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剣の世界の銃使い

作者:疾輝
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世界は狭い

50層アルゲード、ここは何時来ても《猥雑》という言葉が当てはまる場所だと思う。人で溢れかえったこの層は現実世界での都市を思い出させるが、今となってはどっちが現実かも分からなくなってきたな・・・。
俺はここで人を待っていた。そろそろ待ち合わせ時間だが、一向に待ち人が現れる様子がない。待ち合わせ場所に設定したのは、転移門から近い場所なので迷うことはないはずなのだが。

「レイトさーん、お待たせしました!」

こちらに近寄ってくる彼女は半年位前から付き合っているシリカ。俺も声を返そうとして、隣にいたプレイヤーを見て顔をしかめた。

「なぜ、お前がいる・・・?」

「なぜってやだなぁ、途中であったからですよ、先輩」

シリカの隣にいたのは元藍椿のメンバー、レナ。なるほど、レナが着いてきたから遅れたのか。

「で、なんで着いてきたんだ?」

「シリカちゃんに聞いたら、たぶん行き先同じかなと思いまして」

今日は、少し前からシリカと話し合っていたことを実行するために、ある場所に行く予定だったのだが。レナも同じ場所に用事があったのか。まあ、彼女の職業上不思議ではないが。
この半年で、シリカとレナはかなり打ち解けていた。シリカ位の年頃の女性プレイヤーが少ないこともあって、週に2,3度会いに行ってる程度まで親睦を深めていた。

「それで、先輩たちは何か買いに行くんですか?」

「いや、今日は売るだけだな」

「他にちょっと買いたい物があるので」

俺とシリカが交互に言うと、レナはへぇと一言呟くと、

「婚約指輪ですか?もう二人もそこまで行ってたんですねぇ~」

「違います!!」

シリカが顔を赤くしながら反論する。だがそれ、レナには逆効果だぞ?

「付き合ってもう半年ですもんね、いやーおめでたいですなぁ」

「だから、違いますって!!」

そろそろ止めるか。あいつが暴走すると止まるところを知らない。レナには別に教えても構わないしな。

「シリカ、レナに教えてもいいか?」

「あ、いいんじゃないでしょうか。レナさんになら別に大丈夫ですし」

一応シリカに確認を取ってから、レナに俺らが買おうとしているものを伝ようとしたのだが、

「おっと、もう着いたか。その話はまた後でな」

「やはり、同じ場所でしたね」

目の前の扉を開けて店の中に入る。夜に入ったばかりなので、店の中は客で混雑していた。その中で商談をしている店主を見つけると、商談が終わった頃を見計らって話しかける。

「おっす、エギル。買い取り頼めるか?」

「お、レイトか。お前がこんな時間に来るなんて珍しいな」

「え?レイトさんって何時も何時ごろ来てるんですか?」

「へぇ、レイトに連れがいるとはな。これまた珍しいこともあるもんだ」

珍しいって、まあ事実なんだけどな。いつも来るの午前2時くらいだし。

「2時ですか!?」

そんなに驚くことか?MMOなんだし、その時間帯に活動してる奴らもいなくはないと思うんだが。あれ?俺口に出してたか?

「で、そちらのかわいいお嬢さんはどちら様で?」

「シリカだ。俺のパーティで───」

「先輩の彼女さんです」

言いかけたところでレナの妨害を食らう。余計なことを・・・。

「レナちゃんも来てたのか」

「はい、エギルさん。私はいつもので」

エギルがレナに気づいて声をかける。それにしても、2人が知り合いだったとは・・・・。世界は広いようで狭いな。

「にしても、レイトにも春が来るとはなぁ」

「僻みかよ?いい年して」

「残念ながら、現実に嫁さんがいるもんでな。伊達にお前らより年食ってない」

なんか言葉の使い方が違う気がするが、エギルは嫁持ちだったのには少し驚いた。道理で他の奴らと視線が違うわけだ。
まあ、妬まれるよりはましだが。

「いつも通り、買い取り頼むわ」

「はいはい、今回も期待してますよっと」

ちなみにまだ俺とシリカは《結婚》はしていないため、アイテム欄は共有にはなってない。エギルは俺が出したトレードウインドウを覗くと、目を丸くしてこちらを見つめてきた。

「良くこんなに貯めたな・・・全部俺のところに売り払っていいのか?」

エギルが言っているのは、俺が出した品の中に、色々な生産スキルで使うアイテムが混じっていたからだろう。一つ一つその専門の場所に持っていけば、もう少し高くなるのだろうが・・・。

「構わないさ。だったら、お得意様って事で少し色をつけてくれれば結構」

「ちょっと待ってろ。これだけの量だ、それなりの値段で買わせてもらう」

エギルはそのまま俺の出した物を鑑定スキルにかけ始めた。目標達成のためにある程度高値がつくといいんだが。話が一区切りしたのを見計らって、レナが話しかけてくる。

「それで、先輩!何を買うんですか?」

そういえば、さっきは話せてなかったな。

「ログハウスを買おうと思ってな。俺ら二人ので」

「一緒に暮らせますし、色々都合がいいんで」

そう、俺らが買おうとしているのはログハウスだ。SAOでは結構高めに設定されているため、ほとんど買う人はいない。だが、一つの現実となってしまったこの世界では、個人の空間は必要なものになった。それで、シリカから提案があり、ログハウスを買おうということになったというわけだ。毎月部屋代を払うのが面倒になったのもあるが。

