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ハイスクールV×D ライド14
……交渉への立会いと言う事だが、四季と詩乃……と言うよりも正確には万が一攻撃を仕掛けてきた場合に対する備え、と言う所だろう。少なくとも、強力な武器とS級はぐれ悪魔を討伐したという実績が有る以上、こう言う場面で頼られると言う事だ。
入口側に立つ朱乃を除くリアスの眷属と向き合う形で立つ四季と詩乃の二人。四季は今回は超兵装ブラスター・ブレードを持ち、詩乃も神器の力で平行世界に存在している別の己の武器である弓を持っている。……序でに髪の色は普段と変わらず猫耳も無いので猫シノンモードではなくSAOシノンモードと言った所だろう。
ぶっちゃけ、本人が恥ずかしがって猫シノンの姿はあんまり使わないのだ。
まあ、ソーナには頼みごともして有るし、一度くらいはタダで引き受けても良いだろうと言う判断だ。
そんな訳でオカルト研究部に件の二人がやってくる当日……心底居心地が悪い思いをしている四季だった。
ただでさえ一誠からは睨まれているし、木場の雰囲気も思いっきり悪い。木場にとって憎悪の対象になるであろう彼女達は兎も角、四季にまで視線を向けてくる意味は……超兵装ブラスター・ダークが有れば、とでも考えているのだろう。
「……いい加減、話を始めてくれないか?」
流石にこれ以上空気が悪いのは勘弁して欲しいと思いながらそう話を促す。流石に木場が彼女達を憎悪に篭った視線で睨むのは納得行くが……それを可能とする武器を持っている自分まで睨まないでほしいと思う四季だった。
「そうね。でもその前に。ねえ、君達?」
「何かな……紫藤イリナだったか?」
最初に口を開いたイリナが先ず四季達に声をかける。彼女の視線は四季の持つ光の超兵装ブラスター・ブレードに向いていた。
「君が聖剣を持っているのに、君達が悪魔側にいるのはどうして?」
「別にオレ達は悪魔側って訳じゃない。フリーの賞金稼ぎ……場合によっては傭兵の真似事もしている。……今はこの交渉の立会い人と言う事でソーナ・シトリー生徒会長に雇われただけだ」
それを聞いて安心したとばかりにイリナは改めてリアス達……正確には王であるリアスと女王である朱乃に向き直る。
「先日、教会に保管、管理されていた聖剣エクスカリバー三本が奪われました」
真剣な面持ちでそう話を切り出した。話は四季の予想通り十字教会の三派によって保守管理されていた聖剣エクスカリバーが盗まれたという話しだ。
(……相手が堕天使の幹部なら強奪も可能か……)
聖剣の管理体制は気になる所だが、相手が過激派の堕天使幹部と推測し、その上で可能性としてコカビエルが実行犯と推理すれば責めるのも酷と言う物だろう。
……まあ、そうじゃなかったり、コカビエルが黒幕でもエクスカリバー強奪の実行犯が違ったら管理体制を位置から見直す必要が有るだろう。
「えっ、伝説の聖剣のエクスカリバーって、そんな何本もあるのか?」
聖剣エクスカリバー。ある意味日本の地でも有名な剣、アーサー王の伝説は知らなくてもこの名前だけは知っていると言う者も多いだろう。
「イッセーくん、真のエクスカリバーは大昔の戦争で折れたの」
「折れた? チョー有名な剣なのにか?」
「いや、元々エクスカリバーは折れたカリバーンと言う別の聖剣を打ち直したと言う説もある。既に一度折れた以上、もう一度折れても不思議は無いだろ」
一誠へと説明するイリナの言葉に続いて四季がそう補足する。暗に『勉強不足だな』と言う意思を籠めての言葉だが、当の本人もそう受け取ってくれたのだろう、ムッとした表情をしている。
「今はこんな姿さ」
そう言ってゼノヴィアが巻きつけた布を取り除いて背負っていたエクスカリバーの姿を見せる。……それによって憎悪の対象であるエクスカリバーを直視した木場の憎悪の視線が強くなる。
