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ソードアート・オンライン 蒼藍の剣閃 The Original Stories

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SAO編 Start my engine in Aincrad
Chapter-2 1層攻略
  Story2-1 シャオン初クエスト

シャオンside


俺は、片手剣の使用者は必須のクエストがある民家へと向かって歩いていた。
しばらくすると、目的の場所へと到着した。
















目的の民家の前に到着すると、扉を開けて部屋の中に入って行った。

台所で鍋をかき回していた、おかみさんらしいNPCが振り向き俺を見て言った。

「こんばんは、旅の剣士さん。お疲れでしょう。
食事を差し上げたいのですけど、今は何もないの。出せるのは、一杯のお水くらいのもので」

「いいですよ、それで」

俺はおかみさんが話を終えたらすかさず返事をした。
本当は「いいよ」などの短い返事でもいいけど、この辺は気分の問題だ。
ただ、礼儀正しく「お構いなく」と言うと本当に出てこない。





おかみさんは古そうなカップに水差しから水をつぐと、俺の前のテーブルにことんと置いた。椅子に座って、俺はそれをゆっくりと飲み干した。


ほんの少し笑い、おかみさんは再び鍋に向き直った。食事が出せないのに鍋の中で何かがことこと煮えている。




この世界ではそれがクエストでのちょっとしたヒントだったりする。


しばらく待つと、隣の部屋に続くドアの向こうから、子供の咳き込む声がした。おかみさんがさらに哀しそうに肩を落とす。

更に少し待ったところで、彼女の頭上に、金色の!が点灯した。これはクエスト発生の証。

俺はすかさずおかみさんに声を掛けた。

「何かお困りですか?」

幾つかある、NPCクエスト受諾フレーズの1つだ。ゆっくり振り向くおかみさんの頭上でクエスチョンマークがぴこぴこ点滅した。

「旅の剣士さん、実は私の娘が重病にかかって………」

話を要約すると、こういうことだ。

『おかみさんの娘が重病にかかってしまい、市販の薬草を煎じて与えてもいっこうに治らず、治療するにはもう西の森に棲息する捕食植物の胚珠から取れる薬を飲ませるしかない。

だがその植物はとても危険なうえに花を咲かせている個体が滅多に見当たらないので自分にはとても手に入れられない。
代わりに剣士さんが取ってきてくれればお礼に先祖伝来の長剣を差し上げましょう』

と言う内容だった。


おかみさんが身振り手振りを交えて話すのをしっかりと聞いた。



全てを話終えたおかみさんが口を閉じ、視界の左端にクエストログのタスクが更新された。

「任せてください」

と立ち上がってから言って――返事は必要ないけどこれも気分の問題だ――俺は家を後にした。




直後、ホルンカの広場中央にある小さな櫓から全ての街共通のメロディが鳴った。
時刻を見ると午後7時だった。



俺は少し足を止め、今頃現実世界はどんな様子だろうかと考えた。きっと、大騒ぎになっているに違いない。自室のベットでナーヴギアをかぶって横たわっている俺の隣には、両親のどちらか、もしくは両方の姿があるはずだ。



と、こんなことを考えながら、門の前に到着したので意識を戦闘モードにして村の門を潜ると、不気味な夜の森へと足を踏み込んだ。

「そういえばもう一つスキルスロットまだ決めてなかったな」

そう言って、メインメニューを開きスキルのページを開いた。レベル1のプレイヤーに与えられているスキルスロットは、わずかに2つ。



その片方を、ゲーム開始直後に『片手剣』で埋め、もう1つの空きスロットに何を入れるかをゆっくり考えるつもりだったが、茅場晶彦の悪夢のチュートリアルのせいで悩む必要はなくなっていた。



ソロプレイヤーには幾つかの必須スキルがあり、それは『索敵』と『隠蔽』の2つが主になっている。
どっちを先に入れようか迷ったあげく、俺はここのモンスターの特性を思い出し『索敵』を残り1つのスロットにいれた。

「これで、もう後戻りはできないな。

ソロプレイ決定」

索敵スキルは、1人の時にモンスターに襲われにくくするためにつかうので、常時パーティを組む人達には必要ない。



で、さっそく熟練度を上げるために索敵スキルを発動した。すると、少しだが視界が広くなり離れていた目的のモンスター、リトルネペントを発見した。

「あれは花付きじゃない………

やっぱいきなり出会えるわけないよな……Bテストの時みたいに乱獲するか」

発見したリトルネペントにゆっくりと接近した。途中でリトルネペントは俺の接近に気付き、咆哮を捕食器の口から漏らし、右のツルを突き込んできた。

「おっと、あぶねっ」

俺はツルの軌道を一瞬で見極め、左に飛んで回避し、そのまま側面に回り込んで、剣を弱点のウツボ部分と太い茎の接合部に叩き込んだ。

手応えは充分で、ネペントのHPバーがガクッと2割以上も減った。


シュウウ!!