「ログハウスですかー。買ったら、私遊びに行ってもいいですか?」

「もちろんです!」

シリカとレナが話しに入ってしまったため、手持ち無沙汰になってしまった。エギルの邪魔でもするかと思っていると新しい客が入ったので、

「いらっしゃいませー」

と、特に気持ちもこもってないあいさつをしてみる。
俺も自分の店でもないところで、見知らぬプレイヤーにこんな真似はしないのだが、今入ってきた客は俺の顔見知りだった。

「なんだ、レイトかよ。こんなぼろい店に店員でも雇ったのかと思ったぜ」

「あのエギルがか?そんな事ありえんだろ、クロノ」

入ってきたのは黒の剣士ことキリト。今日は知り合いに良く会うな・・・。

「クロノも買い取りか?」

「ああ、珍しいのが手に入ったからな」

「へぇ、トレードの時でいいから俺にも見せてくれよ」

鑑定に夢中になっていたエギルに声をかけ、キリトのトレードウインドウを覗くと、S級のレアアイテムがそこにはあった。

「おいおい、S級のレアアイテムじゃねえか。《ラグーラビットの肉》か、俺も現物を見るのは初めてだぜ・・・。キリト、おめえ別に金には困ってないんだろ?自分で食おうとは思わんのか?」

「そうそう、こんな機会二度とないぜ?ラグーラビットって言ったら、アインクラッド三大珍味の一つじゃないか」

アインクラッド3大珍味とは、料理専門ギルドが合同で出している本に載っている食材のことだ。俺もまだ一つしか食べたことはない。せっかく手に入ったのだし、もったいないとは思うのだが・・・。

「思ったさ。多分二度と手には入らんだろうしな・・・。ただなぁ、こんなアイテムを扱えるほど料理スキルを上げてる奴なんてそうそう・・・」

そこまで言ったところでキリトの肩をつつく女性。すると、キリトはつつかれていた手を逆に掴み返し、振り向きざまに、

「シェフ確保」

言い放った。

「な・・なによ」

いかぶしげな顔で後ずさる女性。てかクロノよ、それ下手したらハラスメントに引っかかるぞ?

「お久しぶりです、アスナさん」

目の前でキリトに手を掴まれている女性は攻略組のトップギルド、血盟騎士団こと《KOB》のナンバー2のアスナ。
SAO内でも珍しい女性プレイヤーの一人で容姿も非の打ち所がない。そこまでなら、シリカやレナもそれに該当するのだが、その上トップギルドの副団長とまで来ると、逆に知らない人の方が少ないだろう。
閃光なんて二つ名を持ってることだし。

「あれ、レイト君も居たんだ?」

俺にはアスナ、というかKOB自体との付き合いが少なからずある。基本的にいいギルドなのだが、少々硬いギルドでもあるかなと俺は思っている。まあ、聖竜連合なんかよりはずっとましだが。
それにしても、いまだにアスナの手を掴んでいるキリトに対しての、アスナの護衛の視線が凄いこと・・・。やっぱアスナさんは人気高いなぁ。

「珍しいな、アスナ。こんなゴミ溜めに顔を出すなんて」

やっと、キリトがアスナの手を離して告げる。と同時に俺も背中をつつかれる。

「ん?どうした、シリカ?」

振り向くと、シリカ。若干声に硬いものを含ませて聞いてくる。

「何でレイトさんがKOBの副団長と知り合いなんですか!?」

声をひそめて聞いてきたのだが、アスナにも聞こえてしまったようでその答えはアスナが言った。

「時々攻略の手伝いをしてもらってるのよ。それで、このかわいい女の子は誰なの?レイト君」

何をシリカが懸念しているかはすぐに分かった。

「はいはい、俺はシリカ一筋だって。で、俺の彼女ですって言えば信じてもらえます?」

この返しにはアスナだけでなく、キリトも驚いたようで、口をあけてこちらを見てくる。もう少し別な紹介の仕方があったか?とも思ったのだが、シリカも問題なかったようで、更に俺に腕を絡ませてくる。

「ならいいです。レイトさんの彼女のシリカです。よろしくお願いします」

「あ・・・シリカって半年くらい前にレイトと一緒にいた娘か!」

「その通りだ、クロノ。んで、ついでに」

「ついでってなんですか、ついでって!?私のことですよね!私はセレーナです。レナって呼んでください。それに、アスナとはもう知り合いです!」

俺の後ろからレナが勝手に出てきて自己紹介する。アスナさんと知り合いだったのか?

「あら、レナじゃない。あなたもここ来てたの?」

「はい!エギルさんのところ、安いんで」

自分の店を褒められて、エギルがだらしなく顔を緩ませる。現金な奴だな・・・。
わいわい皆が盛り上がる中、俺が今日痛感したことは、世界は広いようで狭いということだった。 
 

 
後書き
やっと、原作突入ですね
まあ、レイトは顔が広いってことで
あー、でもリズとは会った事ないかなぁ、接点が見つからないし
感想とか待ってます!! 
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