美しき異形達
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第三十二話 伊勢神宮その十三
「ただ、習性としてね」
「そうしたことはしないのよ」
「相手を、貴女達をいたぶることはね」
「しないのよ」
「狩る訳でもないわね」
菖蒲はこのことも言った。
「私達を餌として」
「餌?私達は食べる必要はないわ」
「少なくとも人間をね」
つまり菖蒲達をというのだ。
「おそらくだけれど適当なものを食べてね」
「生きられるし」
「食虫植物だけれど貴女達を食べることもね」
「興味がないわ」
「ただ。戦って倒す」
菖蒲はその目を鋭くさせて言った。
「それだけなのね」
「そういうことよ、戦い倒す」
「そのことには興味があるわ」
「けれどいたぶることも狩ることも」
「食べることにも興味がないわ」
「結局どういう連中なんだ?」
薊は怪人達の言葉を聞いて眉を顰めさせて言葉を出した。
「何処から出て来るかもわからねえしその特性もな」
「私達だけ狙って来るしね」
菊も首を傾げさせつつ言う。
「そこもわからないわね」
「わからないことだらけだよな」
「本当にね」
「今どれだけ考えてもわからないことなら」
菖蒲と同じく怪人達と今対峙している桜の言葉だ。
「置いておいてわかること、出来ることから」
「するべきね」
「はい、そう思いますが」
「その通りね」
菖蒲は桜のその言葉に頷いて答えた。
「わからないことは幾ら考えても無駄よ」
「わかる様になってからですね」
「ええ、ヒントを手に入れてから」
そうなってから、というのだ。
「考えるべきだから」
「今は、ですね」
「置いておきましょう」
「そしてやることは」
「戦うことよ」
その怪人達と、というのだ。
「そうしましょう」
「それでは」
「はじめるわよ」
菖蒲も桜もそれぞれの武器を出した、菖蒲はフェンシングの剣を桜はレイピアを。それぞれ出してそうしてだった。
戦いに入る、怪人達も身構えた。
菫はその彼女達を見つつだ、こうしたことを言った。
「色々気になることはあっても」
「ええ、今はね」
「今の私達に出来ることは」
鈴蘭と黒蘭の姉妹がその菫に応える。
「観るだけね」
「この戦いを」
「それだけね、出来ることはね」
まさにというのだ、菫自身も。
「ここで」
「ええ、それじゃあ」
「今はね」
こう話してだ、そしてだった。
菫は覚悟を決める様にして菖蒲と桜の戦いを見守ることにした、そうすることしか出来ないことがわかっているが故に。
薊もだ、一歩も動かずに言った。
「勝った後はな」
「菖蒲ちゃんと桜ちゃんがね」
裕香が薊に応える。
「その後はよね」
「ああ、また伊勢の道歩こうな」
こう二人で話すのだった。
「そうしような」
「そうね、それじゃあね」
戦いはあろうともそれ以外のことも考えていた、少女達は戦いと隣り合わせの日常を楽しみ続けてもいた。
第三十二話 完
2014・9・17
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