暁の舞R
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暁という名
前書き
旅に出た赤虎だったが…?
俺が村をあとにしてから、三日がたった。
俺はポーチを手で探ると、ビスケットを取り出した。
「これで最後かぁ…。もっと準備すりゃ良かったな…」
と俺が最後のビスケットをかじると、虚しそうに俺の腹が鳴いた。
「くっそー!腹減った~」俺は叫ぶ。
村を出るときにカッコつけて出て行ったが
結果このような惨めな状態になっている。
「鬼を根絶やしにして昔のように安全で幸せな世界にする、ねぇ……」
俺はその言葉を思い出すたびに、恥ずかしい。
「でも、俺もこの八年間修行に修行を重ねて強くなったんだ。今なら鬼にだって……」
と呟いていると、俺の視界に小さな街の光景が広がった。
「やっと着いた~ルフレス!」
俺は腹の虫が鳴いているのも忘れて、街へ走り出した。
「やっぱり村と街は違うなぁ…」
それが俺の第一声だった。
街は村に比べると人数は約三倍近くいるのではなかろうか。
村ではお目にかかれない、デカイ建物も伺える。
俺がこの街を訪れた理由は2つあった。
一つ目は仲間を増やすため。
やはり鬼と戦う為には到底俺一人じゃ太刀打ち出来ないだろう。
しかし、仲間がいれば攻撃の幅が広がり
より円滑に鬼を狩れるからだ。
2つ目は……飯を食べるため。
これにもちゃんと理由が……ある。
この街は海が近く、鮮度を保ったままの
最高の状態の魚を食べられるからだ。
そんなことを考えているとまた俺の腹の虫が鳴り始めた。
「──ふぅ、食った食った♪」
俺はかなりの上機嫌で店を出た。
なんと俺はこの店の記念すべき一万人目の客ということで
全品無料で食べさせてくれたのだ。
「いや~、俺ってばちょ~運いいよな!この流れでもっと良いことが……」起きないかな、と言おうとした瞬間
俺に向かって短剣が飛んできた。
反射的に避けようとしたが、ここは人が多い。
俺は避けずに短剣を右手で止めた。
俺は辺りを見渡す……。その時だった。
俺に向かって長髪の黒髪の女性が走ってきていた。
本来なら喜ぶ場面だろうが、この場合そうはいかない。
何故なら長髪の黒髪の女性は、刀を持っているから。
「覚悟ぉぉぉ!」と女性が俺に切りかかる。
俺はとっさにさっきの短剣をを盾にして
女性の斬撃を流そうとするが─
キィィィン!俺が持っていた短剣が弾かれた。
「……こいつ、強い」と俺は呟くと
背中の《煉獄刀》に手を掛けようとしたとき…
女性の攻撃が急に収まった。
俺は女性に目を向けると、女性は
「あんた、誰?」と呟いた。
「いや、それは俺の台詞だって」俺は言葉を返す。
女性は「あんた指名手配中の変態じゃないの?」
と意味の解らない言葉を俺に投げかける。
「いや、俺は縮緬問屋の旅の隠居…じゃなくてハルナスって村から旅に最近出たしがない旅人だよ」
と俺は答え、言葉を続けた。
「てか、何で俺を変態と思ったわけ?」
と聞くと、女性は
「だって、ニヤニヤしてたから……」と小さな声で話す。
「それは良いことがあったから顔が緩んでただけだぞ。ニヤニヤしているから全員変態と限らないんだぞ」
と自分でも何の話をしてるんだと思いながら言うと
女性はとっさに地面に土下座をした。
「すまない!あたしってば、つい早とちりしちゃって」
と謝る。だがこの場所で土下座されると視線が痛い。
「うわ、あいつ女に土下座させてるよ!」
「有り得ない!お前が土下座しろ!」
「人間の屑だ!!」
などと誤解を受け、酷い罵声を浴びる。
俺は猛スピードでこの場を離れ、お茶屋へ飛び込んだ。
「酷い目にあった…」俺が独り言を呟くと
目の前にはさっきの女性がいた。
俺は女性に文句を言おうとしたが、女性は
「さっきは本当にごめん。その良かったらここのお茶屋のお会計はあたしが出すから、許してくれないかな?」
と涙目で俺を見つめてきた。
俺は思った。(ズル過ぎだろ…、そんな顔をされて許さない男などいるわけがないぞ…)と心の中で呟く。
俺はクールぶって「ああ、それでチャラにしてやるよ」と話すと
女性はパァァと表情が明るくなり笑いながら話した。
「ありがと!あたしの名前は暁 渚!そうだ、名前教えてよ!」と俺を見つめる。
「俺は赤虎、ハルナス村生まれで育ちもハルナス村だ」
とあんまり自己紹介になってない自己紹介をした。
俺は脳内に暁という名前に聞き覚えがある気がしたが
気のせいだろうと考えを打ち消し
湯呑みになみなみと注がれたお茶を一気に飲み干した。
後書き
この女性は一体?
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