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戦国異伝

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第百九十一話 水攻めその五

「その後に東国も平らげてじゃ」
「それからですな」
「間違いなくすぐ戦になる」
 毛利との戦の次に、というのだ。
「東国でな」
「武田、上杉とですな」
「北条ともじゃ」
 あちらともだというのだ。
「そうなるからな」
「だからですな」
「そうじゃ、そうしたことが終わってからじゃ」
「酒を思う存分楽しめと」
「そうせよ、よいな」
「さすれば」
 こう話してだった、彼等は今はだった。
 酒は程々にしてそれぞれの持ち場に戻って守った、元就はその織田軍を見つつ雨の中難しい顔で言うのだった。
「戦を仕掛けたいがのう」
「織田の守りは固いですな」
「思った以上に」
「あそこに下手に攻めてはな」
 そうすればというのだ。
「返り討ちに遭うわ」
「間違いなくですか」
「そうなりますか」
「うむ、なる」
 それ故にというのだ。
「あの布陣ではな」
「ではここは」
「攻められませぬか」
「攻めるべきか」
 元就にしては珍しく迷っていた。
「そして攻めるとすれば」
「一点集中ですな」
 ここでこう言ったのは元春だった。
「織田の布陣の一点を攻め」
「そうして崩してじゃな」
「はい、そしてそのうえで」
「敵はどうやら高松城の周りに堤を築いています」
 隆元が忍の者から聞いた報をここで元就に言った。
「ですから」
「このままではな」
「敵は高松城を水攻めにする様です」
「それでじゃな」
 だからこそ、というのだ。元就はまた。
「ここはな」
「あえて攻めてじゃな」
「はい、堤を壊し」
 そうしてというのだ。
「城攻めを防ぎましょう」
「その城攻めをな」
「ここは」
 これが隆元が言うことだった。
「そうしましょう」
「それではじゃな」
「父上、今こそです」
 隆元は右手を拳にして彼にしては珍しいことに強く言った。
「攻めましょうぞ」
「雨の降る中でじゃな」
「はい、是非」
「それしかないか」
「確かに織田の守りは固いです」
 隆元ものことはわかっていた。
「しかしです」
「堤を築かれてはな」
「高松城が危ういです」
 それ故にというのだ。 
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