ひとかけらのエメラルド
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第二章
「好きなのよ」
「そうだよね」
「ええ、だからね」
「だから?」
「今日は緑のあるお店に行きましょう」
私から彼に誘いをかけた。
「緑で飾られたお店にね」
「ああ、あのレストランだね」
「そこに行って食べましょう」
「じゃあお金は」
「いいわ、貴方だけ出すっていうのは」
「いつも通りだね」
「そう、私そういうことは好きじゃないから」
男の人にだけ出させる、そうしたことはだ。だから私は彼が申し出た時はいつもこう答えていた。本当にいつも。
「だからね」
「ワリカンだね」
「いつも通りね」
「そうしてだね」
「あのお店でも楽しみましょう」
こう話してだ、そうしてだった。
私はこの日も他の日も彼と一緒にいる時間を楽しんだ。楽しんでいたのは彼と一緒にいる時間だけでなく勤めている場所でもだった。
仕事仲間と一緒に楽しくやっていた、そこで。
彼女達にだ、こんなことを言われた。
「ねえ、あんたそろそろよね」
「誕生日よね」
私に言ってきたのはこのことだった。
「それじゃあね」
「一緒に何処か行く?」
「そこでパーティーでもする?」
「誕生日祝いにね」
「そうする?」
「いや、誕生日はね」
私は笑顔で彼女達に答えた。
「彼と一緒にいるから」
「ああ、だからなの」
「それで誕生日はなのね」
「彼と一緒に楽しい時を過ごす」
「そういうことね」
「そうなの、だからね」
それでだとだ、私は皆に答えた。
「他の日でお願い出来る?」
「よし、じゃあ誕生日の次の日ね」
「次の日にお祝いしましょう」
「串カツでも食べてね」
「それでね」
「女同士で串カツねえ」
そう聞いてだ、私はだった。
苦笑いになってだ、彼女達にこう言った。
「何かそれ違う様な」
「いやいや、大阪じゃ普通だから」
「だからね」
「こっちでも別にいいじゃない」
「女同士で串カツ食べてもね」
「それでお祝いしても」
「そうなの、大阪じゃ普通なのね」
そのことは知らなかったので本当かしらと思った、女の子同士だと串カツや焼き鳥は違うとどうしても思ってしまうけれど。
「それが」
「二度漬け禁止よ」
その串カツをソースに、というのだ。このことは私も知っている。
「あとキャベツ食べ放題だから」
「串カツとビールでお祝いよ」
「そうするからね」
「わかったわ、じゃあお誕生日の次の日ね」
「串カツでお祝いだから」
「そういうことでね」
仕事場ではこうした話をしたりして楽しくやっていた、そうしていきながら遂にその日が来た。私の誕生日が。
その夜にだった、私はまずは彼との待ち合わせ場所に行った。けれど。
彼はいなかった、それで携帯で聞くと。
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