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戦国異伝

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第百九十一話 水攻めその四

「来るぞ」
「最後の攻めが」
「それが」
「それは防ぐ」
 必ず、というのだ。
「そうしてじゃ」
「毛利の講和を受けて」
「そのうえで」
「戦を終わらせる」
  こうすると言ってだ、不意にだった。
 信長はここでだ、こうも言った。己の考えを変えて。
「いや、ここはな」
「ここは?」
「ここはといいますと」
「毛利から講和を申し出るよりもな」
 それよりもというのだ。
「こちらからじゃ」
「織田の方から講話を申し出るべきですか」
「我等の方が」
「それがよいかも知れぬな」
 彼等の方がというのだ。
「むしろな」
「左様ですか」
「こちらからですか」
「そう思えて来た、どちらにしてもな」
「はい、高松城を水攻めにし」
「そうしてですな」
「毛利が攻めて来ればじゃ」
 その彼等をというのだ。
「防ぐぞ、よいな」
「畏まりました」
「それでは」
「毛利の軍勢は何処におる」
 信長は滝川に彼等のことを問うた。
「今は」
「はい、あの者達はすぐ南におります」
 彼等から見て、というのだ。
「そうして雨が止めば」
「すぐにじゃな」
「攻め寄せて来るかと」
 滝川はこう信長に答えた。
「そうした布陣です」
「そうか、ではな」
「雨が止めば」
「雨でも気をつけよ」
 降っているこの状況でもというのだ。
「従って今はな」
「はい、酒はですな」
「程々にして、ですな」
「しかと守れ」
 今の織田軍の布陣をというのだ。
「地の利はあちらにある、どう攻めて来るかはわからぬからな」
「じっくりと陣を構え」
「そうしてですか」
「そうじゃ、守れ」
 何としてもというのだ。
「ここはよいな」
「はい、では」
「今は」
「その様にな、わしは酒は飲まぬがな」
 信長は相変わらず酒は身体が受け付けないのだ、それで今もこうしてだ。茶を飲んでいるのである。その茶を飲みつつの言葉だ。
「酒は酔わぬ様にしておけ」
「ううむ、それでは」
 佐々が幾分残念そうに言った、酒好きの彼が。
「今は、ですな」
「うむ、全ての戦に勝ってからじゃ」
 信長はその佐々にも答えた。
「酒は思う存分楽しめ」
「さすれば」
「毛利を降しじゃ」
 そうして、というのだ。 
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