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ソードアート・オンライン 〜槍剣使いの能力共有〜

作者:カエサル
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マザーズロザリオ編
  73.絶剣

 

「──シュウくんって《ゼッケン》って知ってる?」

 リーファの声が聞こえたのは、ちょうど俺がモンスターのHPゲージを全て削り取った時だった。

「ゼッケンってあのマラソンとか体育祭で使うアレのことか?」

 モンスターを倒し終わり、片手剣を背中の鞘へと収めた。

「ちがうちがう」

 リーファも笑いながら首を振り、長剣を腰の鞘へと戻した。

「絶対のゼツに剣って書いて、《絶剣》だよ」

「なんかすげぇ強そうな剣だな。レアドロップアイテムかなんかか?」

「ちがうの。人の名前なんだけどね。まあ、通り名みたいなものかな」

 通り名が《絶剣》とは、センスのあるプレイヤーがいたものだな。俺の通り名というか二つ名ななんて《槍剣使い》だぜ。
 初めて聞いた人なんて《双剣使い》と絶対に間違えるだろ。それで俺の戦い方の槍と剣を使っているのを見て、双剣じゃねぇじゃんか、と何回初心者プレイヤー言われたことか。
 まぁ、アスナに比べたらマシではあるけどな。水妖精族(ウンディーネ)は種族的には、回復役などに回ることが多い。回復役に回らずとも魔法などの支援に努め、前線に飛び出ることは少ない。しかしアスナは血盟騎士団の時の血が騒ぐのか、突然前線でレイピアを振り回し出すせいで、《バーサクヒーラー》などという、二つ名をつけられたのだ。

「それでその《絶剣》さんがどうしたんだよ?」

 さほど興味が無さげに俺は訊く。

「すっごく強いプレイヤーで誰も相手にできないくらいに強いんだ」

 リーファがそれほど絶賛するということはよほど強いプレイヤーなんだろう。彼女の実力は確かなもので、多分、俺でも片手剣一本で戦えば頭一つでるくらいでほとんど五分五分だろう。

「強いって……PKなのか?」

「んーん、デュエル専門だよ。24層主街区の北に大きめの樹がある小島があったでしょ」

「あー、この前一緒に行ったあそこか」

「うん。そこに毎日午後三時になると現れるんだ」

 すこし興味が湧いてきた。

「それでリーファはデュエルしたのか?」

「うん。あたしとリズさんとレイナさんが挑んだんだけどダメだった」

 リーファが悔しがるように言う。そして何かを思い出したように補足する。

「それにその《絶剣》が《オリジナル・ソードスキル(OSS)》を使われる前に負けちゃってね」

「OSS?」

 OSS──《オリジナル・ソードスキル》システムの略称だ。
 簡単にいってしまえば、自分だけの必殺技を作れる夢のようなシステムだ。しかし簡単に誰でも作れるわけではないというのがまた、運営側もお腹がお黒いことで。
 既存の動きである単発攻撃を組み合わせ、さらにそこに連続攻撃などを一連の動作のように行わなければならない。それをシステムアシストなしで行えというほぼ不可能に近い矛盾を乗り越えて作り出されるのが、OSSである。
 それを《秘伝の書》という形で他のプレイヤーに渡すこともできる。
 一応、俺も複数個のOSSを持ってはいるが、かなり疲れた記憶しかないので、できればもう行いたくはない。

「十一連撃の超大技だよ」

「じゅ、十一!?」

 その連撃数には驚く以外になかった。
 十一連撃などもはや《二刀流》のソードスキルだ。それもかなり上位に属する必殺技だ。

「それはかなり戦いたくなってきたな」

 俺は期待を膨らませながらも顔は、不敵なまでな笑みを浮かべる。

「それで、そいつの種族と武器は、どんなのだ?」

「シュウくんと同じ、闇妖精族(インプ)だよ。武器は、レイピアに近い片手用直剣かな。──あと、とにかく速くて、剣を眼で追えないくらいだったよ」

「スピードタイプか……それもリーファでも追えないとなると武器を変えるのはかなりキツそうだな」

 武器の変更ができないとなると俺が得意とする戦術の槍と剣で相手の間合いを崩しながら戦うことがきつくなってくる。
 そこまで考えて、俺はあることを思い出した。

「そういや、あのバカは戦ったのか?」

 するとリーファは少し、言いにくそうに頬を歪め、衝撃的なことを口にした。

「それが……もう戦って、負けたんだよね」

「……負けた」

 あのSAOをソロで駆け抜けた《黒の剣士》様が敗北した。
 それは本格的に《絶剣》というプレイヤーがとんでもない強さだということがわかる。多分、彼のことだから本気で戦ったはずだ。《二刀流》は使わなかったにしてもだ。
 それでもキリトが敗北したということは、かなり衝撃的だった。

