普通だった少年の憑依&転移転生物語
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ゼロ魔編
055 戦後会談 ※但しロマリアは除く
SIDE 平賀 才人
色々と面倒だったので地の文に干渉するスキル…“神の視点”で割と簡単に省略したが、現在はジャンプコミック(週刊)の単行本にして3冊分に値する〝ロマリア戦役(仮)〟──〝ロマリア〟と云う国名自体がハルケギニアに現住しているほとんどから忘れられているので〝(仮)〟。……〝ロマリア戦役(仮)〟の4国家合同の戦後会談。
4国家は云うまでもなくロマリアを除くトリステイン、アルビオン、ガリア、ゲルマニアである。
……当たり前だが、トリステインはアンリエッタ姫が出席していてその傍らには以前見た時よりも幾分か生来持っていたであろう、潤いを取り戻したマザリーニ枢機卿。
アルビオンからは王位を継いで間もないが、アルビオンを盛り上げようとしているウェールズ・テューダー。そのウェールズの傍らに控えるのは俺こと、サイト・シュヴァリエ・ド・ヒラガ。
ガリアからすっかりと〝狂気〟の抜け落ちたジョゼフ・ド・ガリア。そんなジョゼフの傍らには今にも俺に襲い掛かって来そうな雰囲気を醸し出している〝ミョズニトニルン(シェフィールド)〟。
そして、ゲルマニアからはアルブレヒト3世かと思われる40~50代の男性。アルブレヒト3世が連れているのはよく知らない、それなりの格好をした、恰幅の良い初老の男性(後に知ったがキュルケの父親)。
……実はさらに、この場にはもう1人居た。それは──
「……貴方達の愚かな行いの所為で、このハルケギニアの未来は途絶えました」
信じられない程の美貌を持つ人物──ヴィットーリオ・セレヴァレが、人類の敵が如く俺を──会談の出席者達を睨み付けている。
「……ジョゼフ陛下、会談の開始の前に発言の許可を」
「良いだろう」
現会談は年功序列の1位であり、今戦争の〝表向き〟の提案書であるジョゼフが仕切っていている。……俺は恨みがましい視線を飛ばしてくるヴィットーリオに幾つか訊きたい事が有ったので、現会談の取締役、兼司会であるジョゼフに発言の許可を取る。
「ヴィットーリオ卿、卿は今〝ハルケギニアの未来が途絶える〟と仰いましたがその真意を問いたい」
「……その言葉の通りです。ハルケギニアの地下には大量の──」
「大量の風石が眠っていると?」
「「「「「!!?」」」」」
俺のヴィットーリオの言葉尻を捉えての科白にヴィットーリオ卿を含めた5人が息を揃えて息を呑むのが判る。……ヴィットーリオが息を飲んだのは、他の4人とはまた違った理由だろうが…。
「っ!? それを知っていながら、なぜこの様な愚行をっ!」
今回の戦争で数多もの神官──ヴィットーリオの手駒が死んだ。それに、ハルケギニアに存在するほとんどの人々はブリミル教の来歴を忘れて──ついでにロマリアの存在も忘れてしまっている。ヴィットーリオはその原因について糾弾しているのだろう。
……がしかし──
「そのような些事、とうの昔に〝対処〟してありますよ」
ハルケギニアに来て、〝ハルケギニア漂流ツアー〟にてアルビオンをに行った時。アルビオンがハルケギニアの空中を漂っている理由を──アルビオンに〝土〟が有る理由を考えて、少しずつ仮説を立てていき、その仮説を“答えを出す者”で答え合わせをしていけば自ずと判る事だった。……方法は、今回の〝ロマリア忘却事件(仮)〟と同じで〝精神力(MP)〟を倍加させ、その精神力(MP)を“エクスプロージョン”に注ぎ込んだだけの簡単な作業だった。
「……どうやってっ!?」
「そんなに難しい事はしていません。……ハルケギニアの地下に眠っている、風石が内包している風石の魔力〝だけ〟を指定して、虚無魔法の“エクスプロージョン”で爆発させただけです」
「……ありえない…」
「なんとでも」
ヴィットーリオは謐々と語る俺を、まるで化け物を見るかの様な視線で睨む。……然もありなん。ハルケギニアの──と云うよりは、俺の知っているどんな魔法にしろ魔術にしろ呪文にしろ魔法力(MP)/精神力(MP)を消費する。虚無魔法は殊更にその傾向が顕著だろう。
……ちなみに他のとウェールズとジョゼフを除く2人──アルブレヒト3世とアンリエッタ姫からの、俺が騙っている〝虚無〟について突っ込みが無いのは前以て周知してあるからである。
閑話休題。
「……そんな事、信じられません…」
「別に立場の悉くを喪ってしまったヴィットーリオ卿に信じて貰わなくても、こちらとしては困りません」
「……発言良いだろうか、ジョゼフ陛下」
「許可しよう」
ヴィットーリオと不毛な睨み合いをしていると、マザリーニ枢機卿がおずおずと手を挙げ、発言の許可を得る。
