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リリカルアドベンチャーGT~奇跡と優しさの軌跡~

作者:setuna
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第五十九話 僅かな和解

 
前書き
大輔「はあ…」
賢「はあ…」
はやて「はあ…」
フェイト「はあ…」
ブイモン[初っ端からいきなり溜め息吐くなよ…]
チビモン[きっと疲れてるんだよ]
ギルモン[うめえもん食えば元気になるって、オラ魚獲ってくる]
ワームモン[リリカルアドベンチャー、始まります] 

 
賢「よし、出来た。」
ダスクモンのデータを大輔のD-3に入力した賢。
これでダスクモンをいつでも傍に置くことが出来る。
試しにダスクモンに翳すと、ダスクモンはD-3に吸い込まれた。
はやて「おお、吸い込まれた…」
フェイト「成功だね」
大輔「これでダスクモンも一々、闇に紛れる必要はないな」
ダスクモン『………』
大輔「じゃあ、またデジタルワールドでな」
フェイト「うん、またね」
一乗寺家を後にして、自宅へ向かう大輔。






























そして翌日のお台場小学校では、複雑そうに大輔を見るタケル。
何処か怯えるように大輔から距離を取るヒカリ。
大輔はそんな二人に興味も何も抱かず、一日を過ごした。
そして放課後になり、自宅に戻ろうとした時であった。
ヒカリ「あ、あの…大輔…君」
大輔「………」
ヒカリの声に一瞬足を止めたが、すぐに足を動かした。
ヒカリ「待って!!」
大輔「……何だよ?」
ヒカリ「あの…私…謝りたくて…」
大輔「光が丘テロのことか?」
ヒカリ「…うん、あのコロモンは私の友達だったから……」
大輔「もういい、俺もカッとなって少し言い過ぎた。言ったことは撤回しないけどな。もう…7年も昔のことだからな。今更あんた達を責めても、もう楽しかったあの頃に戻れるわけでもないんだ」
ヒカリ「…………」
大輔「…あのさ」
ヒカリ「え?」
大輔「…あんたが本当に俺を仲間だって…友達だって思うなら、俺にもうあまり関わらないでくれ、頼むから……せめてこの気持ちが…憎しみが風化するまで」
ヒカリ「うん…ごめ、んな…さい」
涙を流しながら謝るヒカリにハンカチを押し付けるように手渡す。
大輔「やる。返さなくていいから…さよなら…ヒカリちゃん。これからはただのクラスメイトな」
それだけ言うと、大輔はお台場小学校から去った。
ヒカリは自分を憎んでいるのに、優しく接してくれた大輔に感謝と申し訳なさを感じていた。






























伊織「あ、ヒカリさん…大輔さんは…?」
ヒカリ「…もう、余程のことがない限り、私達と一緒に戦うことはないと思う。…心底嫌われてたみたい」
テイルモン[ブイモンの姿もなかった…もうここに来ないつもりなんだろうか…あいつも]
ホークモン[あの時、キメラモンと戦えるのは大輔さんのマグナモンだけでした。しかし、それを理由に私達は全てを大輔さん達に押し付けていたのですね…]
タケル「…ヒカリちゃん、そのハンカチは?」
ヒカリ「大輔君が泣いた私にくれたの。返さなくていいって…私のこと、憎んでいるのに…優しくしてくれた…私、もっと大輔君の力になってあげればよかったって後悔してる」
京「でも、どうして一乗寺賢と行動を一緒にしているのかな…?」
アルマジモン[俺達よりあいつの方が何万倍もマシだって言ってたがや]
京「それでも!!確かに大輔に全て押し付けたのは悪いと思ってる…でも、彼はキメラモンを造って、デジタルワールドを支配しようとしていたのよ?それなのに、どうしてそんな彼に心を許せるのか…私には分からない」
伊織「そういえば、フェイトさんとはやてさんとはいつ知り合ったんでしょうか?」
京「そういえばそうよね。私、あいつに外国人の知り合いがいるなんて聞いたことないし…後で聞いて…」
ホークモン[聞ける訳がないでしょう。私達は心底嫌われてるんですから…]
京「そうだった…」
パソコン室に重苦しい空気が蔓延する。






