「折れたエクスカリバーの破片を集め、錬金術によって新たに七本が作られた。……私が持っているのがその一つ、『破壊の聖剣』。これはカトリックが管理している」
そう言って再び布で聖剣を覆うと今度はイリナが細い糸の様な物を取り出す。
「私の方は」
取り出した糸は意思を持つように動き出して形を日本刀へと変えた。
「『擬態の聖剣』……の日本刀形態」
そして、今度は再び糸状に変わり、ハートマークを作ってみせる。
「こんな風に形を自由に変えられるの。すごく便利なんだから」
「確かに便利そうだな」
「そうね、確かに便利ね」
「でしょでしょ」
何処か自慢気に言うイリナの言葉に同意する四季と詩乃。自分の聖剣が褒められたのが嬉しいのか、当のイリナもうれしそうだ。
まあ、四季は四季で『防具にもなりそうで便利だな』とか、詩乃は詩乃で『防具や弓矢に出来て便利かも』と思っているので、剣と言うよりも聖剣のオーラを持った武具としてみている。
「そうなると、盗まれたのは『天閃』『夢幻』『透明』の三振りか」
「「なっ!?」」
「ん?」
何気なく呟いた四季の言葉に二人が驚愕の声を上げる。
「ああ、どうせなら戦闘に使える物を奪うだろうと推測しただけだ」
「どうしてエクスカリバーの名前まで知ってるかって聞きたいんじゃないの?」
「ああ。知り合いの情報屋から買った。フリーの立場で三大勢力の隙間で活動する以上、フリー同士の連絡や情報は命なんでな。……そう言う立場の奴も知ってるさ」
そう言って笑みを浮かべると、
「それに情報なんて完全に隠せる物じゃない。何処からか洩れる物だろ」
同じくフリーの賞金稼ぎの伝手で知り合った情報屋なのだが、かなりの精度の情報を貰う事ができるので、結構頻繁に利用していたりする。
「……ところでイリナ、悪魔に態々エクスカリバーの能力を話す必用は無いだろう?」
「いくら悪魔だからと言っても、信頼関係を築かなければ仕方ないでしょう。それに、私の剣は能力を知られたからと言って、この悪魔の皆さんに遅れをとる事は無いわ」
自分の実力に自身を持っているのか、そう言いきるイリナ。確かに知られたとしても変化と言う類の能力なら、それほど問題は無いだろう。寧ろ、戦闘になった際には不意打ちは出来ないだろうが、それでも警戒心を抱かせる事ができる。
時に情報を開示した方が有利になることも有る。
「それに、彼の持っている聖剣にも興味が有るのよね」
「これの事か?」
そう言ってブラスター・ブレードを掲げてみせる。
「うんうん、真っ白で綺麗な剣だけど教会の資料にも無い剣だから気になってたのよね」
幾ら詩乃一筋とは言え、外見は十分に美少女に分類できるイリナ……流石に剣を覗き込むために近付かれると照れもする。
(何デレデレしてるのよ)
(いや、流石に近付かれて……痛いって、勘弁してください)
(……)
小声でそんな会話をして鏃で脇腹をグリグリとしてくる詩乃に本気で謝る四季。はっきり言って詩乃相手ならヤンデレだろうが受容れる覚悟も有る。……寧ろ、殺したいほど愛されるというのも嬉しいと思う四季だったりする。
「ねぇ、この剣、なんて銘なの?」
「……異世界に於ける英雄の手にあって、多くの戦いを駆け抜けた剣、その英雄は己の名を捨てて新たに剣の銘を己の名にした」
ゆっくりとその剣の逸話を話す。『異世界の剣』と言う所で伝説に謡われた天使側の使った剣だと言う事に気付いたのだろう、驚愕に染まる。
「この剣の名は同時にこの剣と共に戦い抜いた英雄の名、『ブラスター・ブレード』だ」
今この地に告げられる英雄の名。
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