戦国異伝
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第百九十話 龍王山の戦いその八
「どうにも」
「兵は弱いな」
「はい、強いのは武田に上杉です」
「それに島津じゃ」
「そして織田の兵は」
その彼等はというと。
「その中でもです」
「とりわけ弱いのう」
「その弱さは知れ渡っております」
尾張兵だけではない、織田家の兵は上方の者も多いのだ。その彼等の兵はどうしてもというのだ。
「そしてその弱い兵で戦い勝つには」
「斬り合わぬことじゃな」
「そういうことになるのですな」
「だから鉄砲を揃えじゃ」
まずはこれだった。
「そして弓矢に長槍にな」
「具足もよいものにし」
「飯もある」
これも、と言う元就だった。
「織田家は兵の弱さをそうしたことで補っておるのじゃ」
「そして間合いを取り」
「そうして戦っておるのじゃ」
「左様でしたか」
「しかも数も多い」
今もだ、備前や美作の兵も入れた織田軍は二十万である。その彼等を見ての言葉だ。
「この数ではな」
「やはり我等は」
「勝てぬ、勝てぬ様にすることもじゃ」
それも、というのだ。
「まず出来ぬ」
「左様ですか、それでは」
「我等は」
「戦えるだけ戦う」
それも全力でだ。
「そしてその後でじゃ」
「降りますか」
「どうされますか」
「見ておれ」
それからのことは、というのだ。息子達に。
「わしの。毛利元就の一世一代の賭けを見せてやる」
「父上の」
「それを」
「そしてじゃ」
そのうえでだというのだ。
「家をじゃ」
「お守り頂けますか」
「何としても」
「わしは何としても家を守る」
この毛利の家を、というのだ。
「そしてその為にな」
「戦いそして」
「その後も」
「織田信長、見ておるのじゃ」
目の前の青い大軍を見ての言葉だ。
「必ずや生き残ってみせるわ」
「では我等は」
「これより」
「攻めよ」
果敢に、というのだ。
「そして我等の姿を見せてやるのじゃ」
「わかりました、我等の戦ぶり」
「織田家に見せてやりましょうぞ」
「その全てを」
息子達も応えだ、そのうえでだった。
毛利の軍勢は織田の軍勢に決死に斬り込みながら戦った、緑が青を攻めていた。
しかし信長は疲れた軍勢をだ、その都度だった。
下がらせ新手を繰り出す、そうしながら言うのだった。
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