ソードアート・オンライン 蒼藍の剣閃 The Original Stories
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Chapter-6 圏内事件
Story6-11 黒幕
第3者side
3人が立ち去った後も、油断無くその先を見つめていた。
索敵スキルの効果によって、オレンジ色のカーソルだけは視界に表示され続けている。
「あいつ等、此処まで来るのだけでも、バカにならない費用だった筈だろうなー」
シャオンはプレッシャーを解いていた。
そして、軽く苦笑いをする。
それをみたキリトは同意しながら笑う。
「だろうな。オレンジは、街には入れない。だから手段は限られてくるだろうから」
犯罪者プレイヤ-であるオレンジは、アンチクリミナルコードに守られた圏内には入ることは原則出来ない。
入ろうと思えば入れるのだが、入った途端強力なNPC
に囲まれてしまうからだ。
それは、理不尽な設定にされているような強さで、仮に勝てたとしても、際限なく無限に現れると推察もできる。
どんなプレイヤーでも勝てない仕様になっている。
3人のカーソルが消滅したのを確認すると2人とも安堵につつまれていた。
あそこまで強行姿勢を崩さなかったシャオンもそれは例外じゃないようだ。
「さて、クラインにメッセージ、頼めるか?」
「ああ。今やったとこだ」
キリトはそう答える。
キリトは10数人を引き連れてこちらへ急行中であるはずのクラインにメッセージを送っていた。
『ラフコフは逃げた。街で待機していてくれ』と。
その後は、シュミットも麻痺毒から解放され、立ち上がることが出来ていた。
そこで、まだ血の気を失って座り込む死神ローブのプレイヤー達に声をかける。
「また会えて嬉しいよ。ヨルコさん。それに、はじめまして、かな?カインズさん」
キリトはそういい、軽く笑みを浮かべた。
シャオンも同様に言おうとしたらしく、頷いていた。
「全部終わったら、きちんとお詫びに伺うつもりだったんです。といっても信じてもらえないでしょうが」
ヨルコは、俯かせた。
他人を騙すような事をするプレイヤーを信じられるわけないと思っていたのだ。
だが、ヨルコのそんな思いも一笑する。
「それは、今度奢ってもらうメシの味によるな。言っとくが怪しいラーメンとかはカンベンだからな?」
「うん、それはいやだ」
「はじめまして、では無いですよ。お2人とも、あなた方とはあの瞬間、目が合いましたね」
カインズは落ち着いた様子でそう言う。
どうやら、彼も安心しきっていたようだった。
「ああ、確かに、消える瞬間。転移する瞬間目が合ったな」
「そういえばそうだったな」
「ええ。あの時、この人たちにはバレてしまう、見抜かれてしまうと予感はしていたんですよ」
「買いかぶりすぎだな」
「ああ、すっかり騙された」
苦笑いが続く。
僅かに緩んだ空気をガシャリと全身鎧を鳴らしていたシュミットがまだ緊張の抜けない声で再度引き締めて言った。
「シャオン、キリト。助けてくれた事には感謝している。だが、何で判ったんだ?あの三人が此処を襲ってくることを」
その巨体の男、シュミットが食い入る様に眼を見返した。
キリトはその眼を間近で見たためか、少したじろいで、言葉を捜す。
「判った。と言うわけじゃない。皆で導き出した結論だ。ありえると言う推測だがな。相手がPoHだと判っていたら、逃げ出していたかもしれないな」
少し言葉を濁しつつそう言う。
これから語る真実。
それは3人に衝撃を与えるだろうからだ。
全ての演出を書き、演出し、主演までした彼ら2人でさえその存在には気づいていない。
一人のプロデューサーがこの事件の陰に潜んでいる事。
キリトとシャオンは目を合わせた。
皆、全てを知っておかなければならないだろう。
真実が、どれほど残酷だったとしても。
「俺達がおかしい、って思ったのはほんの30分前だ」
30分前。
ここにくる直前に二人がそれぞれ話をしていた事。
ストレージ共通化で導き出された真実だった。
シャオンがそう想像した事は間違いではなかった。
離婚時のアイテム分配率がそのメインだった。
普通の離婚には自身が得られるモノを手に入れようとすれば、離婚の被害者になるしかない。
死別の場合は、別だった。
相手が死んだ場合、アイテムストレージは共通化から 本来の容量に戻る。
その時、持ちきれない場合は足許に全てドロップするのだ。
「なぁ、カインズさん、ヨルコさん、アンタ達は、あの武器をグリムロックさんに作ってもらったんだよな?」
キリトはそう聞いた。
その問いにヨルコが、頷くと
「グリムロックさんは、最初は気が進まないようでした。帰ってきたメッセージはもう、彼女を安らかに眠らせてあげたいって書いてありました。でも、私達が一生懸命頼んだらやっと武器を作ってくれたんです」
「残念だけど、アンタ達の計画に反対したのはグリセルダさんの為じゃない」
シャオンはそう返した。
その言葉に動揺を隠せないのは2人だ。
グリムロックの言葉は、もう疲れきった様子だった。
当然だろう。
自分の大切な嫁が亡くなった事件。
もう、思い出したくないと言う気持ちだってあるに違いない。
しかし、二人の言葉は180度違っていた。
「圏内PKなんていう派手な事件を演出し、大勢の注目を集めれば、いずれ誰かが気づいてしまうと思ったんだろう」
この世界では稀だが、結婚の制度を悪用に気づく連中が出てくると。
離婚ではなく死別すれば、アイテムはどうなるのか、
ってことに」
「え?」
シャオンとキリトの言葉に意味が解らないと言うようにヨルコ達は首をかしげた。
シャオンとキリトはこの場にいる元・黄金林檎のメンバーに全てを話した。
導き出されたその真実を……
その答えに、シュミットを含む3人とも驚愕の表情を浮かべる。
「じゃ、じゃあ、グリムロックが?アイツがこの事件の犯人?グリセルダを殺したのも?」
シュミットは、震える声でそう聞く。
その問いにキリトは首を振る。
「直接手を汚してはいないだろう。恐らくは殺人はレッドに、ラフコフに依頼したんだろう」
だからこそ、この場所にさっきの連中がきた。
疑いようの無い真実を間近でみたのだから。
「そんな……ならなんで?何で、グリムロックさんは私達の計画に協力してくれたんですかっ?」
「アンタ達は、グリムロックに今回の計画の全てを話していたんだろう?
なら、それを利用して、今度こそ指輪事件の真相を闇に葬るつもりだったんだろう。永久にな。
シュミットにヨルコさん、それにカインズさんの3人が集まる機会を狙って纏めて消してしまえばいい」
「多分だが、グリムロックはグリセルダさん殺人の依頼をした時から、奴らとのパイプはあったんだろうな」
「そ、そんな……」
ヨルコは力なくその場に崩れ落ちる。
そんなヨルコを側にいたカインズは支えた。
そのときだ。
「見つけたよ」
十字の丘の入口から声がした。
「後の事は本人の口から聞いてみようか」
Story6-11 END
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