魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~
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Epico8祝福の風を受け継ぐ者~Reinforce Zwei~
†††Sideはやて†††
4月も半ばに入った今日この頃。わたし、ルシル君、リインフォース、シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ、八神家勢揃いでミッドチルダ北部はベルカ自治領ザンクト・オルフェンへと赴いた。
「いよいよなんだなぁ~、新しい家族の目覚め♪」
後頭部の後ろで手を組んで前を歩くヴィータがそう言うてわたしらに振り返って後ろ歩きになる。今日ここに訪れた理由は、祝福の風リインフォースの後継騎である新たな八神家の末っ子、リインフォースⅡを起こしに行くため。で、今はヨーロッパのような街並の中をみんなで歩いて、サンクト・オルフェンの最北部――ノーサンヴァラント海の海岸に向かってる最中や。
「そうだ。みんな。今日から私の呼び名は、アインス、だ。そしてリインフォースⅡのことは、リイン、と呼ぶようにな」
わたしの乗る車椅子を押してくれてるリインフォースがそう言うた。それは以前から決めてたことやから、みんながそれぞれ頷いて応えた。わたしも「うん。アインス」って、リインフォ――やなくてアインスに振り返って笑顔を向ける。アインスはわたしやみんなを順繰りに見回した後、「はい」微笑んでくれた。
「リインが新しくはやての融合騎になるわけだな~」
「アギトちゃんとアイリちゃんが戻ってくれば、もっと賑やかになるんだけれど・・・」
シャマルがポツリと漏らすと、アインスにシグナム、ヴィータとザフィーラも口を閉ざした。炎の融合騎アギト、氷の融合騎アイリ。古代ベルカ時代、アインス達と一緒にかつての夜天の主オーディンさんの家族として過ごしてた子らで、今は残念ながら行方不明。もし見つけて合流できるんなら、八神家に迎え入れたいと思う。
「早く見つけてやんねぇとな~。砕け得ぬ闇事件ん時に、あたし約束したんだよ。絶対にまた逢える、って。アイツらを必ず見つけ出す、って。それまで待っていてくれ、って」
「ならその約束を果たさねばな」
「ああ。・・・私が旅立つ前にもう1度、アギトとアイリに逢ってみたいな」
アインスが寂しげに言うた。あと2ヵ月もあらへんアインスの寿命。その内に何百年も行方不明なアギトとアイリを見つけ出すなんてまず不可能やって思う。そやけど、アインスのその願いを叶えたいと強く思う。
「アギトとアイリに関しては、シュテルンベルク家が専用の捜索隊を創設しているそうだから、そちらも当てにしよう」
シャルちゃんから聞いた話やと、融合騎捜索隊が設立されてからもう2百年って話や。それでもまだ見つけられへん。
「そう言うルシル君も、2人の目撃情報とか管理局のネットワークで調べてくれているのよね?」
「真正古代ベルカの融合騎なんて、喉から手が出るほどの存在だからな。それを鑑みるとすれば・・・。シュテルンベルク家の手を離れ、そして今もなお生きていると言うのなら・・・誰かの手に渡っているか、どこかの古代施設に閉じ込められているか、どちらにしても自由の身じゃないのは確かと見ていい」
ルシル君は、わたしらチーム海鳴のメンバーの中でも特に情報関係の仕事の研修を受けてるから、誰よりも情報収集に優れてる。そんなルシル君がそう言うんなら、アギトとアイリはそうゆう状況なんやろうな。
「ルシル。このままあの2人の情報収集を続けてもらえるか?」
「もちろんだ、アインス。オーディンの家族だったのなら、俺たち――八神家でもある。ま、親権についてシュテルンベルク家とちょっとごたごたが起きるかもしれないけどな。そこは伝説に語られるグラオベン・オルデンからの説得を受ければ、なんとかなるだろう。な? みんな」
「ああ」「おう」「はいっ」「うむ」
