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とある異世界の交差物語(クロスオーバー)

作者:鉄龍王
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第10話 3人の少女、亡霊に挑む

 
前書き
遅くなりました。何とか新作を書き上げました。それではどうぞ 

 
千鶴は黒笠の男……刃衛の言葉に疑問を抱いた。彼は確かに“10年”と言った…だが自分たちは刃衛を見失ってまだ2年しか経っていないはず…故に千鶴は刃衛に疑問をぶつけた


「どうして貴方が此処にいるんですか!?だいたい10年って……戊辰戦争(あのたたかい)からまだ2年しか経っていないんですよ!?」

すると刃衛は呆れたように溜息を吐き、千鶴の質問に答えた

「当然だ。俺はあの戦いから10年……つまり“明治10年”の時代から此方に飛ばされたんだからな」

「な!?」

「大体我々は100年以上前の明治からこの時代に飛ばされた時点でそのような時代云々の会話は無駄というものだぞ?」

「ぐ……っ!」

「そもそも俺が新選組に身を置いていたのも、より多くの人を斬る為だった……」

そう言うと刃衛は星が見えない夜空を見上げ、昔の話を語り始めた


幕末()の頃は楽しかった………互いの命を奪い合い殺しあったあの時代……生きるか死ぬか、殺すか殺されるか、血で血を洗い、恨みと憎しみを撒き散らし、互いを喰らい合う狂った戦乱の時代……実に単純でそれ故に明瞭な澄んだ時代……」

幕末の頃を思い出しているのかウットリとした不気味な笑みを浮かべていた


美琴とカナは刃衛の語りを聞いて恐怖に震えた。この男の言ってることは明らかにオカシイ。まともな人間が吐く言葉じゃなかった…美琴は特に刃衛の眼には何処か覚えがあった。


「所がどうだ。明治という名の平和な時代になれば今まで人斬り(おれたち)に暗殺の以来を散々してきた維新志士(くずども)は『人斬りは犯罪』とぬかし、“用済み”と言わんばかりに味方に殺されかけた。それでも生き抜いた俺はあの緊張感を……生と死の狭間で圧縮された一時をもう一度味わいたい…そう思って10年間時代に抗ったが幕末()の頃のような緊張感を味わえなかった。だがそんな日々の中であの男……人斬り抜刀斎と出会い、本物の殺し合いが出来た…」

刃衛の言葉に千鶴の眼は大きく開いた

「人斬り抜刀斎って……あの維新最強の!?」

2人の会話に入り込めなかった美琴とカナだが、抜刀斎とは誰なのか何とか千鶴に尋ねた

「千鶴さん…その、抜刀斎って一体?」

カナの質問に頬に汗を垂らした千鶴が説明した

「長州派の維新志士……土方さん達新選組の最大の宿敵です。私は出会った事は無いけど、剣の腕は新選組の組長に匹敵する剣客。隊士さんたちの多くは彼に斬られました」

「「なっ!?」」

「そう、“飛天御剣流”という古流剣術を使うあの男と出会った時は歓喜に震えた。維新志士最強と謳われた剣客と刃を交えるなど早々出来る事じゃない。そして刃を交えて予想通り…いや予想以上だった。なんせこの俺が一時引かなければならん程追い詰められたからな…そして2度目の戦いは良かった。言葉使いは幕末(むかし)の頃に戻り、逆刃刀などというふざけた刀を使っていたがそれでもあの時の奴の眼はまさに伝説の人斬り様の復活だった」

星は見えないが代わりに見える月を見上げ、刃衛は三日月のような歪んだ笑顔で続けた

「あれこそ俺が追い求めた生と死の狭間の瞬間だった……戦いに負け、俺に勝ったあの男に斬られるはずだった……だがあの男は『もう人は斬らない』と腑抜けたことを言ってきた。だから俺は己の刃で自分の最期を迎えた」

