ソードアート・オンライン~狩人と黒の剣士~
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ランニング:剣術大会
明くる日の八月最後の日は、朝から良く晴れた。
「zzz……」
「起きろ」
俺は寝ているユリアを起こして立ち上がる。
「痛いです……」
「何時までも寝てるからでしょ?」
ユイリは言うと、布団からユリアが出てくる。
「さっさと着替えろ。俺達は外に行ってるからな」
俺は窓からヒョイと降りると、着地、隣にユイリが着地する。
「随分と芸が上達していくな」
「それほどでも」
『ライトー、いい加減僕を出してよー』
頭でロードが言うと、上からユリアが落ちてくるので、お姫様抱っこする。
「ふえっ!?」
「おいおい、しっかりしろよ」
俺は立たせると、ユリアはユイリの後ろに隠れた。……なんかしたか?
「さってと、型の練習は良いか?」
「ええ。全く問題在りませんわ」
「私は大有りですけど……」
ユリアが不安そうに言う。
「まぁ、このヤグルシの街の剣術大会じゃ、三人の優勝者が出るんだろ?だったら、本気で掛からねぇと!!」
「ライト、貴方は呑気ねぇ……」
ユイリに言われる。呑気と言われたら、多分ロードが関係してる。
「さて、飯食いに行くか!ユリア、型なんてぶっつけ本番で行け」
「ふぇえええええ!?そんなぁ!!」
「ユリア、これも剣士としての道よ」
「お姉さままでぇ……って待ってよぅ!!」
半泣きになりながら付いてくるユリアに俺とユイリは笑った。
既に五ヶ月が経過するこのアンダーワールド。俺達があの村から出て、このヤグルシの街に付いたのが先々月。
本来なら仮面ライダーで飛行していく案もあった物の、俺が却下した。目立つとアレだし。
てなことで、どうにかヤグルシの街に到着し、そこの剣術大会に出場をすることに決めた。紹介状?カバン漁ったらアリシアさんのが有ったよ。
「くあー、食った食った」
「本当に美味ね、この街の名物料理」
「クドルウエア……でしたっけ。材料と調味料さえ在れば私でも再現可能ですよ?」
「お、そりゃ凄い」
「ユリアは料理が上手いのですよ。それも、アリシアお母様と同等の。本来なら、治癒の神聖術に秀でてる筈なのだけれど……」
「……ああ、攻撃系統の神聖術しか使えないもんな」
二人して、ユリアに同情の目を向ける。
「これからです!!これから上手くなります!!」
ユリアは頬を膨らませると、俺は笑う。
「焦らずに行こうや。ほら、見えてきたぞ」
ヤグルシの集会所に来ると、人がかなり集まっていた。
「こ、こんな所で剣術大会するんですかぁ……」
既に涙目のユリアに俺は溜め息を付くしかない。
俺達はそんなユリアを引きずって、仮設の長机の衛兵に歩み寄った。
「三人分、登録頼む」
すると、若い衛兵は俺達を見る。
「大会に出るには……」
「おおっと、皆まで言うな。ホイコレ」
白いコートの内ポケットから紹介状を出して渡した。
「……確かに受け取った。アリシア様には随分と贔屓にさせて貰っている。あの村長に変わってからご苦労されていると思うと……」
随分とアリシアさんにお世話になっているらしい。どういう人脈を持つのか本人に聞きたいくらいだ。
「まぁ、そういうわけだ。頑張れよ、三人共。俺は個人的に応援するぜ!」
「有難うございます!!」
ガッシと手を掴んで、名前と出身、剣技流派を書いた。アインクラッド流とは面白い、と衛兵は言ってくれたから嬉しいものだ。
「十一時三十分までに会場の控え室に入りな。クジによって東、西、北組に分けられる。試合用の剣もそこで貸し出されっから、お前さんらの剣は使うなよ。十二時の鐘で予選、型の演武で一組が八人に絞られる。一番から十番までの型は事前に配布ーーーって言わなくても解るか?」