アギトとアイリを迎え入れた後のことを話してると、「――あ、見えてきたな」いつの間にやら目的地に到着や。古代ベルカの中でも最高の技術力を有してたってゆう大国イリュリアの技術を全て継承してる技術者であるミミル・テオフラトゥス・アグリッパさんのお家が見えてきた。海岸から少し離れた小島に建つお城で、名前をエンシェントベルカ技術宮。わたしとアインスが何度もお世話になってるところや。
「いつ見てもいいなぁ。海上に浮かぶ小島に建つ城。ベルカの街並みは本当に美しい」
「あはは。ルシル君、ホンマに好きなんやなぁ~、ここザンクト・オルフェンの景色が」
「まあな。俺のアースガルドもそうだったから」
「ルシル君の故郷・・・フェティギアやったな。いつか行ってみたいなぁ」
「・・・そうだな」
ベルカの街並みが大好きなルシル君が言うには、このエンシェントベルカ技術宮はデンマークにあるクロンボー城に似てるって話や。四角形の建物の内側に中庭があるお城やな。そんで、外から見えへん中庭で、製作・再現された技術を試験運用したりしてるようや。そんで外界に出して良いようなモノやあらへん時は、地下に封印とか解体・破棄するって聞いた。
「みんな、こっちや。アインス」
「はい、主はやて。みんな、付いて来てくれ」
ルシル君たちみんなは、わたしとアインスを迎えに来てくれた際には技術宮の近くまでは来たことはあるけど、中に入ったことはあらへん。そやから中の案内が出来るのはわたしとアインスだけや。
「あの門には進入者を感知する機能があって、ミミルさんの入城許可のない人は強制転移でミッドチルダのどこかに飛ばされるって言うてたけど、ホンマなんかなぁ・・・?」
海岸と小島を結ぶ30mほどの石製の橋(ローマ水道みたいなアーチ橋で、コレもルシル君のお気に入り)を渡る。そんで渡り終えようとゆう頃、小島と橋の境界に立つ扉の無い門が視界に入る。門には島に入って来た人を特別な技術で感知する機能が有って、ミミルさんが入ってええって決めた人は問題なく入れるけど、許可のない侵入者の場合は強制転移やって聞いた。
「ミッドのどこかと言うのが地味に恐ろしいな」
「下手すりゃ海のど真ん中だってこともあるってことだろ?」
「ミミルの話によれば、これまでに企業スパイが3ケタ近く侵入、その悉くを強制転移させたそうだ」
シグナムとヴィータにそう返したアインス。中には聖王教会の施設ん中に転移してもうて、酷い目に遭った人も居るとか居らんとか。でもま、その人らは許可なしが原因の自業自得。わたしとアインスはもちろん、ルシル君たちも事前にミミルさんが入城許可を取ってくれてるから問題はない。
「ちなみに、この門以外から、例えば・・・空から侵入しようとしたら、対空迎撃用の魔導兵器で迎撃、万が一掻い潜ってもこれまた結界でランダムに強制転移されるそうだ」
「あー、あの屋根んところからチロッと出てる砲身みてぇなやつだよな」
「アレはガトリングガンだな。質量兵器ではなく魔導兵器だからと言って、よく教会や局に運用が許されたなぁ」
技術宮の屋根に備え付けられた全20門のガトリングガンをわたしも見上げて見る。アレらもまたこれまでの侵入者を拒んできたモンや。そんなセキュリティが万全なここ技術宮のある小島にわたしら八神家は安全に入る。
門を潜るとき全身がピリッと弱く痺れるんやけど、「んぁ」体の隅々まで見られてるような気がしてちょう恥ずかしい。門を潜って敷地内に入って、技術宮のエントランスドアの前へ。するとわたしの面前に空間モニターが展開される。
「えっと・・・パスワードっと」
そんでミミルさんが作った技術宮管制AIから毎朝送信されてくるパスワードを入力。技術宮のエントランスドアを開くパスワードは毎日変わるらしくて、もし間違えたら・・・ドア手前の落とし穴に落っことされて人体実験される・・・らしいわ。そやから毎回パスワードを打ち込むときは心臓バクバクや。
「・・・アインス。これで合うてるよな」
「・・・はい。合っていますよ、主はやて」
アインスに確認を取る。わたしとアインス、2人で間違ってないかキッチリ確認するようにしてる。2人揃って落とし穴に真っ逆さまなんて絶対に嫌やしな。確認した後、パスワード入力キーを押す。