「ヒラガ殿にヴィットーリオ卿はハルケギニアの地底深くに風石が埋まっていると言ったがそれは誠の情報ですか? もしそれが誠の情報だとして、証明する方法は有りますか?」
「マザリーニ枢機卿の疑問も、尤もでしょう。……ええ。少なくとも〝多大な〟と云う言葉では言い表せれないほどの風石がハルケギニアの全土に埋まっていました。……証明する方法は〝対処〟してしまった今となっては証明する方法はありません。……ですが、アルビオンに〝地面〟が有る理由をよくよく考えてみれば、ハルケギニアの地下に風石が埋まっている可能性は否めません。……よって、前以て──今から1年ほど前に先にも申した方法にて〝対処〟させて頂きました」
「……それを行う前に、他の国家へと周知しても良かったのではないですか?」
(……これまた痛い質問が来たな)
マザリーニ枢機卿の言いたい事は判る。〝ホウ(報告)・レン(連絡)・ソウ(相談)〟くらいはして欲しかったのだろう。しかし、さっきヴィットーリオにも言った通りぶっちゃけると、周りが信じて居ようが居まいが俺の作業は、あまり変わりが無かった。
「マナー違反ですが、それについては逆に聞きましょう。〝虚無〟を持っているとは云え、何の立場の無い一メイジが声高々に〝ハルケギニアには莫大な量の風石が眠っている!〟、〝このままではハルケギニアはアルビオンの様に空中に浮いてしまう!〟……などと嘯いていたら信じていたでしょうか?」
「……まず信じて無いでしょうね。……良いでしょう。訊きたい事は終わりました」
マザリーニ枢機卿は瞑目し〝その場合〟をシミュレーションして、その結果を悟ったのか、浅く一息吐くと、挙げていた手を下げ半歩だけ後退する。……それはマザリーニ枢機卿のターンの終了を著していたと云える。
「今度は俺からの質問良いだろうか、ヒラガ殿」
「構いませんよ。ジョゼフ陛下」
ジョゼフはマザリーニ枢機卿のターンが終わったの確認したのだろう、〝次は俺は〟と云わんばかりに矢継ぎ早に問い質そうしてくる。
「さてさて、ヒラガ殿の言葉の真偽は後々審議するとして、俺はヒラガ殿が…その世界をひっくり返してしまえる様な〝虚無〟で、何を成すか──何をしたいのか気になるな。……もはや、どこからどう見積もっても一国の一公爵として抑えたままでいるといのは、些か肩身が狭かろう」
「私は別にウェールズ陛下の下に就く事に異存はありませんし、〝公爵〟と云う立場にもこれといった異存はありません。それに〝公爵〟以上の爵位など身に余るものは望んでいません」
「……これは密偵からの情報だが、ヒラガ殿はアルビオンがサウスゴータの太守としてあちらへこちらへと、顔を広めているらしいが…。ククッ、どうにもヒラガ殿は統治欲やらが少ないらしいな」
……ジョゼフがそこまで言って、なにやら不穏な気を醸し出し始めたウェールズの顔を見遣れば、ウェールズの表情が少し〝変〟になっている事に、漸く気付く。……ウェールズの憔悴した様な、所在無さげにも見える顔を見たら、今会談の、〝真の〟内容が判ってしまった。
(……やられた。……立案は恐らくジョゼフか)
心無しか憔悴している様相のウェールズから、両肘をテーブルに付きながら両手を手の甲を上にして組むスタイル──俗に云うゲンドウ・スタイルを採って、口許を隠しているジョゼフに目線を向ければ、その隠している口端が密かに吊り上がっている様な気がした。
「ウェールズ陛下…?」
「すまないヒラガ殿──いや、公式な場ではあるが、あえてサイトと呼ばせてもらおう。……親友として誠に申し訳無く思っている。……が、さっきの風石の件再認識したが、僕の手腕ではどうしても多方向から飛んできている──君に関する〝声〟を抑えられない。……あえて言うなれば…君と云う〝力〟は一国家が保有するには強すぎるんだ。……だからすまないっ!」
ウェールズは頭を下げ、数秒間してか頭を上げる。ウェールズの目を見れば、俺に対するであろう〝申し訳無さ〟が100パーセントの割合を占めていた。
「ウェールズ…」
「サイト、すまないっ!」
(嗚呼、親友からの友情が重い)
ウェールズを見るかぎり、ウェールズは〝何をしてでも〟俺から赦しを得ようとするほどの気概をひしひしと感じた。……〝それ〟を感じとってしまった俺は、この場で〝ウェールズを赦さない〟と云う選択肢を採る事が出来なくなった。
「ウェールズ陛下、詳しい話は後々伺いますので、どうか今は御着席下さい」
「……判ったよ、サイト」
……こんな公な塲でウェールズを赦すのは下策──〝コイツ、めちゃくちゃチョロいんじゃね?〟とか思われそうなので、ウェールズとは後でプライベートな塲でもう一度話を詰める事にするしか無かった。
SIDE END
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