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東京喰種√B

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『彼』

 
前書き
書いてみました。
感想が聞きたいのでコメント下さい! 

 
『彼』の素性、情報、性別は誰も知らない。
襲う人間は統一性を感じられない程にバラバラで目的を持って人間を襲っているとは考えられない。
人間が知らない人間は知らないが人間以外の生物は知っているかも知れない。
適当に喰種を捕獲、話せば楽にしてやる。
と甘い誘惑で防御が固い口を開かせる。
それの繰り返しで、遂に『彼』に関する情報が手に入った。
「人間の内臓を集めて『蒼眼』の喰種を故意的に生成する実験ね」
「ほ、本当だ。
アイツは・・・奴等は・・・人間の内臓を・・・集めて!?」
目の前の食種の口元が綺麗に裂かれた。
「この程度で喚くな。
喰種の再生能力なら、再生出来んだろ?」
暗闇に潜んでいた相棒はナイフ形状のクインケをダーツの様に喰種の口元が裂ける様に狙って投げた。
拘束された喰種は暴れ回る。暴れても無意味、それでも喰種は暴れた。
「幹凪二等」
「はい・はい。
喰種の再生能力は個体によって様々、俺が綺麗に裂いた傷も完治するか解ん~ないって言いたいんでしょ」
壁に突き刺さったクインケを回収、喰種の血で汚れた部分を拭き始める。
上官の命令を無視、それが原因で出世を何度も見送られた相棒『幹凪 黒脊』は一言で表すと我侭で私の部下だ。実力は文句の言い様が無い程、命令を忠実に実行すれば完璧な部下なんだが、それが彼の実力を発揮出来る鍵と私は考えている。
「大丈夫か?」
拘束された喰種に優しく話し掛ける。
流石、喰種だ。先程の大怪我が治癒し始めている。
回復能力が高い喰種は一瞬で傷を癒すと聞くが目の前の喰種も、その一人か?
「凄げぇ、もう治ってら」
「余計な手出しはするなよ」
傷が一瞬で治ると解った以上、幹凪は目の前の喰種で遊ぶだろう。
瀕死の傷でも治るのか?足をもぎ取っても再生するのか?舌を契っても再生するのか?
自称拷問大好き人間には最適な玩具かも知れないが、普通の人間達には重要な情報を有した喰種だ。
丁重に扱い丁重に会話する。それが真実に近付くヒントになる筈だ。
「私の相棒が済まない。
後で言い聞かせる」
「別に良いじゃないですか〜
再生するんですから~」
「痛覚が消える訳じゃない。
喰種の躰は殆ど人間なんだぞ?」
「痛覚なんて一瞬ですよ。
綺麗に首を落とせば痛みなんて感じませんよ」
喰種の首元に鎌を突き立て脅す。
拷問用の道具、人間用の拷問器具だが脅すには十分の凶器だ。
「ひ、ヒイ、ヒイ」
「喚くなよ。
別に首は斬れてねぇだろ?」
更に鎌を首に近付ける。
喰種の皮膚は人間に比べ非常に硬い。
鎌を突き立てた程度では首は切断できないが喰種は怯える。
「止めろ」
喰種の首元ギリギリに近付けた鎌を無理矢理、逆方向に向ける。
「次に命令を無視した場合、判るな?」
無言で頷き鎌を地面に落とした。
別に強く言った訳じゃないが幹凪の顔は真っ青だ。
「解れば良い。
それで・・・傷口は大丈夫か?」
「あ、ああ。
だ、大体・・・治った」
本当に凄いな。
殆ど完全に治ってる。回復能力の高い喰種は希少で貴重なサンプル扱いを受けるが別に有力な情報を有しているなら逃がしても構わない。私達の目的は喰種の殲滅、逮捕だが・・・無抵抗の喰種を痛め付け殺しても無意味だ。
「凄い回復力だな」
「俺は・・・回復力だけに特化した喰種だ」
喰種の表情は暗い。
脅されてると勘違いしてるのか、スラスラと口から言葉を放つ。
「戦闘力は低い・・・・本当に回復力だけに特化した・・・役立たずなんだ」
「一々、怖がんなよ?
普通に会話してるだけじゃねぇか?」
幹凪はキツめに言う。
「お前が逆の立場で、そう言えるのか?」
「言えますね〜
余裕ですよ」
「そうか・・・・なら次の戦闘時はお前を喰種の陣地に投げ込もう」
「冗談ですよ!
冗談、間に受けないで下さいよ!」
冗談・・・・・なのか。
幹凪程の実力者なら大抵の喰種は殲滅出来る筈だ。
多分、私が嘘を言わない事を知っている幹凪は本当に次の戦闘で敵陣地に投げ込むと信じ込んだのだろう。
冗談、私も冗談位、言うさ。
「君の名前は?」
「野田 ・・・秀夫」
「へぇー。
喰種に名前なんて有んの?」
疑問を抱いた幹凪は喰種の周囲をグルグル見て言う。
「君は・・・一般的知識を脳ミソに叩き込んで出直して来い」
人間の姿、形状は殆ど同じ喰種は人間に潜み生きる。
体を組まなく調べない限り人間か喰種か見分けが付かない彼等は人間社会に溶け込み人間達と共に生きる場合が多い。人間の名前は人間社会に溶け込む為に必要な物だ。人間達と共に行動すれば喰種と怪しまれず普通に生活出来る可能性が飛躍的に向上する。目の前の喰種 野田 秀夫もその一人と考えて間違いないだろう。
「『彼に』に関する情報を私達に提供してくれないか?
