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問題児たちと1人の剣士が来るそうですよ?

作者:疾風怒濤
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フォレス・ガロとノーネーム

俺たち4人と1匹はとあるカフェにいた。

「え〜と、紅茶を二つと緑茶を二つあとは……」

「ニャンニャン」

「はいは〜い。ティーセット3つにネコマンマですね」

「「「え?」」」

全員が首を傾げた。

「三毛猫の言葉わかるの?」

「そりゃ分かりますよー、私は猫族なんですから」

『ねぇちゃん可愛い猫耳に鉤尻尾やなぁ。今度機会があったら甘噛みしに行くわぁ』

「やだもうお客さんったらお上手なんだから♪」

周りから見ると何を話したのかわからなかったが行動的に口説いたなとは思った。

「箱庭ってすごいね。私以外に三毛猫の言葉が分かる人がいたよ」

「ちょ、ちょっと待って!貴方もしかして猫と会話が出来るの!?」

「うん」

春日部はコクリと頷いた。

「他の動物でも出来ますか?」

「うん。生きているなら誰とでも話は出来る。話したことがあるのは雀、ウグイス、ホトトギス。水族館でペンギンとも話したこともある。他にもイルカたちと友達」

「多分、春日部のギフトって動物たちの意思疎通が出来るって感じだろうな」

「しかし、それは心強いギフトですね。この箱庭において幻獣との言語の壁というものはとても大きいですから」

「そうなのか?」

「はい。一部の猫族やウサギのように神仏の眷属として言語中枢を与えられていれば意思疎通は可能ですけど、幻獣達はそれそのものが独立した種のひとつですから。同一種か相応のギフトでもなければ意思疎通が難しいのが一般的です。箱庭の創始者の眷属に当たる黒うさぎでも、全ての種とコミュニケーションを取るのはできないはずですし」

それを聞いて飛鳥は羨ましそうな眼差しを春日部に向けた。

「そう……春日部さんは素敵な力があるのね。羨ましいわ」

その表情はどこか彼女らしくなかった。

「久遠さんは……」

「飛鳥でいいわ。よろしくね、春日部さん」

「さすが女子は友達になるのは早いことだな」

「……うん。じゃあ飛鳥のギフトってどんな力?」

「私?私の力は……」

飛鳥が言いかけた瞬間ドンッ!!と大きな音がした。振り向くと2mほどの巨体な変な男がいた。タキシードがピチピチとして今にも破れてしまいそうだ。

「おやおやぁ?誰かと思えば東区画の最底辺コミュニティ“名無しの権兵衛”のリーダー、ジン君じゃないですか」

「ガルド……」

どうやら知り合いらしいが仲が良いという雰囲気ではなさそうだった。

「それに僕らのコミュニティは“ノーネーム”です」

「黙れ、この名無しめ。聞けば新しい人材を呼び寄せたらしいじゃないか。コミュニティの誇りである名と旗印を奪われてよくも未練がましくコミュニティを存続させるなどできたものだ」

やっぱりなと俺は一つの確信を得た。

「失礼だけど、どなたかしら?」

「初めまして、お嬢様方。私はコミュニティ“フォレス=ガロ”のリーダーガルド=ガスパー以後お見知り置きを」

「あなたの同席を認めた覚えはありませんよ。ガルド=ガスパー…!」

「俺が用があるのはお前じゃねぇ。こちらのお嬢様方二人と紳士一人にだ」

「私達?」

「えぇ、そうです。お嬢様方?よろしければ黒ウサギ共々私のコミュニティに入りませんか?」

「ガルド何を言って!!」

「黙れ、ジン=ラッセル。どうですお嬢様方?」

「その前にいくつか質問があるわ。名と旗印を奪われたってどういうこと?それと私達はジン君のコミュニティの状況を知らない。それはどうなっているの?」

「そ、それは……」

ジンは言葉に詰まった。それを言ってしまったら我々のコミュニティに入ってくれないと思った。だが飛鳥はさらに畳み掛ける。

「貴方は私達のコミュニティのリーダーと名乗ったわ。なら黒うさぎ同様に、新たな同志として呼び出した私達にコミュニティとはどういうものなのかを説明する義務があるはずよ。違うかしら?」

ジンは静かな声で話されているのに威圧がすごくのしかかってきそうだった。

「まぁ待て。えーと…どう呼べばいいか?」

「別に飛鳥でいいわよ。十六夜君みたいにお嬢様でもいいし」

「そうか。じゃあ飛鳥、俺らの状況ってのは多分ひどいもんだぜ?」

「躊躇なく名前で呼ぶわね。で、ひどいって貴方……いや荒谷君はわかってたの?」

「あぁ、大体な。黒ウサギが俺たちを強引にでもコミュニティに入れたがっていたのも、ジンが渋ったのでなんとなく想像がつく」

「予想通りなら俺たち、ノーネームは他のコミュニティと違い全ての財産とかが失ったんじゃねぇ〜のか。ギフトゲームで負けて。そこで俺たちを招待しコミュニティを救ってもらおうとした。そんなところか?」

