ひねくれヒーロー
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
花魁草見つかったのはいつのこと
花言葉は「合意、一致」
********************************************
花魁草見つかったのはいつのこと
◇◆◇サイ◇◆◇
兄さんが死んで、どれぐらい経っただろうか
初めのうちは日数を数えていたけれど、それさえしなくなった頃
ボクと組む新人の存在を知った
ずっと兄さんと組んできた
でも、死んでしまった
だから新しく誰かと組むことになるのは当たり前だ
それでも、自分の中の何かが、それを拒んでいた
仕方なしに、トルネ先輩に連れられて出会った
白髪で、痩身で青白い肌、仮面で隠された顔————鶸茶
きっと先輩は、ボクが鶸茶を傷つけるのだと思ったのだろう
大人しく差し出した手を見て、安著しているようだった
流石に初対面の、これから一緒に組んでいく人を傷つけないさ
それに、こんなに小さくてか弱そうな|女の子《・・・》を苛めたりしないよ
兄さんやダンゾウ様からも女の子には優しくしなさいって言ってたし・・・
差し出された手を握られた瞬間、違和感に気づいた
それから全体を観察して———女性としては骨格がおかしいことに気づく
そして性別を確認してから、鶸茶から常識を知れと言われたけど分からなかった
手合わせのときは、驚いた
てっきり忍術か幻術の使い手だと思っていたのに、使ってくるのはすべて体術
柔拳よりも剛拳といわれる部類の体術
普通は体術使いだとは思わない
技のキレならボクより上、それにボクの術を理解した動き
本来なら警戒すべきだった
それなのに体格から、攻撃に重みがないことから格下だと油断しきっていたボクを罠にはめた
・・・負けた
本心からそう思った
溜息をつきながら、油断するからだと言われたときは、その通りだと思った
まだまだ未熟だということが身に染みて分かった
駆けつけてきたトルネ先輩に説教されながらも、鶸茶を観察していた
服を乾かすのに、何故脱がないのか
男同士だから別にかまわないのに、脱げばいいと思っていた
そして望みを持ってしまった
もしかしたら女の子かもしれない、と———
脱がして確認してもやっぱり男だったことに、何故だか少し涙が出た
何でだろう
それから鶸茶と組んで修行をしていると、彼のことが少しずつ分かり始めた
食事代わりに兵糧丸をとること
お菓子作りが上手なこと
ダンゾウ様やトルネ先輩、フー先輩と仲が良いこと
物知りで本が好きだということ
口数は少ないけれど、欲しい答えをくれること
本当に少しずつ分かり始めた
絵を描いていると、いつのまにか新しい筆洗やパン屑、お茶を用意してくれてたり・・・
講義で分からない所があれば代わりに質問してくれたり・・・
基本的にボクのことを常識知らずだの、KYだのと言ってくるのにこんなにも良くしてくれる
この間だって無理に買い物に誘ったのに、ちゃんと待ち合わせ場所に来てくれていた
団子を渡した瞬間嫌そうに顔を歪めていたけれど、全部食べてくれた
不思議と心が温かくなる
そうフー先輩に言ったことがある
すると先輩はこう教えてくれた
「鶸茶はツンデレだからな」
ねえ鶸茶
ツンデレって何?
◇◆◇ダンゾウ◆◇◆
客間に足を踏み入れると、すでにヒルゼンとシナイ、それにイカリが席についていた
イカリは呼んではおらんかったのだがな・・・
そう思って見ていると、笑いながら茶を差し出してきた
「お茶組み要員です
私の存在などお気になさらず、話しあってください、ね」
「私が頼みました
どうか同席させていただきたい」
・・・まぁ、そういうのであれば仕方あるまい
イカリに席に着くよう促し、ワシも座る
「それでは、シナイの報告を聞くとしようかのう」
ヒルゼンが茶を啜りながらシナイを見る
あいも変わらず表情のない顔だ
女なのだから多少は笑顔を作れるようになれと何回言ったことか・・・
このままだと婚期が遅れるばかりだぞ
「はい
先日の里外任務からの帰還中、暁のサソリと遭遇いたしました」
帰還中ということは、木の葉からそう離れてはいない場所か
ここ最近、木の葉周辺における暁目撃情報が多い
人柱力たるうずまきナルトは自来也に連れられ修行に出ているため、捕獲される危険はまずないだろう
問題は———ねたみコンだ
人柱力とまではいかんが、尾獣九尾のチャクラを持っている稀有な存在
知られてしまえば、攫われる可能性もある
「サソリと遭遇し、会話だけでその場は終わったのですが・・・
どうも気になることがありまして」
会話だけで、か
戦っていれば今頃シナイはここにいなかっただろう
戦闘を避けれたのは幸運だったな
「どうやら、私、暁の一人と因縁があるみたいなんです」
・・・ヒルゼンと顔を見合わせる
一体こやつはなにが言いたいというのか
イカリが震える手でシナイの肩を掴んだ
「誰と?」「私と」
「誰が?」「角都が」
因縁、か
「・・・シナイちゃん、何やったんですか」
本当にナ
「それが身に覚えがなくって困ってるんだわ
・・・それでですね、以前中忍試験の折り、雨隠れから不正受験していた三人組
覚えておられますか?」
中忍試験はワシは見ていないな
ヒルゼンは記憶に残っていたらしく、声を上げた
「予選にて油女シュロと戦い、そこのイカリと戦った者の班かの?」
「はい
彼らは変化していた暁でございます
今まで報告出来ず申し訳ございません」
暁が木の葉内部に潜入だと!?
