背中
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第七章
テレサ、金襴緞子から普通のパーティーの服に着替えている彼女はくすりと笑ってだ、共にパーティーの服に着替えている祐也に言った。
「背中見ているかしら」
「皆のだね」
「そう、どうかしら」
「今の皆の背中はね」
祐也の親戚達のそれはというと。
「丸くなっても反り返ってもいなくて」
「普通になってるわね」
「うん、普通でね」
それにだった。
「明るい感じだね」
「そうなってるわよね」
「そうなんだ、背中なんだ」
あらためて言う祐也だった。
「人は背中を見ればわかるんだね」
「そうなの、その人の心の状態がね」
そのままというのだ。
「出るものなんだよ」
「そうなんだ」
「祐也も大体わかってたと思うけれど」
微笑み赤ワインを飲みつつだ、テレサは祐也に尋ねた。
「このことは」
「人は背中を見ればわかるってことが」
「そうじゃないの?」
「そういえばそうかな」
「バーテンダーをしていればわかるでしょ」
「明るい心持ちの人は背筋もしゃんとしててね」
バーの仕事からだ、彼は話した。
「それで沈んでいるとね」
「背中が丸くなるわよね」
「オーラもね」
背中から多く出ているそれもだった。
「そうだね」
「そうよね、大体わかってたわよね」
「だからね」
それで、というのだ。
「人は背中を見ればいいのよ」
「そういうことなんだね」
「そう、だからこれからもね」
「人の背中を見ること」
「そうしていくといいわ」
こう夫となった彼に言うのだった。
「何かとね」
「そうなんだね、そういえば俺も」
「祐也は?」
「テレサの背中好きだしね」
悪戯っぽい笑みになってだ、彼はこう言ったのだった。
「そこも」
「それは違う場合でしょ」
「まあね、ドレスから出ているそこも」
スペイン風のドレスの多くは背中を出している、テレサの今のパーティー用のドレスもだ。彼はそれも見つつ言うのだった。
「そして夜もね」
「それは背中は背中でもね」
「違う背中だね」
「そう、そこは違うわよ」
テレサは祐也の今の言葉にくすりと笑って返した。
「またね」
「そうだよね」
「ええ、けれど背中はね」
「これからもだね」
「見ていくといいわ」
こう笑顔で言うのだった、そうして祐也は今パーティーにいる人達全ての背中を見てだ、その明るさに笑いながら飲んで楽しむのだった。
背中 完
2014・7・18
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