フェイト「大輔?」
大輔「ん?」
ブイモン[あんまり元気ないけど…。あいつらのせいか?]
大輔「いや…あいつらのせいじゃない…非情になれない俺のせいだ…」
賢「大輔、君は優し過ぎる。君が全て背負う必要はない」
大輔「ああ…分かってるさ」
チビモン[それにしてここ、いい村だよね~]
はやて「せやな。モチモンまみれや。かわええなあ…」
大輔達が現在いるのは、モチモンの村。
ここの畑で採れる野菜は味が濃く、フェイトとはやてが居候している村なのだ。
しかも湖が近くにあるので、魚を捕るのにも困らない。
かなりいい場所にある村だ。
大輔「ここ毎日秋みたいだよな。涼しいし、魚は脂がのってるし…」
チビモン[木の実も美味しいしね~]
ギルモン[オラ、この村気に入ったぞ]
フェイト「本当、とても過ごしやすいよ」
賢「でも此処にいつまでもいるわけにはいかないよ」
ワームモン[賢ちゃん、少しの間くらいゆっくりしてこうよ]
はやて「そやで賢兄」
賢「うーん…じゃあ少し休憩しようか」
全員【賛成!!】






























そしてモチモンの村から大分離れた街では、京達がミミのSOSを聞いて、デジタルワールドに来ていた。
ダムを壊そうとしているゴーレモンをシュリモン達が必死に抑えている。
ミミ「大輔君はどうしたの?」
伊織「大輔…さんは…」
タケル「大輔君は今、別行動をしているんです…」
ミミ「別行動?」
京「一乗寺賢と一緒にいるんです。此処にいないってことはD-ターミナルを持ってないんですよ…」
決別したことを知らないミミは口を開く。
ミミ「一乗寺賢君と一緒にいるなら…誰か一乗寺賢君のメールアドレス知らない?」
京「え?私が知ってますけど…」
京はD-ターミナルをミミに差し出す。
受け取って、ミミは賢にメールを打ち始めた。
京「何してるんですか……?」
ミミ「きっと、彼もD-ターミナルを持っているわよね。だったら……賢君を呼べば大輔君も来てくれるはず」
京「あいつに助けを!!?」
ミミ「そうよ、いけない?」
京「いえ…、でも来るかどうか…。大輔も…」
嫌味に聞こえないのは、ミミが持つ真っ直ぐさからだろう。
だが、京は彼女のように素直にはなれなかった。
そして完全に決別した大輔が来てくれるかどうかも分からない。
タケル「もし、来なかったら……」
ヒカリ「倒すしかないのかしら…大輔君達がやったように…」
京「大輔達がやったように…?」
ヒカリの言葉で、前回の出来事が京の脳裏を掠めた。
躊躇いなくサンダーボールモンを殺した大輔達。
伊織「僕は嫌です!!どんな理由があっても、デジモンを殺すなんて絶対に!!」
京「そ、そうよね…」
ヒカリ「でも…」
ヒカリの呟きに全員がヒカリを見遣る。
ヒカリ「私達はキメラモンを殺すのを大輔君に押し付けたのよ…全部…」
ヒカリの言葉に全員が沈黙した。






