「それとね……お兄ちゃんが絶剣さんと鍔迫り合いの時に何か話してたんだけど教えてくれないんだよね」

 リーファの言葉に俺はわずかな引っ掛かりを覚えたが、それも……

「本人に聞けばわかることだな」




 アインクラッド24層は、大部分が水面で覆われたフロアだ。
 俺とリーファは、《絶剣》が現れる小さな小島へと目指した。低空飛行をしながらその場所がわずかに視界に入った。当然ながら世界樹には劣るがそこにも立派な樹が枝を広げて生えている。その根元あたりに沢山とまでがいえないが、プレイヤーたちが集まっている。
 俺たちはその島に着陸する。すると周りにいたプレイヤーたちがこちらを一瞥してわずかに驚くような反応を見せたのがわかった。
 気にすることではないとそれを無視し、視界の右下に表示されている時計を確認する。時刻は、午後二時五十九分。
 あと一分で絶剣が現れる。
 キリトが負けたプレイヤーと戦いたいという気持ちとこの引っ掛かりの正体を知りたいという二つの気持ちが交錯し心拍数を上げていく。

「来たよ、シュウくん」

 リーファの声に俺は目の前の大樹のふもとのあたりに焦点を合わせていく。
 逆光が絶剣のシルエットを映し出す。思ったよりも小柄だ。かなり華奢な体型に見える。
 陽光が雲に隠れるとその姿が明確に映し出されていく。肌は、闇妖精族(インプ)の特徴である、影の部分が紫がかった乳白色。長く伸びたストレートの髪は、とても綺麗な黒色だ。胸部を覆うアーマーは柔らかな丸みをおび、その下のチュニックと、ロングスカート。
 俺はその姿を唖然として見詰める。
 絶剣は、深々とお辞儀をするとその顔をこちらへと向けた。小さく整った顔立ち。クリクリとした大きな瞳が輝いている。

「……絶剣って女だったのかよ」

 かなり苦笑いを浮かべながら、リーファに聞こえるくらいの小さな声で呟いた。
 言ってなかったっけ、と言わんばかりの表情を見せるリーファ。
 なるほど……俺が感じていた引っ掛かりはこれで解決されたようなものだ。相手が少女ならキリトが負けたのにも納得がいく。

「それじゃあ、ボクと対戦してくれる人は出てきてください」

 アバターに合った高くとても可愛らしい響きだ。

「行かないの、シュウくん?」

「いや……さすがに女の子相手だと気合いの入れ方が変わるというか、なんというか」

 さすがにそのプレイヤーがどれだけ強いとわかっても女の子を斬るのには、わずかな抵抗がある。

「まず最初は、《槍剣使い》殿が行くべきでしょ」

 そんな余分なことを言ったのは、先ほど俺を一瞥した男性プレイヤーだった。すると周りのプレイヤーも俺に気づき、一瞬のうちに小島の上は、俺がやる流れになってしまった
 もう後には引けない空気になってしまった。
 渋々ながら俺は一歩前に出て、絶剣と向かい合う。

