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友達ができたから

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第一章

               友達ができたから
 水野寿子は勉強漬けの毎日を送っている、その為学校の成績は抜群にいい。通っている中学校の二年生の中ではトップだ。
 少しつり目の感じのアーモンド型の目に薄い眉、茶色がかった黒髪をショートにしている。やや丸みがある細長めの顔にピンクの奇麗な唇を持っていて背は一五七程だ、すらりとしたスタイルで制服から出ている脚のラインも見事だ。
 その寿子は常に勉強をしていた、それでクラスメイト達からはこう思われていた。
「頭いいけれどね」
「何かいつも教科書か参考書開いててね」
「声かけにくいわね」
「どうもね」
「悪い娘じゃないかも知れないけれど」
「それでもね」 
 声をかけにくいとだ、クラスメイト達は思っていた。このことは小学校の時からでだ。
 母の雅、寿子が成長した顔そのままの彼女は娘を心配してだ、よく彼女に言っていた。
「寿子、学校の勉強もいいけれど」
「お友達を、よね」
「そう、いないの?」
「ええ、学校にも塾にもね」
 そのどちらでもとだ、寿子は雅に正直に話すのだった。
「いないわ」
「お友達はやっぱりね」
「いないと駄目?」
「お勉強は確かにいいわ」
 少なくともいいに越したことはないというのだ。
「それはね」
「私将来お医者さんになりたいから」
「お医者さんになりたいならね」
 それならば言うまでもないことだった。
「確かに成績優秀でないと駄目よ」
「だからいつも勉強してるけれど」
「将来のお仕事のことも大事だけれど」
「それでもなの」
「お友達もいるとね」
 それで、とだ。母は娘に言うのだった。
「また違うわよ」
「そうなの?」
「そう、色々と楽しいから」
「楽しいっていうとお茶を飲んだりトランプ占いをするみたいな?」
 どちらも寿子の趣味だ、友達はいないが趣味は持っているのだ。他には読書や音楽鑑賞も好きである。
「そうなの?」
「もっと楽しいかも知れないわよ」
 母は娘に友達と一緒にいる楽しみを教えていった。
「だから貴女もね」
「お友達ってそんなにいいの」
「一人でいても」
 それこそ、というのだ。
「寂しいでしょ」
「別に。やることあるから」
 勉強がそれである。
「とにかくお医者さんになって色々な人を助けたいの」
「それはいいことよ」
 寿子は決して性格が悪い訳ではない、人を助けることはしなければならないといつも思っている。ただいつも勉強しているのでその機会がないっだけだ。
 雅は母親なので娘のそのことは知っている、だがそれでもなのだ。
「そうしたいのなら余計にね」
「お友達を持つべきなの」
「人を助けたいのなら人を知ることよ」
 そうしなければならないというのだ。
「それからよ」
「人を」
「だからお友達を作って」
「人を知らないといけないの」
「その意味もあるの」
 楽しむだけでなく、というのだ。
「お友達は宝よ」
「そんなに素晴らしいものなのね」
「だから。お勉強も大事だけれど」
「お友達も」
「部活でも入ったわ」
 娘にこのアドバイスもした。
「寿子茶道とか好きよね」
「お勉強休んでいいの?」
「お勉強のいい気分転換にもなるわよ」
 このことも言うのだった。 
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