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『曹徳の奮闘記』改訂版

作者:零戦
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第五十四話




 袋を刺すと、ブシュゥッ!!と袋から赤い液体が流れ出た。

「い、イヤァァァァァァァァァァァァーーーッ!!!」

 周泰が絶叫する。

 ………今、俺の心の中で火スペの曲が出てきたのは気のせいか?

「うわぁ………えげつない事をするわね……」

 ロッタが俺を見下すような目をする。

 てか皆もです。

 ちょ、お前ら………(滝汗)

「さぁ周泰。二匹目といこうか?」

 もういいや、無視して先に進む。

「人でなしッ!! お猫様殺しですッ!!」

 周泰が泣きながら俺を罵倒してくる。

「じゃあ二匹目といくか。恨むなら周泰を恨むんだな」

 俺は二匹目の猫を袋に入れようとする。

「………た」

「ん?」

「分かりましたッ!! 喋りますからお猫様を殺さないで下さいぃ~」

 周泰は泣きながら俺に言う。

「それでいいんだ」

 そして周泰はポツリポツリと白状した。

「………偵察ね。俺らが大砲も所持しているからそれの把握、もしくは破壊工作か」

「うぅ~すみませんお猫様ぁ。私が早く言わなかったからぁ」

 周泰が袋を見ながら泣いている。

 ………そろそろ種明かしといくか。

「周泰、言っておくけど猫は死んでないぞ?」

『………は?』

 皆が目を点にする。

「ほら」

「ニャア~」

 俺は袋から入れて刺されたはずの猫を出した。

 そして猫はピンピンしている。

「ど、どういう事なのじゃ長門?」

 美羽が聞いてくる。

「答えはこれだ」

 俺は皆に袋の中身を見せた。

「………袋の中に袋が二つ?」

 袋の中には赤い液体が入った袋と何も入って無い袋がある。

「不自然に思わなかったか? 猫を入れて刺すだけなら小さめの袋でもよかっただろ?」

「………確かにそうよね。猫を大きめの袋に入れたから変だとは思ったけど……」

 ロッタがうんうんと頷く。

「猫好きな周泰を騙すならこれくらいしないとな。この何も入ってない袋に猫を入れて、後は赤い液体が入った袋を刺すだけだ。ちゃんと間違いないように印も付けてる」

「それで赤い液体は何なのじゃ?」

「あぁ、鶏の血だ。さっき、部下に言って鶏の血をくれと言っておいたからな」

 リアルさを追求するためにな、最初はトマトにしようと思ったけどな。

「以上、種明かし終わり」

「………汚いわね」

「作戦と言ってくれよロッタ」

「………うぅ騙されましたぁ~」

 あ、周泰がまた泣いた。

「ほらほら泣くな」

「まぁ泣かしたのは長門じゃからのぅ」

 うぐ、嫌に当たってるだけに反論は出来んなおい。

 結局、俺は周泰を慰めるのに一刻程時間が掛かった。

「それで、周泰の身柄だけど、取りあえずは捕虜な」

「………それは仕方ありません。私の甘さ故にです」

 周泰も渋々と納得してくれた。

「取りあえずは監視付きと武器は没収な」

「大変ですッ!!」

 その時、一人の将が入ってきた。

「どうした高順?」

 それは以前、霞の隊にいた高順だ。

 部隊でもよく指揮っていたので将に昇格させた。(といっても霞の部隊をだが……)

 今、高順は荊州方面の守備を担当している。

「副官、悪い報告と良い報告があります」

「だから副官と違うっつうの。悪い報告から頼むわ」

「間者からの報告ですけど、荊州が劉備の手に落ちました」

「何だとッ!? じゃあ劉キ殿は………」

「………亡くなられました。そして劉ソウ殿は荊州の建て直しを図ろうとしたのですが、劉備を荊州牧にという声が多く、更に反劉ソウ派が劉ソウ殿の暗殺未遂をしました」

「劉ソウ殿は?」

「辛うじて荊州を手勢五千と一緒に脱出をしてこちらに来ています」

 ………そうか。

「分かった。後で会おう。美羽もそれでいいな?」

「うむ。構わないのじゃ」

 美羽が俺の言葉に頷く。

「それで良い報告は何だ?」

「入隊希望者です。それも将への」

「………へぇ。それは会ってみるしかないな」

「うむ。妾もそう思うのじゃ」

「じゃぁ先に劉ソウ殿と会うか」

 俺と美羽、七乃は劉ソウ殿が待つ部屋へと向かった。






 
 

 
後書き
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