ソードアート・オンライン~狩人と黒の剣士~
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ターニング:ライト、怒る。
明くる日の五の月二十二日は、その春初めて荒れた空を見せた。
「……ふぅ」
剣を手入れしていた俺は、その手を止めて窓の外を見た。
「荒れてるわね……」
「ユイリ」
ユイリが俺に声をかけてくる。
「そうだな……嫌な空だ」
俺が言うと、鐘の音がなった。
「……四時半の鐘。四時を聞き逃してたな」
「そう言えば、リィン達遅いわね」
ユイリが言った事で、俺は初めて気がつく。
「そうだな……ちっ、しゃーねぇ」
俺は立ち上がる。
「ユイリ、ユリア叩き起こせ。俺は初等練士寮に行ってくる」
年のため、醒剣ブレイラウザーと共に二本の愛剣を鞘に入れて腰に着けると、外套を羽織る。
窓を開けて外に飛び出すと、カードを覚醒する。
『MACH』
高速移動を可能とするマッハジャガーを使い、初等練士寮に向かう。
「確か……リィン達の部屋は……!」
『GEMINI』
ゼブラジェミニを発動して、俺をもう一人生成。捜索に投入する。
「俺はっと」
ドラゴンフライフロートを発動させようとすると、一人、部屋から出てきた。
「あの、ライト上級修剣士殿ですか?」
「ああ、君は?」
俺は剣を鞘に入れると、目の前の子は言う。
「私はレイツ、リィンと同じ部屋です」
「リィン達は何処に言ったか知らないか?」
「リィン達ですか?確か、ナターシャの事を抗議しにいくって、ナターシャの上級修剣士殿の方へ……」
『MACH』
それを聞いた途端、俺は窓から飛び出した。
「あのやろう……!」
恐らく、彼女の言葉が偽りなき言葉なら、既に一時間は経過している。となれば……!
「彼処か!!」
ブレイラウザーを横に、カードを覚醒させる。
『KICK THUNDER RIETNIGBURSUT』
雷を足に纏い、目的の部屋目掛けライトニングブラストを発動。
窓は割れ、中には悪人と、リィン達、ユイリとユリアがベッドに転がされていた。
「おや、ライト上級修剣士。どうしたのかね?」
当の本人は、腕と胸に傷を負っていながらも、優雅にワインを開けて飲んでいた。ユイリとユリアがやって失敗した傷だろう。
「ふふっ、そこの彼女らはね、僕に非礼を働いたのでね、貴族裁決権を行使しようとしていたところなんだよ。いやぁ、実に楽しみでねぇ……」
舌を唇に這わせて言う。
「……何処まで腐った下郎だ貴様は!!」
ブレイラウザーを構え、俺は目の前の敵に言う。
「……僕に剣を向けるかい?天命を減らしたら、それこそ君はそこの姉妹と同じ賊だよ?」
「構わねぇさ。テメェが殺せんならな!」
『EVOLUTION』
コーカサスエボリューションを発動させて、EPを4600回復させる。
「セアッ!!」
ブレイラウザーを逆手に持ち、奴を攻撃する。
しかし、奴の持つ剣によって防がれる。
「仲間を守れないで、何が人だ!俺は……全てを敵に回しても仲間を守る!」
ギィン!と金属音が鳴り、剣と剣が弾かれ、お互いが離れる。
「腐った貴族が貴族なら、この子も子だな!!」
「黙れ!!上級貴族に逆らうか!!」
剣を持って突撃してくる。
片手剣剣技<ホリゾンタル>。
型こそ同じ、しかし……
「剣筋があめぇんだよ!!」
『SLASH THUNDER RIETNIGSLASH』
「ハァアアアアアッ!!」
コンボ<ライトニングスラッシュ>。
斜め下、奴の視界外から放たれた雷の剣は、奴の持つ剣と、胸を、斬った。
「グオッ……!?」
奴は剣を落とし、後ろに二、三歩下がる。
「ククッ……仲良く大罪犯しか……。まぁ、これで容赦なく斬れると言うものだ!!」
剣を取り、俺と共に外へと飛び出す。
「チイッ!」
雨に濡れた地面を転がり、手を地面に付いて立ち上がると、奴は既に接近していた。
「貴族裁決権を行使する!死ねぇええええっ!!」
「禁忌とか、貴族とか……」
『CHANGE SLASH BEAT TACKLE KICK』
「権利とか……んなもん、知ったことか」
『THUNDER METAL MAGNET MACH TIME』
「俺は……俺の道を行く!剣で……仲間を守り、剣でこの世界の全てを砕く!!」
『FUSION ABSORB EVOLUTION SUPEEDSUTBUREK』
全てのスペードスートを覚醒させた必殺技、スペードスートブレイク。
全てのスペードスートの眼前に現れ、剣を奴に向ける。
「感謝しろ、まずはテメェからだ腐った屑が!!」
ヴォーパル・ストライクのモーションを取り、それに合わせて眼前にあったカードが一つとなって剣に纏わる。
「破ァッ!!」
そして、奴が振り下ろした剣ごと貫き、奴の身体を消し飛ばした。
「残念ですよ、三人とも」
静かな声で、寮監は言った。
「俺は、俺の道を行った迄です」
「私達もです。あんなことは、許されざる行為です!!」
ユイリが俺に続けて言う。
「……ライト、貴方はこの世界がなんたるものか、お分かりなのですね」
俺は無言のまま頷く。
「……そう。なら、言うまでも在りません。ユイリ、ユリア」
そっとユイリとユリアの眼に手をかざして言う。
「あなた達は誰も破れなかった封印を破った。ならば、行けるはずです。ライト、戦友をどうか、信じ続けなさい」
そう言うと、一歩下がり、俺達は迎えの方へと歩いた。
「別れの挨拶はもういいかね?」
整合騎士。俺達の迎えは確かに整合騎士でなければ成り立たない。
「……ライトだ。此方はユイリとユリア」
「私はエルドリエ・シンセシス・サーティワン。まぁ、すぐに殺される君らには覚えてもらう必要はない、か」
エルドリエ……確か、去年の大会の優勝者。既に整合騎士に任命されていたのか。
「先程も言ったが、別れ話はいいのかい?」
「……ああ。前日に、付き人には言ったさ」
「宜しい。では、行こうか」
エルドリエ・シンセシス・サーティワンは竜に乗ると、竜は俺達を掴み、セントラル・カセドラルに向かって飛翔した。
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