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アットゥン

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第四章

「丁渡いいからな」
「そういうことでね」
 こうしたことを話してだ、そしてだった。
 真一は暫くその娘が帰って来るのを待った、智樹はその間ずっと店の品を見回っていた。そして遂にであった。
 店に小柄な、一五〇位で楚々とした顔立ちの女性が戻って来た。黒髪で少しぽっちゃりとしていてそしてだった。
 アーモンド型の目は大きく口も大きめだ、肌は雪の様に白くそれが黒髪に会っている。
 そして服はだ、智樹もその娘が店に入った時に見たが。
 黒地でくるぶしまであるワンピースで淵は赤い。ところどころに模様がありそして帯でまとめられている。その服と少女を見てだ。
 智樹はすぐにだ、真一に尋ねた。
「あの娘誰ですか?」
「俺の姪でな、兄貴の娘でな」
「課長のですか」
「そうだよ、由里っていうんだ」
 この名をだ、智樹にも言ったのだった。
「可愛いだろ」
「はい、かなり」
「?御前まさか」
「それであの服は」 
 真一がまさかと思い問う前にだ、真一は彼に問うた。
「アイヌの服ですか」
「ああ、アッドゥシっていってな」
 見れば帽子も被っている、帯もあるやはり黒地で白い模様、草の蔦を思わせる柔らかい渦巻き状の紋様である。帽子は高くなく水平のそれの様に低いが唾はない。
 その服を指し示してだ、真一は智樹に話したのだ。
「アイヌの民族衣装だよ」
「そうなんですね」
「オヒョウの樹皮から糸を作って織り上げた服でな」
「それであの模様は」
「赤かい?」
「いえ、その白いあれは」
 服を飾っている、袖や襟の周りのそれはというのだ。
「模様ですけれど」
「あれは魔除けの刺繍でな」
「魔除けですか」
「あの模様はモレウノカっていうんだ」
 それがあの模様の名前だというのだ。
「いい模様だろ」
「面白いですね」
「他にもラムラムノカとかアイウシノカっていう模様もあるんだよ」
 真一はこのことは饒舌に話した。
「自然への畏敬の念も入ってるぜ」
「ああ、アイヌだからですね」
「アイヌ人は自然と一緒に生きてきたからな」
「だからですね」
「ああした模様が入ってるんだよ」
 服にというのだ。
「そうなんだよ」
「そういうことですか」
「そうさ、それで御前まさか」
「いや、可愛いですね」
 またこう言った智樹だった。
「あの娘は」
「おいおい、そっちに興味いったのか」
「そのアットゥシも似合ってますし」
 智樹は彼女を見ていた、そちらが第一だった。
「可愛いですね」
「まさかと思うけれどな」
「課長の姪御さんお仕事は」
「ここの店員だよ」 
 真一はこう智樹に答えた。
「他の会社に就職決まりかけてたけれどな」
「そこをですか」
「お袋が引っ張って来たんだよ、人手不足でな」
「そうだったんですか」
「そうだよ、とにかくな」
 真一は智樹自身に問うた。
「御前由里に」
「あの、彼氏とかは」
 智樹は真一の問いにこう返した。 
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