そして賢はミミから来たメールに表情を引き締めた。
賢「ここから大分離れた街にあれが…ダークタワーデジモンが現れたらしい」
この時期にそんなことをするのはあの女が生み出したダークタワーデジモンだ。
はやて「けど、どないするんや?スティングモンとエクスブイモンがフルスピードで飛ばしても少し時間がかかるで?」
ダスクモン[俺が行く。俺ならお前達より遥かに短時間で街に着ける。]
大輔「じゃあ…融合…試してみないか?一応、データはあるんだし、出来るかも」
ダスクモン[…好きにしろ]
大輔「分かった…ユニゾンエボリューション!!」
大輔とダスクモンが融合する。
少しの間を置いて、大輔の意識が浮上した。
大輔『…どうやら、大丈夫のようだな』
ダスクモン[ふん、精々俺の力に振り回されないことだな]
エクスブイモン[俺達もすぐに追い掛けるから、急いでくれ]
ダスクモン[ああ]
ゴーストムーブを使用する。
瞬間移動の技であるゴーストムーブは短距離しか移動出来ないが、連続の使用が出来るため、瞬く間に、街に辿り着いた。
大輔『………』
ゴーレモンと戦っているシュリモン達。
そしてそれを見ているタケル達。
大輔『俺がやる…やらせてくれ』
ダスクモン[いいだろう。だが少しでも情けない戦いをしたら、すぐに入れ代わるぞ]
主人格をダスクモンから大輔に入れ換え、ゴーレモンに襲い掛かる。
ミミ「あれは何!!?」
タケル「またあの闇のデジモン…!!」
敵意を隠さず、ダスクモンを睨むタケルに大輔は冷たい視線で一瞬だけ見遣るとゴーレモンを蹴り飛ばす。
ゴーストムーブで肉薄。
エアーオーベルングストームで吹き飛ばす。
大輔『(どうやら本当にダークタワーデジモンのようだ…。力が漲るような感覚がしない)』
ダスクモンのブルートエボルツィオンは、斬った相手の力を自分の力に変換する能力を持つ。
ブルートエボルツィオンの技を受けても力を取り込んだ感じがしない以上、ダークタワーデジモンと見て問題はないだろう。
そしてエクスブイモン、スティングモンがやって来た。
上には賢、フェイト、はやて、チビモン、ギルモンが乗っている。
ヒカリ「一乗寺君に…フェイトちゃんにはやてちゃんも…」
京「助けに来てくれた…」
大輔はいないが、エクスブイモンがいる限り、来てくれたのだろう。
ダスクモンはエクスブイモンとスティングモンが来たのを見計らって、離脱する。
タケル「一体何なんだあいつは…」
そして森の中から大輔が出て来た。
伊織「大輔さん…」
ミミ「ほら、大輔君も来てくれたし、一乗寺君も頼りになる仲間じゃない」
京「は、はい…(助けに来てくれた…大輔はあんなに私達を嫌っていたのに…彼も…)」
エクスブイモン[でやあああ!!]
スティングモン[はああああ!!]
エクスブイモンとスティングモンの絶え間無い連続攻撃がゴーレモンに炸裂する。
息の合ったコンビネーションにタケル達は思わず魅入る。
フェイト「大輔、賢。援護は必要?」
大輔「必要ない」
賢「あの程度ならエクスブイモンとスティングモンだけで充分さ…」
チビモンとギルモンを進化させようとするフェイトとはやてを制する。
パルモン[う…]
ミミ「パルモン!!気がついたのね」
気絶していたパルモンがうっすらと瞼を持ち上げた。
ミミがほっと安堵の息をつく。
パルモン[ミミ……あいつは、どこ……?]
ミミ「今、エクスブイモンとスティングモンがゴーレモンからダムを守ってくれているわ」
ダムの頂上でゴーレモンにエクスブイモンとスティングモンが猛攻を仕掛けている。
パルモン[ゴーレモンじゃ……ないの。あいつは、ゴーレモンなんかじゃないの!!]
ミミ「なに……言ってるの?」
気絶する前のパルモンの記憶が蘇る。
ダークタワーの近くに立っていた、謎の女がしていた事。
パルモン[あいつは……デジモンの姿をしているけど……本当は、ダークタワーなの!!]
ゴーレモンの正体は、ダークタワーだった。
その新事実に、タケルはやっと合点がいく。
タケル「それで謎が解けた!!こないだ、サンダーボールモンが現れた時、どうしてダークタワーが無くなっていたのか!!」
伊織「あれはダークタワーが変身した姿だったんですね!!」
ヒカリ「だから…」
京「だから大輔達はあの時、敵を殺せたのよ!!」
自分は誤解していた。
賢はもう、理由なくデジモンを傷付けるデジモンカイザーではない。
大輔も完全に決別したはずの自分達を助けに来てくれた。
彼らは誰かが危険に晒されていたら助けに行く、優しい人間だ。
京「ごめんなさい…」
目が眩むほどに光を放つD-3がそこにあった。
その光に比例するようにホークモンの体も輝きだす。
それは紛れもなく、進化の光だった。
ホークモン[ホークモン進化…アクィラモン!!]
突風と共にアクィラモンが空へ羽ばたく。
その後を京が追いかけた。
京「アクィラモーン!!あいつの正体はダークタワーよ!!デジモンじゃないの!!」
アクィラモン[そうだったのか!そうと分かれば遠慮はしないぞ!!]
翼をはためかせ、アクィラモンがスティングモンとエクスブイモンの加勢に行った。
アクィラモン[ブラストレーザー!!]
アクィラモンが発射した光線がゴーレモンに命中した。
煙が晴れた後に現れたのは、ゴーレモンの皮膚のようなものが砕け、中身のダークタワーが露出したダークタワーデジモン。
エクスブイモン[とどめだ!!]
スティングモン[スパイキングフィニッシュ!!]
ゴーレモンに突撃し、一気に相手の身体を鋭利なスパイクで貫いた。
スティングモンが攻撃した場所から、ダークタワーデジモンの全身に細かい罅が入ってゆく。
エクスブイモン[エクスレイザー!!]
エクスブイモンの必殺のエネルギー波がダークタワーデジモンに炸裂し、完全に粉砕した。
ダークタワーデジモンが消滅したのを見ると、大輔はエクスブイモンに乗るとフェイトとチビモンと共にそのままこの場を去った。
京「大輔!!待って!!」
大輔は少しだけ振り向くが、すぐに視線を前に遣り、この場を去った。






























