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ソードアート・オンライン 蒼藍の剣閃 The Original Stories

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SAO編 Start my engine in Aincrad
Chapter-5 触れあう手たち
  Story5-7 拒む手と包む手

第3者side


その場に異様な空気が漂う。

シャオンは無言のまま剣を構え直す。

再びPoHによる言葉。

「お前は…………なにしに来た」

「…………」

「聞くだけ無駄か」

物凄い速さで接近してくるPoH。

どうやら、マスターなだけあってスキルも上々のようだ。

「俺のチョッパーがあんたを斬りたがってるぜ……!」

「…………そうか」

シャオンはPoHへ猛然と斬り掛かりにいく。

「……Excellent」

PoHの武器がシャオンに向かっていくが、シャオンは全く受けない。

「Amazing……全く当たらねぇとは」


PoHの驚きをよそに、片手剣スキル4連撃技〔バーチカル・スクエア〕を繰り出す。

黄色い光を纏いながら、剣が超高速でPoHを襲う。

流石のPoHも全ての斬撃を防御することはできず、みるみるうちにHPバーが減っていった。

「Suck!!」

「You can't avoid all my attack」

シャオンはラストアタックを斬り込みに掛かる。

「……くっ……!」

PoHのHPはレッドゾーン。普通ならここで捕らえるべきなのだが……

今のシャオンにそのような思考はない。

オレンジプレイヤーを消す。その思考だけに捕らわれていた。


すると、急に視界が白色に染められた。

「……!」

「結構やるみたいだな……また殺りあおう……!」

シャオンは煙を断ち切り、その先にあるオレンジカーソルに向かっていった。















◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆















シャオンを除く討伐隊メンバーは豹変したシャオンの姿に驚いていた。


――いつものシャオンじゃない

皆がそう思っていた。



そこに突然聞こえてきた声。

「結構やるみたいだな……また殺りあおう……!」




その声と共に煙が視界を覆う。

「誰か煙を晴らせ!」

「視界を取り戻せ!」


その命令はすぐに実行された。


討伐隊のメンバーが辺りを見回すと、他のプレイヤーも粗方戦闘を終わらせ、またPoHの逃走により著しく戦意を喪失した棺桶の住人が転がっていた。


そこに、ただ一人異質な空気を纏った……シャオン。


もう動けないオレンジプレイヤーに向かっていく。

「うおおああああ!!」



誰かが叫ぶ!

「誰かシャオンを止めろ!!」



しかし、皆がためらっている。





それもそうだ。

シャオンの纏う異質な空気に、圧倒的な速さ。


止められるプレイヤーはいない。



そこで動くプレイヤーが一人。

「フローラ!? 無茶だ!」

「お前じゃ無理だ!」

その声に耳を貸さず、フローラはシャオンの元に行く。



――君のそんな姿見たくないから……私が止めなきゃ




シャオンがそのオレンジプレイヤーに突きを放とうとしていた。

「ヒィィィッ!」

「シャオン君!!」


ガスッ


その突きは腹部に刺さった。


…………フローラの。


「…………捕まえた」

その行動に討伐隊のメンバーは驚く。





「シャオン君! こんなこと止めてよ! いつもの君じゃない……君らしくないよ!」




シャオンの動きは止まらない。




「この…………分からず屋!!」


フローラはシャオンにキスをする。





「っ…………」


シャオンの思考が元に戻っていく。

「シャオン君…………」

「お……俺は……?



