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戦国異伝

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第百八十九話 その一手その十

「武田と上杉は」
「それに北条もですな」
「三つの家は手を結んでおるな」
「どうやら」
「それではじゃ」
「近いうちにですな」
「あの三つの家が来るぞ」
 慶次を咎める目からだ、真剣な面持ちになってだ。前田は言った。
「やがてな」
「そうですな、それがしもそう思います」
「そうじゃな、それも近いうちにな」
「そのことじゃがな」
 二人のところに金森が来た、そして言うことは。
「どうもな」
「そろそろか」
「動きはじめますか」
「どうやらな」 
 そうだというのだ。
「武田も上杉もな」
「先程徳川殿から知らせが来た」
 丹羽も来た、丁渡前田達がいる軍勢の大将となっている彼がだ。
「武田と上杉がな」
「動きはじめておるのか」
「それぞれ兵を集めだした」
 その拠点にというのだ。
「無論北条もな」
「あの家もか」
「左様、これは危うい」
「さすればこの戦は」
 金森が言って来た。
「早く終わらせて」
「東に戻ってな」
「戦い」
 そしてだった。
「勝たねばならぬな」
「必ずな。全てな」
 武田にも上杉にもだというのだ。
「東の国の戦で勝てば」
「天下は決まるな」
 前田も言う。
「間違いなく」
「その通りじゃ」
「まことに大きいな」
 また言う前田だった。
「そう思うと」
「しかし東に向かう為にはな」
「この毛利との戦をな」
「早く終わらせねばならない」
 これが絶対の条件だというのだ。
「東に向かい武田、上杉、北条を倒す為には」
「気になることは」
 ここで金森が言うことはというと。
「徳川殿じゃが」
「あの御仁じゃな」
「うむ、徳川殿が武田と対しておられるが」
「武田の兵は六万じゃ」
 この兵の数をだ、丹羽はここで話した。
「それに対して徳川殿の軍勢は一万二千」
「兵の数が違い過ぎるな」
「三方ヶ原では負けた」
 それも散々にだ。
「勝てる数の差ではない」
「やはりそうか」
「徳川殿もそれはご存知じゃ」
 家康自身もだというのだ。
「よくな」
「さすれば」
「徳川殿は今度は戦われぬ」
「守られるか」
「それで武田はある程度足止めは出来るやもな」
「そして上杉は」
 金森が丹羽に問うた。
「北ノ庄、そして金沢の城か」
「この二つの城でじゃ」
「足止めか」
「そうしてな」
「時を稼ぐか」
「最悪の時はな」
 毛利との戦が長引いたその時はというのだ。 
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