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『自分:第1章』

作者:零那
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『決別』

翔平とは別れる。
それは、ホームレスになるって事。
生活能力も無ければ育児環境も最悪。
だから、娘とも...サヨナラする。

それは、決して簡単ではなく...

零那が翔平の家に行ってから今迄、姑達は何回も娘に会いに来た。
『預からして』
『遊ばして』
孫は目に入れても痛くない。
まさにそれ。
凄く可愛がってくれてる。

この人達なら...
何の繋がりも無かった、赤の他人やったあの頃、それでも親身になってくれた...
この人達だからこそ、託せれる...

絶対、零那と一緒よりは幸せに暮らせれる保証がある。
だったら道はひとつ...
施設に入れるくらいなら、この人達に託した方が断然良い。


自ら娘を捨てたも同然。
悲しむのは筋違い。
恨まれ憎まれ罵られ、そのうち、零那が母親に言った『産んでくれやか頼んでない』とか『母親やか思ったこと無い』とか言われるんやろな...

それでも、やっぱり、自分本位に自分だけの意地で連れ回すのは違うと思うから...

大事やからこそ、大事にされるべき場所で暮らして欲しいから...

だから...
お別れ...

娘と逢わん約束をさせられた。

母親は死んだとか、そう言われて育ったかも知れん。
3歳なる前やったし記憶も曖昧だろうし...

それでも良い。

『母親が我が子を手放したらあかん』

『子供は母親が連れるべきや』

そんなん、何の根拠も無い。
母親と一緒が幸せやか思わん。
それは母親の身勝手な意地。


母親について行ったからこそ、零那はメチャクチャな人生になった。
母親のせいで人生に絶望した。
母親が再婚したせいで、男を見る目が無かったせいで、人間としても女としても欠陥品になった。

歪んだ零那の人格を作ったきっかけは母親。
恨んだ。
恨みまくった。
なんべん殺したろかって思ったことか。

だから、母親が連れるのが当たり前とか言われたくない。

捨てたって言われても良い。

最低って言われても良い。


だから、お願い...

生活に不自由なく、食べることに苦労せず、温かい家で過ごして欲しい...

当たり前と思ってることは、実は当たり前じゃないから...

だからこそ、当たり前を当たり前に与えてくれる環境で生きて欲しい...

世の中、綺麗事じゃ生きていけんから。

大きくなれば苦労するから、母親の事なんか忘れて、今を楽しく生きて欲しい...


母親が居らん事で誰かに何か言われるやろうな...
いじめられるかもしれん...
でも、零那の娘は、そんなんに負けん。


だから、心配してないよ。
優しいけど、気が強くて、我が強くて、マイペースで、活発で...そんな娘...

こんな母親のせいで嫌な思いさして悪いね...
でも、大丈夫。
貴女には、パパと、ジジババと、ひいジジババが居る。
温かい家族が居る。
独りじゃない。

それが、ママに出来る唯一の最後の事だったから...


大丈夫。
ママとは違う。
貴女は立派な女性になる。
大事なもの、家族に注いで貰える。
それが何より一番大切なもの。
ママには与えられんものやから...

どうか、どうか...
何気ない毎日を、無事に生きて、健やかに成長してください...

 
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