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俺が愛した幻想郷

作者:茅島裕
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プロローグ
  第三話 答え合わせ

ねぇ... 俺よ
俺の仮定は合っていたのか...? でも、この状況から察するに、合っている可能性の方が高いよな

ってことは....
やはりこの変な能力もか....
んまぁ、確かにさ、この目の前にいる八雲さんが俺の頭を撫でたから、もしくはこの人に会ったこと自体が原因で能力が使えるようになったのかもしれない

「そろそろ落ち着いた?」

あまり時間は経っていないのだが
恐らく八雲さんは待ちきれなかったのだろう
さっきまでの行動をからもわかる

「....うん」

やべっ... これは敬語の方がいいのかな

「えっと、敬語の方が良いでしょうか?」

タメ語なのは年上には失礼か
それを考えて口に出すが...
八雲さんは、おぉと今思い出したか、それとも関心したのか。どちらでもいいけど、眉を上に上げていた

「そうねぇ... あなたが話しやすい方でお願い」

これは誘っているのか、敬語を使えと遠回しに誘っているのか... それとも普通に純粋になのか
とりあえず、純粋の方だとして、タメ語でいいか

「えっと、じゃあタメ語にするよ」

八雲さんは少し微笑んで、うんうんと少し頷いた
これは純粋な方で合っていたと言うことでいいのか?

「さて。あなたはなんでここに連れて来られたと思う?」

人差し指を自分の唇に添えるようにして言う。可愛らしさを強調しているようだが、正直言って台無しだ。可愛くないとかそう言う失礼なことを言っているわけではない。なんで台無しなのか、八雲さんは"可愛い"じゃなくて"綺麗"だからだ
まぁ確かに綺麗な人でも可愛さを強調したら上手くいくんだろうけど... 何か違う
いやもうそんなこと良いや、後でもっと状況が落ち着いて質問も終わったら言おう

「なんで連れて来られた。そうだねぇ...俺の仮定、そうあくまでも仮定だけどね。八雲さん、俺が変な能力使えるの知ってるでしょ? そして八雲さん? あなたも変な能力が使えるでしょ? 俺と同じ能力とは限らないけど、使えるんでしょ?」

「そうね。あなたが能力を持っているのを知っている。それに私も能力が使える。あと関係ないけどその八雲さんってのやめてもらえるかしら? 下の名前でお願い。紫でもゆかりんでもゆかゆかでもなんでも良いから」

「じゃあゆかりん?」

ゆかりん、そう呼んだとき、ゆかりんの顔が若干赤くなった気がするのだが気のせいか?

「そしてその仮定と、もう一つの仮定があります。ゆかりん、あなたは異世界人。そうだね?」

ゆかりんは無言でコクリと頷いた

「それじゃあ、異世界人のゆかりんがいるその世界... その世界の住人はみんな能力を持っている。これもまた同じ能力とは限らない」

「みんな、では無いけれど。一応合ってるわ」

「そこで、俺も能力を持っているときた。だが俺は、ゆかりんのいる世界の住人ではない。でだ、俺は産まれる世界を間違えたんじゃないのか... そう考えた。なら...本来、産まれるべき世界に行かなければならない。違うかな」

手を顎にやっているゆかりん。何かを考えているらしい

「ええ、大体合ってる」

「それでゆかりん? あなたは俺に伝えたかったことがあったんだよね? それがさっきまでの仮定。これで完璧かな。まぁでもさっきも言ったように仮定だから、仮定」

「合ってる、合ってるわ。ただ... あなたはあなたで、"こっち"に来たかっただけなんじゃないの? "そっち"から抜けたかったんでしょう?」

流石
いや、何が流石なのか...
でもなんだろう、流石って言う程の雰囲気がゆかりんは出てる。可愛さを強調しているゆかりんとはまた違った雰囲気だ。なんと言うか... 多分この人、その異世界の一番偉い存在なんじゃないのか? そんな気がしてきた

「それにしてもあなた、頭が回るのね〜」

ゆかりんがそう言ったのは物理的な意味ではない
頭の回転が速いと言うことだ(物理的な意味ではない。大事なことなので二回だ)

「あ、そうだ。ゆかりん?」

「はい?」

「なんであんとき、頭を撫でたんだ?」

「あのとき?」

「だから、俺が小さい頃、ゆかりんと俺が初めて会ったときの」

ゆかりんは一度、(だんま)りした後、ハッと何かを思い出したかのように、ブレブレの声のトーンで言った

「あのときね、そう、あのとき」

「で、なんで撫でたの?」

「あ、愛らしかったのよ....」

焦り混じり、悲しみ混じり
何をどう焦っているのかわからない表情だ
忘れて居た...と言う捉え方も出来るし、はたまた何かを隠しているようにも見えるのだ

俺とゆかりんの間にしばし沈黙が走る
俺は悪いことを聞いてしまったのか、なんか悪いことをした気分だ

「幻想郷へ...ようこそ」

不意にゆかりんはそう言った

「へ?」

「幻想郷、あなたがこれから来る世界の名前よ。私の愛した、大好きな幻想郷よ」

そうか
俺は抜け出せるのか
あの世界から

幻想郷... 異世界
俺にとってはもう異世界じゃない、なくなるんだ

ホントに、俺の頭はメルヘンチックだぜ...

そうだな


「愛すよ、俺も愛すよ。幻想郷」

今までにない真面目な顔をしてそう言う俺... そしてそれを見ていた紫はちょっぴりびっくりした顔をしてからふふっと笑い

「愛してくださいな。私の愛した幻想郷」
 
 

 
後書き
「ときにゆかりん」

「はい?」

「なんか、ゆかりんって呼ぶのが嫌になったから紫って呼ぶよ」

「えっ! あ... ああ、そう...」

口を前に突き出してアヒル口のような感じにしてしょんぼりしている紫が俺の目の前には居た... 悲しそうな顔をしている
ゆかりんの方が良かったのか? 
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