君に危害は加えない。
話せば君を開放する」
「ほ、ほ、本当・・・・か?」
「嘘じゃない。
私は嘘が嫌いでね」
真実を告げると喰種は安心したのか安堵の溜息を付く。
狩られる側と狩る側、喰種は人間を狩る。
が、逆に人間も喰種を狩る。
互いに歪み殺し合う。それが喰種と人間に与えられた運命だ。
「1ヶ月位前に・・・・変な奴、変な喰種が17区に来た」
「変な?」
「言葉が通じない喰種で・・・短気で・・傲慢で」
その言葉を聞いて私は隣の幹凪を見る。
「何で、俺を見てるんですか!!」
「短気で傲慢・・・・君に似てると思ってな」
「俺は我慢する時は我慢します!」
子供の様に幹凪は訴えるが、私から見た君は子供だ。
見た目も実年齢も私に比べれば幼い。
「ん?
待てよ。
確か・・・17区は最近、喰種の捕食事件が急激に増えた・・・」
「アイツが・・・『彼』が17区に姿を現して・・・17区は変わった」
喰種は怯え始めた。
私達以外の全く別の物に喰種は怯え始めた。
「17区の喰種は弱い。
強い奴も居るが・・・弱い奴の方が多い。
だから・・・弱い俺達は考えたんだ。自殺者を捕食する方法を」
「ま、妥当だね。
弱い奴は・・・地面に這い蹲って生きるのが似合いだ」
幹凪の余計な一言が喰種を落ち込ませる。
が、幹凪が間違った発言をしたとは私は思わない。
弱い者は強い者に抗わず強い者は弱い者を命令する権利を持っている。
人間社会でも喰種世界でも動物世界でも適用される絶対的ルールは残酷で悲惨だが、強い者はリスクを背負う。
弱者が背負わず強者だけが背負うルール。
そのルールは弱者には理解出来ず強者のみが理解出来る絶対ルールだ。
今の私には理解出来ないルールで昔の私には理解出来たルールだ。
「普通の方法だね。
確かに以前の17区は他の地区に比べれば捕食事件は少ない方だが」
「17区の強い奴は勝手に好きな時に人間を捕食してるんだ。
夜でも朝でも関係ない・・・奴等は自由だ」
「君達は・・・生きた人間を捕食せず。
自殺者だけを捕食して喰っているのか?」
「自殺者以外にも・・過労死・衰弱死。
色々だけど・・・生きた人間は・・・何年も喰ってない」
意外な発言だ。
生きた人間を何年も喰ってない。
人間を喰わねば生きられない生物が死んだ人間だけを食す。他の喰種も目の前の喰種 野田 秀夫の様に死んだ人間を食ってくれれば仕事も楽で良い。でも・・・・喰種が生きた人間を捕食しないなら・・・私達、喰種捜査官は必要ないんじゃないか?
「嘘ポイねぇ〜〜」
幹凪はクインケ『千本桜』を展開、喰種の全体を『千本桜』で覆う。
「嘘は駄目〜だよ?
真実だけを述べてね〜?」
「う、う、嘘じゃない!!
本当だ。俺は・・・何年も生きた人間を喰って、ギャアアアアアアアア!?」
喰種 野田 秀夫の悲鳴が真っ暗な部屋に響いた。
幹凪 黒脊が所有するクインケ『千本桜』の特徴は圧倒的な数だ。
名前通り数は千本。ナイフ形状のクインケが千本だ。
それが「千本桜」 クインケの中で稀で珍しいクインケだ。
「殺傷力は低いんで安心ですね〜。
拷問にも使えるんで尋問課の人達が困った時、俺が手助けするんですよ」
「次に命令を無視した場合、先程の私の言葉だが。
覚えてるか?」
「覚えてますよ。
でも、この状況は構わないでしょ?