ジンは黙り続け俯いたままだった。そこでガルドが答えた。

「その通りでございますよ紳士殿。この小僧のコミュニティはたった一夜にして滅ぼされましたから」

「だが、俺もそこまでわかったつもりじゃねぇ〜からな。そこんとこ説明できるか?ガルドさん?」

「えぇ承りました。それとコミュニティの重要性も説明させていただきます」

そう言うとガルドら説明し始めた。

「まずコミュニティとは読んで字のごとく複数名で作られる組織の総称です。コミュニティは活動する上で箱庭に“名”と“旗印”を申告しなければいけません。特に旗印はコミュニティの縄張りを主張する大事な物。この店にも大きな旗が掲げられているでしょう?」

このカフェテラスの旗は“六本傷”が描かれていた。

「ということはこの旗印はこの店を経営するコミュニティの縄張りを示していて、コミュニティを大きくするにはギフトゲームをするというわけか」

「えぇそうです。私のコミュニティも実際そうやって大きくし、この地域を収めるようになりましたから。残すはこの地域でいうなら奪うに値しない名も無きコミュニティぐらいです」

「さて、ここからが貴方達のコミュニティの問題。実は貴方達の所属するコミュニティは数年前まで、この東区画最大手のコミュニティでした」

「そんなに強かったのか?」

「ギフトゲームにおける戦績で人類最高の記録を持っていた、東区画最強のコミュニティだったそうですから。とはいえリーダーは別人ですが」

ガルドは嫌味を込め言ってるかのように聞こえた。よほどノーネームの存在が気に食わないのだろう。

「人間の立ち上げたコミュニティではまさに快挙ともいえる数々の栄華を築いてきましたよ。しかし!……彼らは敵に回してはいけないモノに目をつけられた。そして彼らはギフトゲームに参加させられ、たった一夜で滅ぼされた。
“ギフトゲーム”が支配するこの箱庭の世界、最悪の天災によって」

「天災?」

「此れは比喩にあらず、ですよレディ達。彼らは箱庭で唯一最大にして最悪の天災………俗に“魔王”と呼ばれる者達です」

「「「魔王?」」」

「えぇ。魔王は“主催者権限(ホストマスター)”という箱庭における特権階級を持つ修羅神仏で、魔王にギフトゲームを挑まれたら最後。誰も断ることは出来ません」

「なるほどね。大体理解したわ。つまり“魔王”というのはこの世界で特権階級を振り回す神様etc.を指し、ジン君のコミュニティは彼らの玩具として潰された。そういうこと?」

「そうですレディ。神仏というのは古来、生意気な人間が大好きですから。愛しすぎた挙句に使い物にならなくなることはよくあることなんですよ」

「そもそも考えてみてくださいよ。名乗ることを禁じられたコミュニティに、一体どんな活動ができますか?」

「確かにそんなコミュニティにいい人材がいるはずもないからな。何もできないな」

「そうね……誰も加入したいとは思わないでしょう」

「……………」

ジンは何も言えなかった。ただ、ただ両手を膝の上で握りしめてることしかできなかった。

「そう。彼は出来もしない夢を掲げて過去の栄華に縋る恥知らずな亡霊でしかないのですよ」

「だからあんたは俺たちを勧誘しているのか」

「えぇ、そうです。もう一度言います。黒ウサギ共々、私のコミュニティに来ませんか。ただし今すぐにとは言いません。十分に検討してから……」

「「結構よ(だ)。だってジン君(ジン)のコミュニティで間に合ってるもの(から)」

俺と飛鳥は同じことをガルドに言った。

は?とガルドは飛鳥と俺の顔を窺うが飛鳥は無視し、

「春日部さんは今の話どう思う?」

「別にどっちでも。私はこの世界に友達を作りに来ただけだもの」

「あら意外。じゃあ私が友達一号に立候補していいかしら?」

「俺もいいぜ。友達なんて多いことに越したことはないからな」

春日部は無言でしばし考えた後、少し頬を赤くして頷いた。

「……うん。飛鳥と荒谷は私の知る子とちょっと違うから大丈夫かも」

『よかったなお嬢。お嬢に人間の友達が出来るなんて』

ホロリと泣く三毛猫。リーダー達をそっちのけで盛り上がっていて、ガルドは顔を引きつらせ怒りをこらえながら二人に問う。

「し、失礼ですが、理由を教えってもらっても?」

「確かにな、こんな状況のコミュニティに入るやつなんかそうそういないだろうな。他のコミュニティやあんたのコミュニティに入った方が生活するに当たっても便利だろう」

「なら、なぜ!!」

「そんなの決まってるだろ?俺がお人好したがらだ。それと俺はお前が気に食わない」

「なっ!!」

「それにそっちのコミュニティに入るより、ジンの方が楽しくなりそうだしな。十六夜もそう答えるだろ」

「ぐっ!………な、ならレディはどうして?」

「私久遠飛鳥は裕福だった家も、約束された将来も、全てを捨てて、この箱庭に来たのよ。今さら恵まれた環境で嬉しくなると思わないわ」

「お、お言葉ですがレデ……」

黙りなさい(・・・・・)

