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リリカルアドベンチャーGT~奇跡と優しさの軌跡~

作者:setuna
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第四十五話 ホエーモン

 
前書き
ホエーモンとの邂逅。
大輔「リリカルアドベンチャー、始まるぜ」 

 
翌日の早朝。
大輔はフレイドラモンにアーマー進化させ、オーガモン戦で発現した力を発動する。
フレイドラモン[…オーバードライブ!!]
フレイドラモンが紅いオーラを纏うと一気に跳躍する。
大輔「凄え…今までとはパワーもスピードも桁外れだ」
ブイドラモン[行くよフレイドラモン!!そら!!]
フレイドラモンに向けて大岩を投げる。
フレイドラモン[はあっ!!]
拳が大岩を粉砕する。
ブイドラモン[…なら、これはどう?ブイブレスアロー!!]
フレイドラモンに向けて放たれるブイドラモンの必殺の熱閃。
フレイドラモン[ナックルファイア!!]
ブイドラモンの必殺技をかわすのではなく、自分の技をぶつけ、たやすく掻き消した。
フェイト「凄い!!」
フレイドラモン[ふふ………あれ?]
急にオーラが消えて、フレイドラモンは頭から落下した。
アリサ「ちょ、大丈夫あんた?」
フレイドラモン[な、何とか…]
口に入った砂を吐きながらアリサに答えるフレイドラモン。
賢「強力な力だけど思わぬ弱点が発覚したね。デジメンタルのエネルギーを限界まで出力させるから無尽蔵にエネルギーを消耗してしまう。言わば、オーバードライブはブレーキが壊れた車みたいなものだね。余程上手くエネルギー配分が出来ないと長期戦は出来ない」
ルカ「大抵の…並の成熟期なら一瞬でカタがつくけど…あのデビモンやアンドロモンみたいなのが相手だと、やっぱり不利になるよ」
大輔「…慣れるしかないか」
フレイドラモン[ああ…]






























そしてしばらくして、子供達は筏を作って海を渡ることにし、海の近くの森で作業していた。
ブイモン[ブイモンヘッド!!]
ブイモンの頭突きが炸裂し、木はメキメキと音をたてて倒れた。
デジモン達が各々の技で木を倒していく。
ユーノ「木を伐るだけで、随分かかりそうだ」
ユーノが困ったように言う。
アリサ「焦っても仕方ないわ。ゆっくりやりましょ」
なのは「だね。あれ?」
アリサに相槌を打ったなのはは、後ろからの足音に気がついた。
なのはが振り返り、釣られてアリサが振り返ると、レオモンが歩いてくるではないか。
アリサ「レオモン!!」
レオモン[サーバ大陸に行くそうだな]
アリシア「どうして知ってるの?」
レオモン[噂好きのデジモンもいるのさ。何か手伝えることはないかと思ってな]
確かにレオモンの背後を見ると、ギアサバンナで出会ったメラモンにサンモン達、おもちゃの町のもんざえモン、そして…。
賢「彼らは?」
エレキモン[お前らの噂を聞いて来てくれたのさ]
後ろにいるモジャモンやケンタルモン、ユキダルモンを見遣りながら言う。
全員の力を借りて、選ばれし子供達を乗せる筏はあっと言う間に完成したのだった。






























レオモン[お前達なら、こんな海くらいきっと越えられる!!]
大輔「ありがとう、皆のおかげだ!!」
レオモンと大輔が握手を交わす。
その時だった。
アリシア「あっ!!」
おもむろにアリシアが声を上げる。
その視線の先、アリシアの手の中で………。
ぱりんっ!!
フェイト「あ…っ!!」
アリシア「デジタマが孵ったぁ!!」
ぷにぷにと可愛らしい、ユキミボタモン。
殻から飛び出して、アリシアの胸に飛び込んだ。
ユキミボタモン[アリシア~!!]
声はプロットモンの時より大分幼いが…。
アリシア「お帰り…」
ユキミボタモン[うん…]
生まれてきてくれてありがとう。
小さなあなた。
レオモン[お別れだな]
フェイト「本当にありがとう、レオモン、皆も」
すずか「元気でね!!」
筏に乗り込み、綱を外す。
いよいよお別れだ。
培った友情。
蓄えた力。
刻まれた恐怖でさえも……忘れない。
ファイル島の皆のことは、決して忘れない。
揺れながら、筏が岸から離れていく。
寂しさに思わず泣き出してしまったアリシアの肩を優しく叩いて、フェイトは見えなくなるまでレオモン達の影を見つめていた。






