すると、『いらっしゃい~』間延びしたミミルさんの声が放送で流れてきた。これもいつも通りのことで、流されたミミルさんの歓迎の挨拶は録音されたものや。その声が合図となって両開きのドアが開く。
「じゃあ行こか。アインス、リインのとこへ行くよ」
「はい、主はやて」
ドアを潜って技術宮内に入る。すると目に見えて「そんな気はしてたが・・・」ルシル君が肩を落とした。シャマルが「どうしたの?」そう訊くと、「内装がちょっとな」ルシル君はそう言って肩を竦めた。
「まぁ、外観とは違くて内装は機械でビッシリやしなぁ」
鋼鉄で舗装された床に壁に天井、機械部品がその四面から突き出してる。まぁ車椅子が通れるほどには広さがあるから、移動には別段困ることはあらへんからええけどな。突き出してる機械を避けながら廊下を進んでると、「今日は現れませんね」アインスがそう言うた。
「何が?」
「ミミルさんの使い魔さんで、ウサギを素体にしてる女の子2人でな」
「フラメルとルルスという名で、初めて技術宮を訪れた際にミミル博士に紹介され、ここに来るたびに何かと世話になっているんだが・・・」
見た目はわたしらほどの子供やけど、フラメルちゃんとルルスちゃんが言うにはわたしらの3倍は生きてるって話や。その2人が姿を見せへんゆうことは、街に出かけて買い物かもしれんな。家事全般を担ってる子らやし。
「ま、居らんのならしゃあないな。このまま向かお」
南に位置するエントランスから真逆の北に位置する地下技術開発区へと降りるトランスポーターに移動、「そんなに大きないで、順番に乗ってこ」そんで2人ずつ乗って、リインフォースⅡの居る部屋がある地下3階へ向かう。
「アースラみてぇな内装だなぁ。すげぇ歩きやすい」
ヴィータの言う通り地下は1階とは違って突起物があらへん綺麗な廊下が広がってる。ここ開発区では緊急事態が起こることもあるようで、全力ダッシュすることもしばしば。そん時に突起物に転んだりなんかしたら色んな意味で危ないからな。
そう説明した後、「目の前のドアの奥に、リインが居るんやよ」ドリットグレンツェ(第三境界って意味やな)って刻まれたプレートが掛けられたスライドドアを指差す。
「さ、みんなにお披露目や♪」
近付いたことで開いたスライドドアの奥、光溢れる部屋へと入る。20m四方の部屋の中央には7つの生体ポッドが円形状に設けられてて、その内の1つにみんなで歩み寄る。そんで、「あの子が、わたしらの新しい家族、リインフォースⅡやっ♪」ポッド内に漂う小さな女の子――リインをみんなに紹介する。
「おお! アギトやアイリみてぇにちゃんと小っこい!」
「末っ子やからな♪」
「前に写真で見せてもらった通りアインスに似てる♪ ホントの妹みたいね♪」
「それはまぁわたしのリクエストやしな♪」
アインスと同じ髪色に髪型。目の色は、今は閉じてるから見えへんけど深紅やなくて青色や。そっくりそのままやとアインスの身代わりみたいなことになると思うたから、顔のパーツは色々とちゃう。アインスの代わりやなくて妹みたいな感じにしてみた。
「ルシリオン。いくら融合騎であっても少女に代わりない。我ら男がそう裸体をまじまじ見るものではないと思うのだが・・・」
「え? あ、あー・・・そうだな」
ザフィーラとルシル君がスっと裸のリインから目を逸らした。んー、これはギリギリセーフやと思うわ。リインが目を覚ました後やったら完全なアウトやったけどな。ヴィータから「ルシルのスケベ~♪」なんてからかわれてるルシル君にはちょうごめんなさいや。
「さて。・・・どないしよう・・・?」
腕を組んでうーんと唸ると、「起こそうよ、はやて!」ルシル君をからかうのにもう飽きたらしいヴィータにそう言われた。確かに、完成後のリインの所有権はわたしら八神家に移るし、いつでも連れて帰ってもええってミミルさんに言うてもらってるけど・・・。
「とにかく起こして見ましょう、はやてちゃん♪」
「そうやな・・・。うん、起こそうか。アインス、お願い出来るか?」
「はい。判りました。リインフォースⅡ、覚醒シークエンスを開始します」