「ああ、皆まで言うな」
手を出して言う。一度やりたかった。某マヨラーの名言。
「ま、本選に行ったら後は本気の試合だ。そこから一人ずつ勝者が決まり、晴れてヤグルシ衛兵の天職が与えられる。頑張れよ、未来の後輩!」
若い衛兵は激をくれると、俺達はここから離れた。
「んじゃ、頑張れよお前ら」
「同じ組になったら?」
「ならねぇよ。神さんにお願いしたからな!」
「自信タップリな発言ですね……ハァ……」
その言葉を最後に、俺達は別れた。
予選を終えて、俺は溜め息を付いた。
……何故ここでも剣の型をせにゃならんのか……と。
「つっかれたぁ……」
『演武ではかなりの好印象だと僕は思うけどね』
ロードが言う。事実、何とか俺達は東西北と残った。後は試合のみである。
『ねぇー、そろそろ交代』
「しねぇよ馬鹿」
こけに顔があったら左フックからの右ストレートをロードに浴びさせてやりたいが、これは次の機会に取っておく。今は大事な大会中だ。
「さて、とっとと勝って、寝るか」
『寝るしか能がなイタッ!!』
前言撤回。今殺る。
俺は精神体になってロードを殴った。
試合はほぼ一撃で終わらせ、決勝戦。
相手はゲンみたいな脳筋。楽勝。
「行けー!ライトー!!」
「ガンバレー!!」
観客席では、既に優勝が決定したユイリとユリアが居た。これは是が是非でも勝たねば。
「ーーーー始め!」
途端、脳筋が動き始めた。
「イャアアアアアッ!!」
甲高い声と共に左上から斬り込まれる剣を、俺は剣を斜めに構えて剃らす。
ギャリンッ!!と盛大な音がし、火花が散った。
「……今までの奴等とは桁違いだな」
「ガーハッハ!!オレを嘗めるなよ!!」
そして、そこから剣の連撃が始まる。
「……」
「どうしたどうした!!防戦一方だぞ!?」
ガーハッハ、と笑い声と共に剣が振られ、俺は無言で剣を防御に回す。
観客席からは二人の叱咤まで届く。
そして、とうとう奥まで追い込まれた。
「コレで、終わりだぁああああっ!!」
上段から一気に振り下ろされる剣を、「ハアッ!!」
中段から放った剣で弾いた。
「ナァッ!?」
渾身の一撃を弾かれたバカは下がる。
「これだから脳筋は!!」
そこから押し返す様に剣を煌めかせ、馬鹿を押し返す。
「ウォオオオッ!?」
「馬鹿か、俺はテメェにワザと攻撃させて、後から圧倒的力を見せ付ける為だけにワザと苦戦してやったんだ。有り難く思え!!」
剣を下段に構え、飛び出す。
アインクラッド流片手剣剣技<チャージング・セイバー>。
天城流秘奥義<天空翔牙>。
どちらも、この剣技の名前だ。
これは唯一、俺がソードスキル内に組み込んだ天城流の秘奥義。ーーー忘れずにいる約束の一つ。それを忘れないために。
下段から放たれた剣は馬鹿の剣を折り、喉元につきつけた。
「勝負あり、だな」
「もう、負けたかと思いました!!」
「ワリィって」
二人に謝らねばならないのは完全に決まっていたため、俺は全力土下座を敢行。それで許されたから良いものの、これ以降、博打するなと博打禁止令が出された。……まぁ、当然だわな。
『……流石の僕も出ようかと思ったんだけど?』
ロードにも睨まれ、俺は下がるところまで下がった。
これこそ、狩人の名がガタガタに墜ちた。墜ちるところまで墜ちた。
「さて、これから祝杯を上げに行きましょう!」
「賛成です!!」
「……だな」
ヤグルシ剣術大会
東ブロック優勝者 ユリア・エルステール
西ブロック優勝者 ユイリ・エルステール
北ブロック優勝者 ライト
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