「そういう流れになっちまったから手合わせ願うよ──絶剣殿」

「お兄さん、有名人なんだね」

 ニコッと笑顔を少女は見せる。

「別にそうでもねぇよ。コンバートしてきてからすぐに何十人倒してるあんたの方が今は有名人だよ」

 あっ、と俺は一つのことを思い出す。

「そういえば、あんたに勝てばOSSをくれるっつうのは本当なのか?」

 ここに来る前にリーファに言われたこと。絶剣は、なぜかデュエルにOSSを賭けて戦っていると。OSSを渡すことなどあまりその人に得はない。

「うん。ボクに勝てたらね」

 少女は笑顔を浮かべながら頷いた。

「そういうことなら、俺も賭けるよ……OSSをね」

「別にお兄さんはいいよ」

「いや、やるからには対等な条件でやりたいからな」

 そっか、と絶剣は感心したような表情を浮かべた。

「それでルールはどうする?」

 インプの少女が訪ねてくる。

「まぁ、なんでもありでいんじゃねぇか? つっても俺は魔法は使わないけどな」

 そう言いながら俺は背負われている片手剣の柄へと軽く触る。

「奇遇だね。ボクもこれだけだけだよ」

 一人称が《ボク》というのが少し気になったが少女は無邪気な笑みを浮かべ、左手で剣の柄を軽く叩いた。

「そうだ。お兄さんは、地上戦と空中戦、どっちが好き?」

 そこまで選ばせてくれるとはなんとも自信があるようだな。
 そういうことなら、とつなげて答える。

「地上で頼むよ」

「おっけー。ジャンプはあり、でも翅を使うのはなしね!」

 お互いに翅を畳むとその姿を消滅させる。
 そして手慣れた動きでシステムウインドウを操作すると俺の視界に、デュエルを申し込むウインドウが出現する。

【Yuuki is challenging you】。

 ユウキ、それが少女のアバターネームのようだ。
 下部には、SAOのデュエルシステム同様に三つのモードが存在した。《初撃決着モード》、《半減決着モード》、そして《全損決着モード》。
 デュエルの形式は全損だ。
 当然のように俺はOKボタンにタッチすると少女の傍にカラー・カーソル【Yuuki】の名前が出現。
 そして十秒のカウントダウンが始まった。俺とユウキはほぼ同時に鞘から剣を抜き取る。
 ユウキの剣は、俺と同様に片手用両刃直剣。
 ユウキは自然な中段の構えに対して俺は、刀身が地面に接触するくらいまでに落とす下段の構えだ。
 お互いが構えを取った瞬間に、カウントがゼロになる。
【DUEL】の文字の出現とともに、俺は全力で地を蹴った。
 先制攻撃あるのみ。片手剣を肩まで担ぎ上げえ、身体が一瞬軽くなるのを感じるとともにもう一度強く地面を蹴り上げ突進する。片手剣基本突進技《レイジスパイク》。技後硬直も少ないこの技は相手の動き方を見るのに最適な技であり、俺が頻繁に使う技だ。
 ユウキは、俺の行動がわかっていたように体を右へと降って回避する。突進によって隙が生まれたことによってユウキがすかさず右手の剣を動かした。それと同時に俺はソードスキルに流されていく右腕を強制的に体の前まで引き寄せて突進の余韻が残る中、横に薙ぐ。
 俺の刃と絶剣の刃が凄まじい音を立ててぶつかり合り、砂煙が舞い上がる。一瞬、ユウキの姿が消える。しかし、位置はなんとなくはわかる。そこめがけて片手剣を突き刺した。
 すると俺よりもわずかに速く目の前の砂のカーテンをぶち抜いて刃が現れた。ギリギリで首を右に曲げたおかげで直撃は防げたが頬をわずかにかする。HPが微量に削れていく。
 砂煙が晴れ、ユウキの顔を見ると彼女は笑顔を崩さないままだった。その彼女の頬にも赤い線が見える。
 これだけ手を合わせただけでもわかった。
 ───《絶剣》ユウキは本物だと。
 これならキリトが負けた理由も分かる気がする。
 これほどの相手に手を抜いて戦うのはかえって失礼に値する。対等な条件になるために俺はOSSを賭けた。しかし今の俺は手を抜いているわけではないが、本気とはいえない。
 俺は後ろに飛び退いてユウキと距離をとった。
 そしてちょうど後ろにいたリーファの顔を一瞬だけ見る。彼女は俺のことを心配しているように両手を胸の前で握っている。
 さすがにリーファの前で無様な戦いは見せられない。