嘘か真実が確かめる方法は・・・」
「ギャアアアアアアアアアアア。
痛い!痛い!痛い痛い!!痛い!」
一度に30本程『千本桜』が野田 秀夫に突き刺さる。
腕、足、頭、体中体全体を突き刺した。
「苦痛が一番でしょ♪」
それを見て幹凪は笑っている。
喰種捜査官の人間は大抵は2つのタイプに分かれる。
1つ人間を守る。喰種を殲滅する。喰種に憎しみを抱く人間。
2つ自分以外の人間に興味ない。虐殺が好き。悲鳴を聞くと落ち着く。人間を殺したい。
大体に分ければ『普通』と『異常』だ。
私の相棒『パートナー』は誰が見ても一瞬で判別出来る『異常』だ。
「君のクインケは殺傷力が低い分。
攻撃回数が多い。
尋問は私の役割だ。
君は何も何もするな」
「ま、情報を聞き出すのに支障が出てるのも困るんで。
そろそろ自重しますかね」
クインケ『千本桜』を特別なケースに収納、幹凪は壁側まで歩き野田を監視する。
変な行動をすれば大義名分で野田に攻撃を加える為に攻撃態勢を保ち監視に目を光らせる。
説教しても叱っても怒鳴っても怒っても始末書を書かせても彼は変わらない。
人間、簡単に変われないと言うが彼が代表格だと私は思う。
「本当に済まない。
大丈夫か?」
「い・・・・・・い、痛い」
傷が次々と癒える。
再生能力が異常な喰種 野田の怪我は大体、完治した。
本当に・本当に凄い。戦闘力が低くても充分過ぎる回復力だ。
「さて、続きを始めよう。
今度は絶対に彼の妨害は受けない。
安心して良いよ」
優しく微笑むが野田の目は私を信じていない目だ。
当然だな。拘束され情報を吐かされ拷問に近い攻撃を受けている。
交渉は絶対に守るが・・・野田は私達を警戒している。
「ボスが・・『アイツ』に『彼』が喧嘩じゃないな。
共食いした」
「17区のボス・・・・エスレート『黒鉄のザンジ』」
「もう、死んだよ」
悲しい声、冷めた声で野田は言った。
「『彼』は異常だ。
一瞬でボスの心臓を貫き、体を分解した」
「その『彼』の特徴は?」
「蒼いコートで全身を覆ってて性別は解らなかった。
でも・・・普通の喰種と決定的違いが有る」
「決定的違い?」
「瞳が・・・・蒼色なんだ」
瞳が・・・蒼色?
普通の喰種の瞳の色は赤黒だ。
瞳が蒼色の喰種なんて聞いた事がない。
「蒼色の・・・瞳(笑)」
壁を利用して寛いでいる幹凪は吹き出した。
「良いじゃん良いじゃん。
カッコイイじゃん!」
髪をクシャクシャに掻き回し呆れる笑い方で笑う幹凪はピエロに見える。
面白い点は別に先程の会話に含まれてないと思われるが?
幹凪が正常なのか?幹凪が異常なのか?私が正常なのか?私が異常なのか?
「本当・・・・・・なんだ」
「その蒼色の瞳の喰種を目の前に見せてくれれば信じるかもね」
「嘘じゃ・・・ない」
「嘘か本当か。
実物本人を見ない限りは無理だね」
一理有る言い方、初めて聞く蒼色の喰種の存在に戸惑いを覚える。
「新型の喰種と考えて調査した方が良いかもね。
他には?」
「『彼』の仲間と名乗る奴等が・・・次々と次々と17区にやって来た」
「仲間ね〜〜〜。
その仲間って奴等も蒼色の瞳なのか?」
「違う」
焦った表情で冷たい眼差しで呟いた。
「あ?」
野田の口調が感に触ったのか幹凪はキレタ口調で言う。
クインケ『千本桜』を展開、戦闘態勢で構えた。
「口に〜は気いつけろ?
お前の命は俺達が握ってんだぜ?」
目が腐ってる。
災厄の笑で威嚇、普通の人間が見たら肝を抜かす程の眼光は鋭い。
が、喰種 野田 秀夫は動じない。
「アイツは・・・異常なんだ・・・俺達に興味を抱かず人間だけを殺す。
殺して殺して殺して殺して殺して食い殺す。
最後に心臓を貫いて引き抜く」
「知るかよ。
お前達の世間事情なんて知んねぇよ」
「人間が殺されてるんだぞ!?
お前らの仲間だろ!」
偽善者ブリの発言にイラツキを覚えた幹凪は野田の顔面を右手で掴んだ。
予測体重70キロの男性を右手で片手で幹凪は持ち上げた。椅子に固定され身動きを封じられた野田は抗う。
無駄でも抗う。抗う野田を見て幹凪は最高の笑を零す。
「人間?仲間?人類?
笑わせんな」
「な、に?」
「俺は自分以外の生物に興味ねぇんでな〜。
仲間意識なんて知らねぇよ(笑)」
凄まじい怪力で野田の顔面が変形する。
原型をギリギリで留め喰種がギリギリ生命活動出来る中途半端で余計に力が入る。
「あれ?
死んだ?」
右手で掴んだでいた喰種をゴミの様に地面に捨てる。
「大した情報は・・・得られませんでしたね〜」
「君は・・・・本当に・・・まぁ、良い」
約束は守る。
地面に這いつくばっている喰種は生きている。
僅かだが感じる心臓の鼓動、済まないと小さな声で囁く様に耳元で言う。
「さて、本部に戻りますか?」
暗闇の部屋に光が満ちる。
重く重い扉の向こう側は廃墟に通じる廊下、喰種が身を隠すには適した地形で野田は寝ている最中に捕獲した。
自問、拷問混じりの会話で『彼』に繋がる情報が入手出来た。
野田 秀夫には感謝している。
「ああ、本部に戻ろう」
閉ざされた扉の先は私達には似合わない世界だ。
血で薄汚れた二人の人間は進む。
喰種『彼』を殺す為に



















 
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