壁に設けられてる機材にアインスがひとり向かう。そこで生体ポッドの操作を行えるからな。ここの機材はミミルさんの自作、つまり趣味によるもので、その全てがピアノ型・パイプオルガン型ばかり。ちなみにこの部屋の機材はオルガンや。オルガンの前の椅子に座って、「やはり緊張するな」そう言うて深呼吸するアインスの後ろ姿にわたしもドキドキや。
「アインス、綺麗ね~♪」
「本当に美しいな」
「ああ」「だな~」
「ホンマにな」
シャマルとルシル君に同意するシグナムにヴィータ、そんでわたし。アインスの弾くオルガンの音色に耳を傾けてたいけど、リインの漂うポッドに帯状魔法陣が螺旋状に展開されて、ポッドのガラスが上にスライドして開いてく。それと一緒に漂ってたリインがゆっくりと降りて来るから、「シグナム、支えてもらえるか?」手を伸ばす。
「はい。しっかりお支えします」
「あ、私も!」
シグナムとシャマルに両側から支えられながら車椅子から立ち上がって、ポッド内に両手を出してリインを受け止める。とても軽くて小さくて、そんで生きてる証拠に温かな体や。わたしはもう1度車椅子に座らせてもらう。
「シャマル。バッグに入ってる服を」
「あ、はい。リインちゃんのお洋服ですね!」
シャマルが肩から提げてるポシェットにはリイン用の服がしまってある。ポシェットから服を出してくれた。下着にキャミソールワンピースに7分丈のレギンス、そんでブーツ。全部、ルシル君のお手製や。
わたしは料理は得意やけど裁縫はサッパリで、雑巾くらいしか作れへんレベルや。シャマルもアインスもな。さすがに市販の人形の服を買うのもなんや気が引けたから、オーダーメイドで作ろうって話になって・・・。
・―・―・回想や♪・―・―・
「――う~ん・・・」
リインフォースⅡを一緒に生み出すことになってくれたミミルさんの家――とゆうよりは城のあるミッドから海鳴市の自宅に戻って、夕ご飯をみんなで食べて片付け終えた後、わたしはソファに座って腕を組んで唸った。
「どうかしましたか? はやてちゃん」
「なんか悩み事? あたし達で手伝えることかったら何でも言って!」
わたしの両隣に座るシャマルとヴィータに、「リインフォースⅡの衣類についてちょうな~」わたしの悩みを打ち明ける。ツヴァイの背格好は、手の平サイズな妖精タイプ。そんな小さな子の服なんて売ってるわけもなく・・・。
「あー。でも売ってないなら作れば良いんじゃない?」
「「・・・」」
シャマルと目が合って、「出来る?」「出来ますか?」同時に訊き合った。そんでまた無言。ヴィータが「シャマルはともかく、はやても出来ないの?」小首を傾げて訊いてきた。
「ひどい! 私はともかくなんて! そりゃ出来ないけど!」
「あはは、わたしも出来ひんなぁ。雑巾くらいしか作ったことないわぁ」
服を丸ごと作るなんて芸当、わたしは習得してへん。ま、そこからの流れでいっぺん作ってみようってなった。
次の日、色んな種類と柄の服を作るために生地を何十種と購入。もちろん独学で一から作れるほどの才能アリと違うから、服の作り方が書いてある本も一緒に購入。自宅に戻って、物置からミシンをザフィーラに取って来てもらって、いざ本を開いて手順を確認っ。
「――って、結構やることあるんやなぁ~」
「まずデザイン画を描かないとダメなんですね~」
「うん。そんじゃあみんな、ツヴァイに着せてみたいって服をイメージして描こうな」
わたし、ヴィータ、シャマル、リインフォースの4人でツヴァイに着せたい服のイメージ画を描くことに。わたしとリインフォースはツヴァイに直接会ってるからすぐにイメージが湧くけど・・・
「そういや、あたしリインフォースⅡとは会ったことねぇんだよな~・・・」
「リインフォースをそのまま小さくしたようなものなんですよね? はやてちゃん」
「うん、そうやな」
「アギトやアイリと同じ背格好で、髪は私と同じ銀で長く、瞳は私とは違って柔和な目つきで色は青だな」
リインフォースが人差し指を立てて説明した。ヴィータもシャマルもそれでイメージが固まったようで画用紙に描き始めたから、「リインフォース。わたしらも」画用紙にイラストを描き始める・・・んやけど、わたし・・・絵心ないなぁ・・・。ふにゃってなってる服のイラストに頭を抱える。騎士甲冑のデザインは上手くいってたんやけど。何がアカンのやろ・・・?