「ちょっとタイム頼めるか」

 俺は手で“T”を作ってタイムを要求する。
 するとユウキは疑問を持ったような表情を見せるが、どうぞどうぞ、と了承してくれた。
 ありがたく俺は、システムウインドウを開き、所持アイテムリストから一つの武器をオブジェクト化する。禍々しい紅い光を放ちながらも黄金を纏い、三つの分かれた穂先。ルグルー回路の奥地に眠っていた伝説級武器(レジェンダリーウエポン)、《ロンギヌスの槍》だ。
 それを左手で背中から引き抜いて構える。右手に片手用直剣、左手に片手用槍といった異質な構えにユウキはワクワクしたような顔をしている。
 多分、本質的に俺と彼女は似ているのだろう。
 だからこそだ。俺の中にまだ消えない違和感をユウキと剣を交えることで知りたいと思っている。
 一度、息を整えてから俺はタイムを解いて彼女と向き合う。綺麗な紫水晶の瞳がきらりと光る。
 すると今度は、ユウキから飛び出してきた。
 右上から振り下ろされる剣を、右の剣で弾く。すると金属同士がぶつかり合う音とともに右手にかなりの衝撃が伝わってくる。だが、ここで押し負けているだけでは、槍を出した意味などない。俺はすかさず左手の槍を音速のごとく三つの穂先がユウキの胸へと突き刺した。完全に捉えた。しかしユウキは上半身を半ば反らすような形で回避してくる。だが、それでも完全な回避は行えずに胸のプレートを一番左の刃が抉っていく。
 それでもただでやられるわけもなく先ほどの右手にとんでもない衝撃とともに絶剣の刃の先が俺の右肩をわずかに掠っていく。互いにわずかにHPが減少しているだけで、致命的なダメージが一発も受けていない。
 そこから激しい剣戟戦が繰り広げられていく。
 そのどれもがヒットはするが致命傷になるようなダメージを互いに与えることはできていない。
 だが、その中でユウキの癖というか弱点のようなものが見えてくる。確かに彼女は恐るべき反応速度を誇っている。しかしそれでも対人戦には慣れていないようでタイミングをずらしてくるや、ソードスキルを無理やり溜め込んでのフェイントは使ってこない。
 そこをつけば、もしくは相手の知らないソードスキルならば勝機が見える。
 俺は後ろに飛び退いて片手剣をレイピアを構えるがごとく体を垂直に立てる。そして地を蹴り上げて一気にユウキとの間合いを詰める。そして立てた刃を一気に放つ。
 絶剣はそれに反応し、下から上に切り上げようとする。
 しかし、その瞬間に左手で槍を持ったまま瞬時にシステムウインドウを開き、武器選択の窓が現れる。それを武器を持ちながら全力で殴りつける。すると今まで装備していた漆黒の片手剣が光へと変わり、一瞬で姿を消した。そして新たな光が右手に集結し、それは黄金の輝きを放つロングソードをオブジェクト化させていく。リズベットが《ロンギヌスの槍》を手に入れた際に俺の剣が壊れたので新たに作ってくれた片手剣だ。
 スキルMod《クイックチェンジ》。一瞬消滅したことでユウキの剣は、光の間をすり抜けた。
 もうこれ以上のチャンスは二度とおとずれない。
 ───ここで仕留める!
 片手剣ソードスキル《リーフ・ワルツ》。俺が編み出したOSSだ。連撃数でいえば、六連撃技にしてリーファが命名した技だ。十一連撃の絶剣のOSSに比べたら足元にも及ばない。
 黄金の刃がまばゆい翠をまとうとともに高速で目の前のユウキの体を切り裂いていく。
 さすがに予想外の行動をされた後に回避するなどいくら絶剣でも不可能だ。
 システムの支援を受けた片手剣が落ち行く葉を斬るがごとくの高速でユウキの体を右肩から腹部まで抜けていく。そして二撃目に入ろうといた瞬間にユウキを見て驚きを隠せなかった。
 不意をついたはずなのに少女の瞳は、完全に俺の片手剣を捉えている。
 すると一瞬のうちに残りの五連撃を右手が煌めくと同時に消し去られた。
 それに驚いたせいで俺は左手の《ロンギヌスの槍》へとソードスキルを繋ぐのを忘れ、体を硬直が襲う。
 だが、相手も同時に技後硬直が襲ってくる。しかし、こちらは六連撃で相手は五連撃だ。技後硬直の時間は相手の方が回復が早い。
 すると引き戻された黒曜石の剣が、青紫色の光を帯びた。
 これはまずい!、と思ったときにはもう遅かった。