刃衛のその告白に千鶴は一つの疑問が浮かんだ

「『最期を迎えた』って…鵜堂さん貴方まさか…っ!」

「そう、俺は一度死に、地獄に落ちたのだが何故か再びこの世界で2度目の生を受けた」

「「「っ!!!」」」

「そして俺をこの世界に飛ばしたあの女から『雪村千鶴と土方歳三がこの世界にいる。今後の為にも奴らを監視しろ』という命を受けてな。ここ数日はお前たちの様子を見ていた。そしてあの女から『土方の力量を知りたい。手段は問わないから奴と戦え』という命を受けたのでな。副長を本気にさせるならお前を攫うのが手っ取り早いからな。一緒に来てもらうぞ?雪村……」

そう言った刃衛は千鶴の腕を掴もうとするが美琴とカナが彼女を守るように前に出た

「ん?何だ小娘ども、俺は雪村に用があるんだ。邪魔をするな……」

刃衛は美琴とカナに対して煩わしそうに睨みつけるが美琴は刃衛の視線を逆に睨み返し、啖呵を切った

「ふざけんじゃないわよ…グダグダ喋っていたけどつまりアンタは土方先生と殺し合いたいから千鶴さんを攫おうとしてるんでしょ!?アンタのそんな下らない理由のために千鶴さんを渡すと思ってんの…!?なめんじゃないわよ!!」

「千鶴さんに触らないで!!」

美琴は砂鉄の剣を、カナは両手に念動力を集中させ、戦闘態勢に入った。刃衛はそんな2人に僅かながら感心していた

「ほう…これは意外。割と様になってるではないか」

刃衛が呟くと同時にカナは念動力の衝撃波を、美琴は鞭のように伸びた砂鉄の刃を刃衛に向けた

念動(サイキック)ぅぅぅぅぅぅっ!!真空の槍(エアロ・ジャベリン)!!!」

カナが念動力で生み出した空気の槍…つまり見えない槍(・・・・・)が刃衛を襲うがまるで見えているかのようにアッサリとかわしていく。

美琴も負けじと砂鉄の剣を振り下ろすがこれも刃衛には通用しなかった。



「…意外と様になっていたが所詮殺意の無い攻撃。このような輩は素手で充分…いや………」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

念動(サイキック)ぅぅぅぅぅぅぅっ!!」

2人は刃衛の言葉に一切構わずに襲うがまるでハエをあしらう様に一言つぶやいた


「素手すら無用……」

「「!?」」

刃衛のつぶやきが耳に入った瞬間、突然体から力が抜けていき、美琴とカナは倒れてしまった

「美琴ちゃん!カナちゃん!」

「な、なに…これ……?」

「からだ…うごか、な……」

「そんな…これは……」

倒れた二人は何とか立ち上がろうとするが力が入らず、千鶴も動けずにいた。余裕のためか刃衛はある説明を始めた


「二階堂平法“心の一方”。またの名を“居縮(いすくみ)(じゅつ)”。これは極度に極めた殺気を相手に叩き込む事で相手を不動の金縛りにする。まぁなんだ…わかりやすく言えば今のお前たちは……」

そう言った刃衛の両の掌を改めて見た千鶴はゾッとした。彼の掌には刀で貫かれたような傷跡…いや刺し傷の穴が空いているのだ。そこに刃衛の腰に差していた奇妙な刀……それは鍔・柄・ハバキを省いた剥き身の刀だった。

「『蛇に睨まれた蛙』というヤツだ」

刃衛はその刀に掌に差しこみ、まるで腕そのものを刀にする刃衛の姿があった。

「殺気の籠って無い技などお遊びと同じ。いいか?」

刃衛は3人を見下しながらある言葉を贈った

「“剣は凶器 剣術は殺人術 どの様な綺麗事を並べても、それが真実”!!」

刃衛は腕に差した剣を振り上げ、美琴とカナに狙いを定めた。そして……

「うふふ」




その剣を振り下ろした!
 
 

 
後書き
何とか出来上がりました。次はいつになるのやら…ホントにどうしよう…… 
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