ザン…ザパン……
穏やかな波が、太陽を反射し細かに光る。
子供達とデジモンを乗せた筏は、雄大な海に揺られ順調に航路を進んでいた。
ルカ「…まだ何も見えない」
ルカが目を細めても、広がるのは海の青ばかり。
どこまでもどこまでもそれは広がっている。
はやて「後どれくらいで着くんやろうなあ…」
大輔「おいはやて、しっかりしろよ、まだ船出して半日だろ?」
大輔は朗らかに笑いながらはやての肩を叩く。
しかしユーノは難しい顔で筏の中央に括りつけてある荷物を見遣った。
ユーノ「でも水も食料も、切り詰めて半月しか持ちませんよ。それまでにサーバ大陸に着かなかったらどうするんです?」
ファイル島に棲むどのデジモンも、レオモンでさえ踏んだことのない遠い地。
何日かかるかなど分からない。
何があるかも分からない航海。
そして決して余裕のある大きさではない、こじんまりとした筏と、それに見合う量しかない荷物。
不満はないが、不安はある。
大輔「ま、その時は魚でも釣るさ」
アリサ「後は天気が崩れないことを祈るだけね」
全ては天任せ。
アリサとユーノ、大輔はそれぞれ空を見上げた。
アリシア「うう…気持ち悪ーい……」
すずか「こんなに揺れるとは思わなかったなあ…」
アリシアとすずかは揃って顔色が悪い。
ガブモンX[アリシアとすずか、顔が真っ青だよ]
ルナモン[すずか、気持ち悪いなら横になった方がいいよ?]
すずか「…大丈夫」
フェイト「全然大丈夫には…キャッ!!?」
すずかを心配そうに見ながら何かがフェイトの顔の横をすり抜けた。
反射的にキャッチするとなんとそれはユキミボタモン。
もし受け止められなかったら海にダイブしていただろう。
そう考えて青ざめると、アリシアが後を追ってきた。
アリシア「あ、フェイト。ありがとう!!」
フェイト「駄目だよアリシア、ちゃんと見てないと…!!もし私が受け止めなかったら海に落ちてたよ!!」
アリシア「ご、ごめんね…何度も注意してるんだけど聞かなくて…」
申し訳なさそうに謝るアリシア。
当のユキミボタモンはきゃらきゃらと無邪気に笑い声をあげるばかりだ。
チビモン[ユキミボタモン、めっ!!]
ユキミボタモン[うう~]
はしゃぐユキミボタモンをチビモンが叱る。
叱られたユキミボタモンはシュンとなった。
すずか「まるでお姉さんみたいだねチビモン。」
チビモン[お姉さんって何?]
すずか「え?ええと、お世話をする人…かな?」
アリサ「私に聞かないでよ…」
なのは「えっと、チビモンの場合…ブイモンがチビモンのお兄ちゃんになるんじゃないかな?幼年期も同じなんだし」
ブイモン[へ?]
筏を漕いでいたブイモンがいきなり話を向けられたことにより目を見開いた。
チビモン[………]
チビモンはブイモンをジッと見つめるとブイモンに歩み寄る。
ブイモン[な、何だよ…?]
期待に満ちた目にブイモンは狼狽する。
チビモン[…お兄ちゃん?]
ブイモン[……っ!!!!]
ズキューンッ…!!
子供達はブイモンが心を撃ち抜かれたのを見た。
ブイモン[………]
フェイト「ブイモン…?」
黙ってしまったブイモンを不思議そうに見遣る。
ブイモン[フェイト…]
フェイト「何?」
ブイモン[お兄ちゃんの称号って最高だな…!!]
目を輝かせながら天を見上げるブイモン。
大輔「………(将来こいつシスコンになるな…)」
チビモンにたかるデジモンを激怒しながら叩き潰すブイモンの姿が目に浮かんだ。
…突如筏が一際大きく揺れた。
全員【!?】
ブイモン達に気を取られていた大輔達が向こうを向いた時には。
全員【うわあああああ!!?】
大きな口が目の前にあった。






