賢「弁解はしません。今まで謝罪が遅れてすみませんでした」
日が暮れたデジタルワールド。
事態が収まり一息ついた子供達に、賢がそう言って頭を下げた。
伊織とヒカリはどう答えていいか解らずに顔を見合わせていたが、パルモンがずっと気になっていた事を尋ねた。
パルモン[所で、あの女の人は一体何者なの?]
賢「僕も詳しくは知らない。今分かっているのは、彼女がダークタワーからデジモンを造れる事、彼女が近付くとダークタワーが昔の機能を取り戻す事くらいなんだ」
はやて「んで、賢兄は罪を償うために、デジタルワールドを目茶苦茶にしようとする女を倒すために動いてるっちゅうわけや」
ヒカリ「じゃあ、大輔君も?」
ギルモン[ああ、大輔もその女を探してんだ。ついでにダークタワーをぶっ倒しながら。フェイトとはそん時に知り合ったんだ。]
京「…大輔は、一乗寺君達と行動してるのよね?」
はやて「そうやけど?何や?まだ責め足りへんの?」
京「そうじゃないの!!キメラモンのこととか、サンダーボールモンのこととか…謝りたくて……」
賢「…多分、分かっていると思いますよ大輔は。あなた達の気持ち。…ただ、今まで強引に抑圧されていた負の感情が急激に解き放たれたから、大輔も…。大輔自身、自分の感情を持て余して、制御仕切れないという感じでしたし。」
タケル「ところで、あのデジモンは何なの?」
賢「あのデジモン?」
タケル「君達が現れると決まって傍にいるデジモンだよ」
賢「…あのデジモンに関して、僕からは何も言えません。ただ、僕達とあなた達に深い関わりがあるデジモンだということを言っておきます…では、僕はこれで」
踵を返し、ワームモンとはやて、ギルモンを連れて森の中へ帰っていく賢。
こうして選ばれし子供達の一日は終わる。
 
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