…………っ!」

シャオンはそこですべてに気がついた。

自分が今、何をしているのか……に。

「…………」


カーソルがオレンジになったシャオンは、その場から逃げ出すように走り去ってした。







その後、討伐隊は回廊結晶で笑う棺桶のメンバーを監獄送りにし、その場を後にした。















◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆















場所は変わり、笑う棺桶討伐会議をした場所に討伐隊のメンバーは来ていた。


そこでは、今回の討伐の報告をリーダーであるDDAのメンバーがしていた。

「今回のラフコフ討伐は討伐隊の死者が8人、ラフコフの死者が15人。

最悪の結果となったが、ラフコフを討伐できたことは喜ばしいことだ。

皆で健闘を称えあおう」


パチパチパチ


拍手が鳴り響く。

しかし、そんな空気も次の言葉で

「しかし、今回のことで懸念すべきことが2つある。

一つは『幹部メンバーが捕まっていない』ってことだ。

おそらく、どこかに逃げたに違いない。
今後、メンバーを集めて再興する可能性がある以上、今後も警戒してくれ。




もう一つは……あまり言いたくないが、シャオンのことだ。

皆も見ただろう、あのシャオンの姿を」

その言葉に皆がうつむく。

「不殺が目的のはずなのだが、シャオンは錯乱してラフコフのメンバーを殺した。

それも大量に、だ。

オレンジプレイヤーとは言え、これは許しがたいことだ。
皆、これに意見を求めたい」


討伐隊のメンバーからは、いくつかの意見が出た。

「俺は攻略組からの脱退をさせたい。

あんだけ精神が不安になるやつに背中を任せられない」

「俺は現状維持すべきだ。彼がいたからこそ出来たこともある」

現状維持の意見は非常に少なかった。


中には、シャオンも短期間監獄に送るべきだと言う人も。






そこで口を開いたのはフローラだった。


「私は……現状維持でいいと思う」

この言葉にたくさんの非難が上がった。

「お前は自分を傷つけたやつをかばうのか?」

「あんな不安定なやつにフローラは背中任せられるのか?」

「あんなオレンジまがいのプレイヤーをかばうのか?」

「私たちの計画をある意味破綻させたのは彼なのよ?」







「…………じゃあ……もしあなたたちが彼だったら……どうするの」

押し黙るメンバー。

「何も……何も知らないのに! 悪く言わないでよ!

シャオン君は……ずっと一人で戦ってきたんだよ!?

自分のせいで仲間をみんな亡くして……悲しいのに……それを人に見せないようにずっと笑顔を見せてきたんだよ!? 『俺が悲しんだら、みんなに余計な気を使わせるから』って!


それなのに! シャオン君だけに今回の責任を負わせていいの!?

シャオン君がラフコフを殺すことになったのも! 私たちがラフコフに手を下せなかったからなんだよ!?

私たちがやらないといけないことを! 背負わないといけないものを! シャオン君は一人で背負ってるんだよ…………

お願いだから……シャオン君を一人ぼっちにしないでよ…………

シャオン君の泣き顔なんて見たくない……」


その一言に、皆が共感した。

〈俺たちは、責任を押し付けていただけだ〉

〈シャオンの泣き顔はみな見たくない〉

これだけは皆に共通していた。












結局、下された処分は現状維持。


フローラはシャオンの行方を追って、その場を後にした。















◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆















シャオンは1層始まりの町、黒鉄宮の生命の碑の前にいた。

オレンジになったカーソルは、知り合いに頼んでカルマ回復クエストを達成し、すぐにグリーンに戻した。


今、フレンドシッパーのメンバーだったプレイヤーの名前をなぞっていた。

「スコール、レン、アルト、ユフィー、ユナ……

俺…………約束破っちまった…………

自分で誓った約束を破ったんだ…………笑えるだろ?

最悪だ。『命は大切だ』とか言っときながら誰も守れない…………俺は、生きた証を何も残せやしないんだ」



「シャオン君」

凛と響く、澄んだ声。


「何で……ここに来た」

「君の……隣にいるため」

「俺は……人を殺した。13人も殺した。正常じゃないその思考で、お前に刃を向けた。

オレンジまがいの俺に、お前の……他人の隣にいる資格はないんだ」

「………………」

「じゃあな」

そう言って立ち去ろうとするシャオン。

「待って!」

そのシャオンの手をとるフローラ。

「何故、俺の手をとる?

オレンジまがいの俺に、他人の手をとる資格はない。

離せ」







「…………私は、君の手を握れるよ?」

「…………!」

「オレンジプレイヤーを殺した……その事実は変わらない。

でもね、シャオン君。

殺したプレイヤーたちの…………君流に言えば『生きた証』を君が残していくのも、大切なことじゃないの?」

「…………」

「それとね…………シャオン君。泣きたくなったら、泣いてもいいんだよ? 君だけが我慢する必要なんてないんだよ?」

「……………………」

「シャオン君、私たち討伐隊を守ってくれて…………ありがとう」

「…………っ…………うう…………」










黒鉄宮には…………長い間降らなかった悲しみの雨が、静かに降り注いでいた。















Story5-7 END 
 

 
後書き
フローラ…………優しすぎる…………

シャオンが初めて人前で流した涙。

いろんなものを抱えて戦うシャオンが初めて見せた弱みに少し同情。


青春…………なのかなぁ…………

じゃあ……

フローラ「次回も、私たちの冒険に! ひとっ走り……付き合ってね♪」 
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