ガチン!とガルドは何が起こったのかわからず勢いよく口を閉じて黙り込んだ。飛鳥に聞こうにも全く声が出ない。

「!??」

「私の話はまだ終わってないわ。貴方はそこに座って、私の質問に答え続けなさい(・・・・・・・・・・・・)

飛鳥はさらにガルドに命令をするかのように言った。まるで飛鳥の言葉に逆らえないような感じだった。当のガルドも完全にパニック状態になっていた。

「確かギフトゲームって主催者とそれに挑戦するものが様々なチップをかけて行う物のはず。……ねぇジン君。コミュニティそのものをチップにゲームすることは、そうそうあることなの?」

「や、やむを得ない状況なら稀に。しかし、これはコミュニティの存続をかけるのと同じことですから、かなりレアケースです」

「そうよね。来たばかりの私たちでさえそれぐらい分かるもの。だからこそ主催者権限を持つ者は魔王として恐れられているはず。なのにどうして貴方が強制的にコミュニティをかけあうような大勝負を続けることが出来たのかしら」

教えてくださる?(・・・・・・・・)

ガルドはさも言いたくなさそうな顔をするが口はそれを反する。

「一番簡単なのは相手のコミュニティの女子供を攫って脅迫し、ゲームに乗らざるおえない状況に追い込み……」

「あら、野蛮ね」

「各コミュニティから数人ずつ子供を人質にとってある」

「それで、その子供達は?」

「もう、殺した」

その場の空気が瞬時に凍りついた。ジンも、春日部も飛鳥でさえも耳を疑い思考を停止させた。その中で荒谷は頭を抱え、ある言葉を思い出した。

『もう殺したよ』

俺は思い出しくない事を思い出してしまい、怒りがこみ上げて来た。

「テメェ……もういっぺん言ってみろ!!!」

俺はガルドの胸ぐらを掴み怒りをぶつけた。

「ちょ、荒谷君!落ち着いて!!とりあえず()()()()()!!」

飛鳥の力が働き俺はその場に座り身動きが出来なくなった。


「怒る気持ちはわかるわ。でも、とりあえず私の質問が終わるまで座っておいて」

「あ、あぁ……すまない……」

そんな中、ガルドは話すのをやめることなく、

「初めてガキどもを連れて来た日、泣き声が頭にきて思わず殺した。それ以降は自重しようと思ったが父が恋しい母が愛しいと泣くのでやっぱりイライラして殺した。それ以降、連れて来たガキは全部まとめてその日のうちにしまうすることにした。けど、身内のコミュニティの人間を殺せば組織に亀裂が入る。だから始末したガキの遺体は証拠が残らないよう……」

黙れ!(・・・)

ガチン、とさっきより力強い感じだった。

「素晴らしいわ。ここまで絵に描いたような外道とはそうそう出会えなくてよエセ紳士さん」

飛鳥は指をパチンと鳴らす。それが合図だったのだろう。ガルドを縛り付けていた力が消え同時に俺も自由が戻る。

「こ、この小娘がァァァ!!」

ガルドは怒り狂い雄叫びとともに虎に変わった。どうやら彼のギフトは人狼などに近いものなのだろう。

俺は体が自由になったのを感じ、ガルドが飛鳥に飛びかかってきたのをガルドの腹に一発、渾身の拳をお見舞いした。

「……ガハッ!!こ、この……」

「へぇー?この攻撃を耐えれるなんてすごいなあんた。普通は気絶するもんだけどな」

「喧嘩はダメ」

その後、春日部がガルドを抑え込み身動きが取れないようにした。

「なぁジン。こいつを裁くことはできるか?」

「厳しいです。今の証言では証拠というのも難しいですし。裁かれるまでに彼が箱庭の外に逃げ出してしまえば、それまでです」

「チッ!」

「荒谷君、一つ方法はあるわよ」

え?と首をかしげた。

「さて、ガルドさん。ここで貴方には二つの選択肢があるわ。一つはここにいる全員を殺して口封じを図るか。もうひとつは法の手が届かないとこまで逃げ延びるか。どちらにしても貴方のような外道はズタボロになって己の罪を後悔しながら罰せられるべきよ!」

「そこで提案よ。私達とギフトゲームをしましょう。貴方のフォレス・ガロ存続と私達ノーネームの誇りと魂をかけて」


こうして俺達“ノーネーム”の最初の戦いが始まるのであった。 
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