「出来たっ!」
ヴィータが立ち上がった。そんで「こうゆうのはどう!?」自分が描いた服のイラストを見せてくれた。うん、ヴィータもなかなかの芸術肌やった。ヴィータはなんて言うかパンク?系の服が好きで、イラストにもドクロがでかでかと描かれてた。リインフォースⅡにはちょう合わんかなぁ。
「良いと思うんだけどなぁ~。う~ん・・・」
「出来ましたっ!」
納得できひんと言うように渋々座って新しいイラストを描き始めたヴィータに代わって、シャマルがビシッと挙手。そんなシャマルの描いたイラストをみんなで見る。シャマルはなかなかに上手な絵を描いてて、「おお」感嘆の声が漏れた。
「きっと可愛い系が似合うと思うんです♪ ですから、目覚めが春頃だということで、キャミソールワンピースにしてみました!」
「採用!!」
シャマルの掲げて見せてくれた画用紙を指差してそう言うと、「やった❤ 楽しくなってきましたぁー!」ものすごい勢いで画用紙にイラストを描き始めた。シャマルの新たな才能の開花やなぁ。そう感心してると、「オーディンさんが・・・」シャマルがポツリと漏らした。
「シャマルって、お医者さんでもあったオーディンさんの手伝いをしてたんやったよな」
「はい。オーディンさんは医者の他にも服飾品のデザイナーとしても活躍していまして。その、何度かデザインを描いている姿を見たことがあって。その時に私も描かせてもらったことがあって。その経験のおかげですね、こういうのが得意なのは。服飾デザインについては一日の長です」
「そんなことやってたのか、知んなかったな」
「ああ。いつの間に・・・」
ヴィータはそうでもないんやけど、割と悔しそうな表情を浮かべたリインフォースの視線を受けたシャマルが「えっと、たまたまだから」苦笑しながら後ずさった。ま、とにかくデザインをイラスト化する作業はシャマルに任せて、わたしらは次の作業の準備に移ろか。
買ってきた本を読むんやけど・・・う~ん、読むだけじゃサッパリやな。とりあえずは生地を縫うところまで試行錯誤しながら進めて、ミシンを使って生地を縫うんやけど・・・
「アカン! 縫うたらアカンところまで一緒に縫うてもた!」
全くと言っていいほどに才能が無いんか失敗を繰り返す。シャマルもリインフォースにもさせてみたけど、料理ほど上手くは出来ひんかった。糸切りハサミで糸を切って失敗作を生地に戻してると、「ただいまー」ルシル君からの挨拶がリビングから聞こえてきた。
「おかえりー、ルシル君っ♪」
泊まりで研修をしてたルシル君が帰ってきた。作業を全部ストップして、リインフォース達みんなとわたしの部屋からリビングへ移動して改めて、「おかえりなさい!」首をコキコキ鳴らしてる局の制服姿のルシル君に挨拶する。
「ただいま、はやて。それにヴィータ達も。・・・ん? はやて、髪」
ルシル君が自分の前髪をツンツンって突いた。わたしの名前を呼んだってゆうことは、わたしの髪になんかあるってことか。触れてみると、「逆、逆」ルシル君が笑う。と、「主はやて。髪に糸くずが付いています」リインフォースがわたしの髪に触れて、糸くずを取ってくれた。
「おおきにな、リインフォース」
「ヴィータもシャマルもリインフォースも、みんな頭に何か付けてるぞ? 何をしていたんだ?」
リインフォース達がルシル君に指摘されたところに付いた糸くずを取ってく中、「実はな――」リインフォースⅡに着させる服を手作りしてたってことを説明する。
「・・・なるほどな。確か、30cmほどなんだよな、リインフォースⅡの背丈も。そんなサイズの服なんて、人形に着せるよう物しか売っていないだろうし」
「そうなんよ。でもな~、こんなありさまでなぁ・・・」