悲鳴がわんわんといつまでも反響する。
音の出口がない証。
後ろを振り向いても光はなく、既にその口は閉じられてしまっていた。
すずかが荷物に捕まり、吐き気をこらえながらも必死に状況説明を試みる。
大輔「何だよあれは!?」
ガブモンX[あれは多分ホエーモンだよ!!]
すずか「恐らくこれはホエーモンの食道。勿論、レストランという意味の食堂じゃないよ!!」
はやて「そんなこと分かっとるわ!!」
ギリギリ限界のすずかのボケにはやてがツッコミを入れた。
なのは「すずかちゃん、限界値を越えてるね…」
アリシア「うぷ…っ」
ユキミボタモン[アリシア~!?衛生兵衛生兵~!!]
食道は長く長く続いている。
はたとなのはは気がついた。
なのは「ねえ……ここが本当に食道だとしたら、私達が外に出るためには…」
ユーノ「……お尻から出ることになるね」
アリシア「そんなのやだあああ!!」
ルカ「…同感」
ユーノとアリシアとルカが嫌そうに顔をしかめた。
ちょっとそれは結構かなり本気で嫌だ。
だがしかし、そんな先のことよりもまず皆は目下切り抜けなければならない緊急事態にぶち当たった。
ホエーモンの細胞が、子供達を異物と見なし襲い掛かってきたのだ。
全員で体重をかけながら何とか舵もない筏の方向を変えつつ逃げる。
唐突にだだっ広い泉のような場所に投げ出された。
着水。
何もないところだ。
大輔「ここは何処なんだ…?」
ユーノ「食道の先は、胃だと思いますけど…」
胃。
全員の脳内に嫌な連想が広がる。
そしてそれは、大正解だった。
じわじわと滲み出るように、刺激臭を放つ液体が筏に向かって流れてくる。
ユーノ「これは酸……胃液だ!!」
アリシア「胃液って何?」
賢「胃に入った物を溶かす液のことさ」
アリシア「う…嘘ぉ!?」
果たしてその液体は、筏に触れると同時にぶすぶすと音を立て白い煙を上げさせた。
大輔「おい、落ちるとまずいぞ!!なるべく真ん中に寄れ!!」
隣にいたフェイトを強引に自らの腕の後ろに隠す。
ユーノ「大輔さん、あれを!!」
ユーノが指差した先には。
アリシア「黒い歯車!!」
賢「ダルクモンの浄化の光から逃れた奴か!?」
なのは「い、痛そう…」
あの忌まわしい黒い歯車が、ずぶりと深くホエーモンの体内に突き刺さっていた。
今まで気がつかなかったのは、デビモン(悪)による影響がなくなったせいだろうか。
フェイト「もしかしたら…痛くて、暴れてるだけなのかも」
フレイモン[だったら俺に任せろ!!]
フレイモンが拳に炎を纏わせる。
フレイモン[ベビーサラマンダー!!]
フレイモンが放った炎が狙い違わず黒い歯車に直撃した。
歯車は一瞬で粒子となって消えた。
賢「お見事」
フレイモン[ヘヘッ!!って、あれ?]
コロナモン[な、何だあ!?]
目も開けられない強い光の中、高速で上方向に押し上げられる力を感じる。
全員【わあああああっ!!!!?】


































衝撃と水音。
子供達を乗せたその筏は、ホエーモンが歓喜に噴き上げた潮と共に、ホエーモンの体内から放り出されたのだった。
ばらばらに壊れた筏の木の切れ端に数人ずつ捕まり難を逃れる。
頭数を数え大輔がほっと息をつくと、ホエーモンが穏やかに皆に声をかけた。
ホエーモン[すみません、乱暴なことをして…おかげでやっとすっきりしました]
大輔「いや、いいんだ。それよりホエーモン!!サーバ大陸ってここからどれくらい離れてるか知ってるか?」
ホエーモン[はい。私でも5日はかかります]
大輔が聞くと、ホエーモンは肯定し自分でも5日はかかると告げた。
果てもない遠さだ。
もう筏もないのに、どうやって行けばいいのだろう。
ホエーモン[サーバ大陸に行かれるのですか?」
大輔「ああ、でもどうすれば……」
ホエーモン[それでしたら私がお送りいたします。黒い歯車を取り除いてくださったお礼に]
ギルモン[本当か!?]
まさに乗りかかった船、運よく子供達は新たに航海の術を得たのだった。
 
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