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Sword and magic of fantasy

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Prologue

ここは、国の王宮から一番遠くにある、小さな鍛冶屋。
鍛冶屋の看板は黒ずんでいて文字が読み取れない

その鍛冶屋から南に五歩ほど行くと、そこには『これ以上先、資格を持つもの以外の外出を禁ずる』
…と無感動な黒の太字でつづられている。
つまり、ここから先は『危険区域』となっている。

何故か?
この『危険区域』は国境という事であり、
ここから先は十数年前より、怪物(モンスター)があらわれ、支配しているためある。

怪物(モンスター)は、魔法という攻撃以外、物理的攻撃が一切効かないので、生物界最強と言われている。
最近では、国内でMPチェックという魔力の検査があり、
護身用に魔力に見あった魔法武器が貰える。


昔は『危険区域』の立札も無く、国境の出入りは自由だった。
ここより先は未開の地なので金儲けで国境を出る輩も少なくはなかった。
しかしその輩達で帰ってきた男がいたなどという話は聞かない。

「ここより先は楽園で、ちんけな国などには帰りたく無いのだろう」
と国民達は噂し、瞬く間に話題となった

話の真相を確かめるべく、国王は国境外に軍隊を派遣した。
しかし通信はおろか、生還した者は誰一人いなかった

この結果に国民達は喚き、
国外の事を噂さえ拒むようになった。

国王は、国外を『危険区域』とし、正式な資格を持つ狩人(ハンター)以外の出入りを禁じた。


その国境から最も近い鍛冶屋には一人の青年が住んでいた。

とは言っても青年は加工なんて出来ないし、もう営業していない。

彼は捨て子で、ここの鍛冶屋の男が『危険区域』で当時赤ん坊だった青年を拾い、育てた。

男は最も好きな漢字で青年に『(つるぎ)』と名付けた。

男は剣を作っていて、(つるぎ)に鍛冶屋を継がせようと思ったのだが、
(つるぎ)は見事に加工のセンスがなく、加工の感心すら無かった。

しかし(つるぎ)には一つだけ、生まれついての『才』があった。


その名前の通り、剣の技術だ。


鍛冶屋の男は、磨雅月(まがつき)家と言って昔から代々と受け継がれてきた、伝統的な一家である。

鍛冶屋の男はある日急に居なくなり、死んだと思われた。
青年…(つるぎ)は、鍛冶屋の男が帰ってくるまでその男の残した魔法剣で鍛冶屋を守り抜くことに決めた

その青年はその名字を背負って生きていく事となった。

―――――――――――――――――――――



「…新手か?」
赤髪の青年、磨雅月(まがつき)(つるぎ)はため息混じりに呟く。

ドシンドシンと大地を震わすように踏み締める足音が聞こえる。


巨駆(きょく)と言える程の厚みと重みを持つ(けん)を片手で持ちあげ、(つるぎ)は再び大きくため息をついた。

耳を澄ませると大地を揺るがす音以外に声が聞こえる。


『Gyrrr…』
獰猛でどこか邪悪なうめき声…

(つるぎ)は眉をピクッと嫌そうにあげて、三度めのため息を吐いた。




「めんどくせぇ…」



(つるぎ)は頭をボリボリと掻きながら、右手の大剣(たいけん)を肩に担ぎ上げ鍛冶屋からでた。

鍛冶屋の外に居たのは、爬虫類の鱗に、硬い甲羅を持った巨大な『亀』だった


「あのですね~、すいませんがうるさいんで黙ってください」
覇気の全くこもっていないやる気のない声で言った。

呻き声の主は、(つるぎ)の言葉が理解できていないらしく、青年を見て、直ぐに巨大な腕を降りおろした。

鍛冶屋の二、三倍はあると思われる。

(つるぎ)(けん)を抜き、降りおろされた腕を側面でガードしてそのまま巨大亀の力を跳ね返した。

…一トンはあろうかという巨大な腕を…


「ちょっと勘弁してくれよ…この鍛冶屋は壊されたくねぇんだよ…」

巨大亀は少し警戒して(つるぎ)から下がった。

「…そのくらい知性があるなら帰ってもらいたいんだがな…」

(つるぎ)は、(けん)を再び担ぐ。


巨大亀は今度は突進をしてきた。
全体重をかければ人間くらい潰せると思ったのだろう。
この亀の全体重は三トン程、普通の人間はまず助からないだろう。


だが、(つるぎ)は、違った。


亀の突進を片手で止めた。

そして(けん)を地面に放して、もう片方の手で下から顔面を殴った。

…この世界において魔法以外で怪物を殺傷する事は不可能なので、ダメージは無いが、たまらず上に跳んだ。


(つるぎ)は、地面の剣を拾って亀に向かって思い切り跳躍した。


亀は甲羅で身を固める

(つるぎ)は、魔法剣をそのまま亀の甲羅に振り下ろした。


魔法剣は散らすことなく、甲羅に(けん)の二トンもの衝撃を与えた。

亀はものすごい勢いで地面に急降下した。

甲羅は空中でばらばらになり亀は自分を防護する手段をなくした。


(つるぎ)は空中で体制をたてなおし、剣身を下に突きつけて重力のままに急降下する。



「死ね」


その短い言葉とともに落ちてきた(けん)は亀の頭を貫いて活動を制止させた。


(つるぎ)は亀に刺さった(けん)を抜いて立ち上がった。



やがて剣身を指でなぞり満足げに言った。


「…これでしばらくは亀鍋でも食うか」



(つるぎ)は倒した亀を引きずってどこかへ向った。 
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