再度同じような怒りの声を上げて、ネペントは自分のウツボ部分をぷくっと膨らませた。


これはネペントのもう1つの攻撃で、腐食液発射のプレモーション。
これを浴びるとHPと武器防具の耐久度が多く減るうえに、粘着力によってしばらく動きが阻害される。
射程は5メートルと長いが、効果範囲は30度と狭いため、俺はギリギリのタイミングを見極め、ウツボの膨張が止まった瞬間、今度は右に高速サイドステップ。



薄緑色の液体が飛沫上に発射され、地面に落ちて白い蒸気を上げる。


1滴も浴びずに回避した俺は、剣を振りかぶり、再度同じ弱点を攻撃。
悲鳴とともに仰け反ったネペントの捕食器を黄色いライトエフェクトがくるくると取り巻いた。



気絶状態。この機を逃すわけにはいかない
俺は再び、剣を右に大きく引いて、一瞬のタメ動作によってソードスキルが起動し、刀身を薄水色の光が包んだ。

「隙見せたら………終わりだっ!!」

この世界で初めての気合を迸らせ、勢いよく地面を蹴った。片手剣スキル単発技〔ホリゾンタル〕。片手剣スキル単発技〔スラント〕とは軌道が斜か横かの違いだけだが、こっちの方がリトルネペントの弱点を狙いやすい。


先の2連撃で5割近くを喪失していたネペントはスタンから回復する寸前、剥き出しの茎にソードスキルを直撃された。


俺はBテスト時代に練習した、蹴り足と右腕の動作で威力を最大限までにブーストする技術と持ち前のスピードで刀身を硬い茎に食い込ませ、少しの間手応えを残して、乾いた音を響かせた。


ウツボ部分は茎から切り離され丸ごと宙に飛んだ。
残りゲージが圧倒的な速度で減っていき、0になると同時に、リトルネペントの身体は青く凍りつき、直後に爆散した。

「これならスピードあげられそうだな」

そう言って俺は、周囲を見回して、索敵範囲ギリギリにリトルネペントの反応を複数確認した。











次の獲物を倒すために深い森を再び走り出した。
続く15分くらいで、10匹以上のリトルネペントを倒した。
残念ながらまだ花付きのリトルネペントが出現しない。

「リアルラックに依存しすぎだ………」

俺はそう呟かずにはいられなかった。

リトルネペントの花付きの出現率は本当に低く、
SAOのBテスト当選により運を使い果たした俺は、しばらく出会うことができなかった。















◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
















あれから1時間ずっとリトルネペントを倒していたためファンファーレとともにレベルが上昇した。分け与えられたステータスアップポイントを敏捷力に3振り分けた。

「そろそろ飽きてきたな」

1時間くらい狩ってもなかなか花付きのネペントには会えなかったことに愚痴をもらした直後、乾いた拍手の音が何処からか響いた。


俺は瞬時に剣を構えていつでも倒せるように臨戦態勢を整え、少し思考を走らせた。


すると直後にふっといきなり人影が現れた。

「ごめん、そこまで驚かせることになるとは思わなかったよ。君も森の秘薬のクエスト受けているんだろ?」

「ああ。

速いな、お前。次のプレイヤーがくるのはまだ後だと思ってた」

「それは僕も思ってたよ。僕もしばらく狩ってたけどなかなか手に入らなくてさ。
どうだい?僕と一緒に狩らないか?」

「構わない。でも、最初のやつは俺の、二回目はお前のでいいよな?」

「うん。


あ、名前を言うの忘れてたね。僕はコペル。

しばらくの間よろしくね」

「俺はシャオンだ。よろしくな」

そう言って俺とコペルは暫定的にパーティらしいものを組んで、近くにいたリトルネペント2体にむかって走り出した。















Story2-1 END 
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