中々バランスの取れた班じゃないか
 ・・・まぁイルカ先生のメモを盗み見したんだけどな」

流石に勉強について負けるわけには行かなかったので本気出した
小学生と同レベルとか嫌だという確固たる意志の元、先週あったテストでまさかのサクラと同点だった
・・・シカマルは、鉛筆ころがしてテスト回答してた
それにしても・・・

「「イルカェ・・・」」

アカデミー生に盗み見されるってどれだけうっかりしてるんですか貴方は・・・

「誰が担当上忍になろうと、オレの体力関係で推薦されないと思うけどな」

推薦されてもサバイバルで落ちるぞ?

「そういやそうだな、議題変えよう、サスケについてだ」

イカリはオレの嫁なんだからフラグは断固阻止するとか意気込んでる
里抜けの話じゃないのか?

「・・・やっぱりどこでフラグを立てたかさっぱりわからん・・・」

頭を抱えだしたイカリ
お前髪の毛長いし綺麗だから好かれたんじゃないか?

「顔立ちはミコトさんに似ているし、お淑やかに見えるし髪の毛ふわふわだし・・・
 何より騒がしくない」

「やめて・・・落ち込む・・・」

「シュロ君は彼をボコボコにへこましたいです、てへぺろ」

好きなキャラはサスケだと自己紹介したお前は一体どうしたいんだシュロ




 
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