美しき異形達
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第三十四話 湖のほとりでその八
「だからよ」
「ああ、ビワコオオナマズな」
薊もここでわかった。
「琵琶湖だけにいるでかい鯰か」
「そう、その鯰を連想してね」
それで鯰の話を出したというのだ。
「それでなのよ」
「そうか、けれどとにかく川魚は生で食べない方がいいか」
「あまりね」
「虫が怖いからな」
「寄生虫は怖いわ」
実際にとだ、菖蒲も薊に言う。
「命に関わる位にね」
「それは尋常じゃねえな」
「そうでしょ、だからね」
「気をつけないと本当によくないな」
「そういうことよ、それで食べた後は」
「ああ、船に乗ってな」
それで、とだ。薊は寄生虫の話から明るい顔に戻ってだ、そのうえでこう言うのだった。
「琵琶湖の中見るか」
「琵琶湖も奇麗だしね」
笑顔で言ったのは鈴蘭だった。
「見所が一杯あるわ」
「そうよね、じゃあ後片付けをして」
そしてと言う裕香だった。
「それからね」
「船に乗ろうな」
「船の後はね」
裕香はその痕のことも話した。
「旅館に戻って」
「お風呂に入ってな」
「滋賀のお料理楽しみましょう」
「滋賀なあ、近江牛はやっぱりないよな」
「薊ちゃん本当に近江牛に興味あるのね」
「ああ、食いたいのは本音だよ」
まさに偽らざる、というのだ。
「ステーキとかな」
「すき焼きとか?」
「そっちもいいな」
薊はにこりと笑って裕香に応えた。
「皆で鍋を囲んでな」
「そうよね、お鍋もね」
「とにかく肉好きなんだよ、あたし」
「牛肉もよね」
「こう言ったら肉も魚も好きだけれどさ」
薊は食べものの好き嫌いはない、本当に何でもよく食べる。だが牛肉はその中でも大好物なのでこう言うのだ。
「すき焼もいいな」
「そよね、じゃあ」
「牛肉だったらいいな」
こう言ってだった、薊達は鈴蘭、黒蘭と別れてだった。
そのうえで自分達の旅館に戻った、旅館でまず風呂に入ってだった。そのうえで浴衣に着替えて夕食を食べるのだった。
その夕食を見てだ、薊は満面の笑みで言った。
「最高だね」
「すき焼きね」
「夏でも美味いんだよな」
裕香に応えつつすき焼きを見て笑っているのだ。
「本当にな」
「そうよね、ただね」
「ただ?」
「やっぱりこの肉あれだよな」
「輸入肉よ」
菖蒲が薊の左横から言って来た。
「オーストラリアからのね」
「そうだよな」
「だから三キロもあるのよ」
その肉の量がというのだ。
「安いから大量に用意出来るの」
「そうだよな、これだけの量なんてな」
「近江牛だとね」
「高くてとてもだよな」
「私達は学生だから」
その学生の旅ではだ。
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