ルシル君をわたしの部屋に案内して、床に散らばってる失敗作や何十枚ってゆう生地を見せる。シャマルも「面目ないです」、リインフォースも「思った以上に難しくて・・・」そう言うて苦笑。そんでヴィータは「なあ、このデザインって変か?」パンク系の服のデザイン画を見せて訊いた。
「パンクはさすがに無い。ヴィータくらいにしか似合わないだろ」
「チェッ。悪くねぇと思うのにな~。・・・なぁ、お前は裁縫って出来るのか? オーディンはデザインだけで製作は別の奴がやってたけど・・・」
「俺? 出来るけど。作ろうっか?」
シャマルの描いたデザイン画を見ながらそう確認してくれたルシル君に、「お願い出来るか?」手を合わせてお願いする。そうゆうわけで、リインフォースⅡの衣類製作はルシル君に任せることに決定。ま、いつかわたしやシャマルも作れるように弟子入りすることにもなったけどな。
・―・―・終わりや・―・―・
「ん・・・ぁ・・・」
わたしの両手の平の上に横になってるリインが小さく身じろぎ。そんで目をうっすらと開けた。ルシル君とザフィーラ以外のみんなでわたしの手を囲ってリインを見守る。
「ルシル、ザフィーラ。お前たちもほら」
「ああ」「うむ」
ルシル君と狼形態のザフィーラがアインスとシャマルの間から顔を出して、身じろぎを終えて上半身を起こし始めたリインを見守る。と、「ぅ・・・むぃ・・・?」手の甲で目を擦るリインの目がわたしと合うた。
「はじめまして、そんでおはようや。リインフォースⅡ」
「・・・リイン・・・フォース・・ツヴァイ・・・?」
わたしの手の平の上で横座りしてるリインが復唱して少し黙った後、「はい。リインフォースⅡ、認証しました」小さく頷いた。ある程度の一般教養はインストールしてあるから、ちょう難しい言葉も使えるし、魔法も修得次第すぐ扱えるようになる。
「わたしのこと、自分のことは判るか・・・?」
「・・・あ、はい。あなたはマイスターはやてです。そしてわたしは、融合型デバイス・リインフォースⅡ、です」
「ん、そうや」
目覚めたばかりやからかな、リインはちょう気後れしてる風や。それはみんなにも伝わってるようで、わたしの手の平を囲うような位置からわたしの両脇へと移動して整列。
「リイン、紹介するな。今日からリインの家族になる・・・」
「あたしはヴィータだ。よろしくな、リイン!」
「私はシャマルよ。リインちゃん、これからよろしくね♪」
「シグナムだ。歓迎するぞ、リイン」
「ザフィーラだ。よろしく頼む」
「ルシリオン・セインテストだ。気軽にルシルと呼んでくれ、リイン」
「・・・最後は私だな。リインフォース・アインスだ。今日からお前が、リインフォースとなる。だから私のことはアインスと呼んでくれ。では改めてよろしく頼むよ、リイン」
良かった、間に合って。アインスとリインを会わせることが出来てホンマに良かった。みんなの自己紹介を聞いたリインが「ふ、ふちゅちゅか者ですが、よろしくお願いしましゅです」噛んだことにもめげずに挨拶をしてくれた。
「無事に起きたのねぇ~」
みんなで微笑み合ってると、間延びした口調の女の人の声が出入り口から聞こえてきた。わたしは「お邪魔してます、ミミルさ――っ!!??」振り返りながら挨拶しようとして、ミミルさんの格好を見て絶句。ミミルさんの着てる白衣の下に見えるのは白い肌。そんで真黒なブラジャーとパンツ。ミミルさんは下着姿の上に白衣1枚ってゆう格好やった。
「ふわぁ。ごめんなさいねぇ~。徹夜明けで気が付かなかったわぁ~」