「やあっ!」

 とてつもないスピードの直突きが、俺の左の肩を捉えた。そのまま右下へと高速の五連撃。抵抗する間も無くそれを受けて一気にHPゲージがイエローゾーンに突入。こんなスキルなど記憶にないということはこれが絶剣のOSSだ。
 そして続けてユウキの剣が鮮やかなライトエフェクトを失わぬまま、今度は左上に構える。
 これを受ければ俺のHPは全損する。
 ここで背中を向けて逃げれるかもしれない。しかしそれは俺の性分でもない。それならば、全部叩き落せばいいだけだ。
 ユウキの剣の剣先へとしっかりと焦点を合わせて左手で握る槍に力を込め、ソードスキルを発動。青白い閃光が眩く軌跡を描く。五連撃技、槍ソードスキル《クインテッド・スパーク》。
 槍の穂先がユウキの剣先を正確に捉えて五連撃全てを弾いていく。衝撃によって俺のHPはレッドゾーンにユウキのHPはイエローゾーンに突入していく。
 しかしまだ、ユウキの技は終わっていない。最後の一撃が残っている。
 ───だからあと少しだけ耐えてくれ、俺の体。
 意識を左から右へと変える。技後硬直が発動する前に右手の片手剣を強く握りしめ手首に捻りを加えて、後方へと引く。すると技後硬直が起きるよりも早く黄金の刃は紅の閃光を発する。片手剣重二連技《トータル・インパクト》。
 最後の一撃が俺の胸の中心、エックス字を描くダメージエフェクト中央に照準を合わせている。
 十一連撃目を紅が迎え撃つ。
 激しい衝撃が最初の時のように砂煙を舞い上がらせる。
 とてつもない速さと威力の両方を持っている強烈な技だ。しかしこちらもただでは負ける気はない。
 吹き飛ばされそうになった足を杭を地面に打ち込むようにして耐え、捻っていた手首を元に戻しながら砂煙の中へと突き立てた。
 砂煙が吹き飛ばされ、ユウキの体を確実に捉えた。彼女の体は大きく後方へと吹き飛ばされていった。
 それでも彼女のHPゲージにはわずかにだが赤いドットが見える。
 ここまでの全力を出しても倒しきれないほどの実力。本当に強すぎる。
 そして吹き飛ばされたユウキに俺は語りかけた。

「本当にユウキはこの世界の人間なんだな」

 すると向こう方で彼女が微笑んでいるのが見えた。それは俺にとって十分な答えだった。
 そして俺は両手を持ち上げて叫んだ。

「リザイン!」

 途端にデュエル終了のファンファーレが鳴り響いた。そして少し離れたところにいたユウキのところまで行き、拳を突き出した。
 すると少し戸惑ったような表情を見せてから徐にユウキも拳を突き出す。それを軽くぶつけた。

「本当強いな、ユウキは」

「あ、ありがとう。でも、お兄さんも本当強いね。あのまま戦ってたらボクの負けだったと思うし」

 笑顔でそういう、ユウキだった。あそこで俺はリザインしていなければ確実に負けていただろう。《トータル・インパクト》はそれほどバクチ技なのだ。反動が大きすぎるゆえに技後硬直も長い。さらにいつものようにつなぐことさえもできない。

「それじゃあ、俺が負けたし、OSSを渡したいところなんだけど、今はギャラリーもいるから後日また会おうぜ」

 システムウインドウを動かして、フレンド申請をユウキに送る。
 うん、とユウキは無邪気に頷いた。

「それじゃあな」

 フレンド申請を終えて、立ち去っていく。

「シュウくん!」

 その場から立ち去った俺にまず話かけてきたのはやはりリーファだった。

「やっぱ、強かったわ。あれはキリトが負けたのも納得だわ」

「でも、すごいよ。あの絶剣のHPをあと一歩まで追い詰めるなんて誰もまだ出来てないんだよ」

「いや、ロンギヌスを使ってる時点であんぐらいはいって当たり前だ」

 するとメッセージを知らせる音が鳴り響いた。それは、先ほど戦った絶剣殿からだった。フレンドメッセージを開いて内容を確認する。

【すっごく楽しかったよ。今度は、本気のシュウと戦いたいな】

 そのメッセージを見て苦笑いを浮かべるしかなかった。
 俺はそれに返信する。

【気が向いたらな。あと、なにか困ったことがあったらいつでも連絡しろよな。最強の剣士さん】

 キーボード打ちで文章を打ち込むと【送信】のボタンを押して俺とリーファは小島を後にした。
 
 

 
後書き
更新がかなりおそくなってしまったので今回は忘れないうちに更新させていただきます。
どうだったでしょうか?

一応、今回はユウキとシュウの出会いの話を書きました。
まだ、ユウキを生存ルートにするか原作通りにするか決めていません。
意見がありましたらお教えください。

誤字脱字、感想、意見などがありましたら感想などでおしらせください。
また読んでいただければ幸いです。 
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