報告については大蛇丸の騒動で何かと忙しかった時期、少しは目を瞑ろう
しかし、何のために潜入した?木の葉崩しのためにか?
「その時暁の一人、小南という者がコンと接触しております
・・・まるで里抜けを勧めるかのように、ご丁寧に幻術までかけて・・・」
・・・すでに暁には九尾のチャクラの情報が漏れていると取っていいようだな
ヒルゼンも、うめきながら頭を抱えてしまった
「何ということじゃ・・・
忍術まで使用されていたのに気づかなんだとは・・・」
これからの中忍試験における課題が増えたな・・・
「何それ、聞いてませんよ!?」
怒りもあらわに、机をたたきつけてシナイに詰め寄った
アカデミー時代よりコンのことを気にかけているイカリのことだ
里抜けを唆されたとあらば、平静ではいられまい
「お前は鬼鮫のフラッシュバックで使いものにならなかったからな」
「・・・イカリよ、ワシの記憶違いでなければ鬼鮫とやらも、暁の一員ではなかったか」
「・・・ぴゅ、ぴゅ〜」
口笛吹いて誤魔化そうとするな
・・・全く・・・暁と因縁のある者がこうも多いとは・・・
「・・・ちなみに、油女シュロにはそういった因縁染みたものはないだろうな?」
問題行動の多い男だが、流石に暁との因縁は無かろう
「ん・・・ペイン情報によれば、うちはイタチと鬼鮫に啖呵切ったそうだ
あと、中忍試験時にサソリに気に入られたみたいですね」
「ちょっとまて六班」
「落ち着けダンゾウ!!」「お養父様おやめになって!」
思わずシナイの首に掴みかかったワシの腰に纏わりつく2人
木の葉崩しから始まって、奔放すぎる人柱力や音の暗部問題で頭を悩ませているというのに・・・!
よりによってうちはイタチにケンカを売っただと!?
確かにアカデミー時代より弟であるうちはサスケと仲が悪かったが、兄とも相性が悪いのかあ奴は!
「もう話が進まないじゃないですかダンゾウ様
それでですね、我々六班は暁と因縁があります
暁と接触した回数は木の葉で随一と言っても良いでしょう」
・・・なにが言いたい
「そんな私には大きな疑問がございます
彼らはなぜ、中忍試験に参加したのでしょうか?
元暁であるペインは、ある目的のためにコンとの接触を図ったと予測しています
だからと言って、中忍試験に参加する必要性があったのでしょうか?
中忍試験、木の葉崩しによって隠されたナニカが、あるのではないのでしょうか
これは暁と直接対峙して感じたことです」
無表情な顔が、淡々と言葉を紡いでいく
「・・・シナイよ、御主は、暁が大蛇丸を隠れ蓑に何かを細工をしていったと言いたいわけか?」
あのような大事件を隠れ蓑に使ってまでしてすることなど、あるのだろうか
「勿論、木の葉崩しのために参加したという可能性もあります
ですが、大蛇丸はすでに暁を抜けた身
組織の裏切り者である大蛇丸に協力する必要があるか?ないと言っても良いでしょう?
我々が見落としている何かがあるのでは?
そう思ってシュロに調べさせました」
油女シュロ
追い忍任務のほかに事務系の任務も多数受け持っている
「あの小僧に・・・?」
性格に多少難はあるが、忍として基本的な作業は出来る
それこそあの年では考えられないほど冷静に、残酷なほど物事を理解している
「シュロは追い忍として各里の抜け忍情報を確認できる立場にあります
そんな奴に、暁に所属している者たちの情報を一から調べさせた結果
———さっぱりでした」
「養父さん落ち着いて、クナイ仕舞ってください」
「何を言う、そういうお前こそ、その刀を仕舞いなさい危ないだろう」
「親子ともに落ち着け
・・・して、シナイよ
抜け忍の情報は、何も見落としていなかった
別のどこかに見落としがあると言いたいのじゃな?」
「流石三代目
その通り、暁の情報・・・いえ、暁自身の情報からはこれと言って何もなかった
問題は暁周辺でした
・・・湯隠れと各地の宗教施設は同時期に、異変が見受けられました
それは、自来也さまが湯隠れにて、ねたみコンを保護した時期と一致しています
湯隠れは現・暁リーダー飛段の故郷
各地の宗教施設から、それまで熱心だった信者が急に宗旨替えするという事態
リーダー飛段はある宗教を信奉しており、信者たちがこぞって改宗したのは偶然にもその宗教
———————ジャシン教だったのです」
ページ上へ戻る