男の子なルシル君や、一応男の人なザフィーラが居っても全く隠そうとも恥じらうこともないミミルさん。ここで「ルシル君見ちゃダメよ!」シャマルが後ろからルシル君を両手で目隠しして、「ザフィーラもだ!」ヴィータがザフィーラの首に抱きついて、「むごぉ?」グイッと横に引っ張って頭を逸らさせた。わたしも「ごめんな、リイン!」膝の上に座らせてるリインの顔を、「ふえっ?」左手で覆い隠す。
「ミミル博士! 服を、何か着てください! せめて白衣のボタンを全部留めてください!」
「あら~、無理よ~。ほら~、胸が大きすぎて留めきれないもの~。それに~、見られて減るものでもないしね~」
顔を赤くしてるアインスにそう言われたミミルさんが両手を腰に当てて胸を張った。バインと跳ねる大き過ぎるミミルさんのおっぱい。開いた口が塞がらへんけど、「へ、減ります! ルシル君の血が!」わたしも早く隠してほしいから参戦。
「ちょっと待て、はやて! 血!? 俺の血ってなんだ!? 鼻血か、鼻血のことを言っているのか!? 噴いてないぞ、噴いていないから!」
「子供に見られたくらいで恥じらうほど~、私は初心じゃないわよ~」
必死に反論してくるルシル君の鼻からは確かに血は出てへん。うん、判ってるよ。そやけどここは男の子が居るってことを知ってほしいからな、ミミルさんに。そんなわたしの口撃は、ミミルさんの大人としての余裕の前にあえなく失敗。
「うちにはザ、ザフィーラが居ますので!」
「それに、主はやてやリインのような子供には刺激が強すぎますので!」
シャマルとシグナムも参戦してようやく「しょうがないわね~」指をパチンと一鳴らし。するとミミルさんの足元に暗めの青に輝くベルカ魔法陣を展開されて、「疲れるのよね~、これ」その姿を変身させた。とは言うても、ブラウスにタイトスカートッてゆう普段通りの服やったけど。
「ふわぁ~。もうこれでいいわよね~?」
服を着て大きなあくびをするミミルさん。わたしらは一斉に溜息を吐いて、わたしはリインの顔を覆い隠してた手を退けて、ヴィータはザフィーラの首から離れて、シャマルはルシル君の両目を覆い隠してた両手を退けた。2分にも見たへんこの短い時間に疲労はほぼマックスや。
「えっと・・・コホン。ミミルさん。お世話になりました、おおきにありがとうございました!」
リインの誕生がここまで早く出来たのはミミルさんの力があってこそや。そやからわたしは深く頭を下げた。すると、「あ、ありがとう・・ございました」リインもわたしの膝の上で頭を下げた。そんでルシル君たちもお礼を言ってく。
「私の方こそ、ありがとうよ~。融合騎を生み出すなんて、きっと後にも先にも無いと思うし~。良い経験をさせてもらったわ~」
ミミルさんは融合騎を生む技術を持ってる。そやけど融合騎を生むことはもうせえへんって以前言うてた。融合騎に振り回される融合事故で大きな事件・事故を起こしたくないからって。そやからリインフォースⅡが、ミミルさんにとって最初で最後の融合騎になるって。
「困ったことがあったら~、またいらっしゃいな~」
そうしてわたしらは、新しい八神家の家族――末っ子のリインフォースⅡを連れてわたしらの家へと帰った。
後書き
ボン・ディア。ボア・タルデ。ボア・ノイテ。
大変お待たせいたしました。「STRIKERS」編のような間延びした口調のリインへ至るにはもう少し時間が掛かりそうですが、とりあえずリインフォースⅡがようやく登場です。原作では氷結魔法の使い手が八神家に居ないから、リインはそっち系統の魔法を習得するのですが、うちにはアイリが居るのでさぁどうしようかと考えています。電撃に鞍替えでもしましょうか? いやいや、やはり氷結でしょう。被ってもいいじゃないか、電撃なんて似合わないしさ♪
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