ひねくれヒーロー
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
気高い夢を見ることだ
気高い夢を見ることだ。あなたは、あなたが夢見た者になるだろう。
あなたの理想は、あなたがやがて何になるかの予言である。
—ジェームズ・アレン—
********************************************
気高い夢を見ることだ
◆◇◆コン◆◇◆
昇格祝い鍋パーティーにまさかのダンゾウが参加
先生が奢る気でいたのに全てダンゾウが支払ってくれた
・・・シナイちゃん持ちだからって高モン食べてたのに・・・
一ヶ月後から上司になるのに、気まずい
リクエスト通りアン肝入りの雑炊を食べて満腹、デザートに心太も食べて一息ついて皆と別れた
明日にでも病院行って、しばらく入院しよう
最近マシになってきたとはいえ、まだまだ吐血は止まらない
人間ドッグでもすると思えば良いさ、一ヶ月の休暇なんてめったにない
アパートへの帰路、ナルトへの土産に甘栗甘のお汁粉を買って帰る
夕焼け空がやけに綺麗で、ボーっと歩いていると後ろから抱きしめられた
「・・・ナルト?」
驚いた
まだ家に帰っていなかったのか
俺達から数歩離れた場所にペインがいる
ナルトの護衛か
「コン・・・あのさ、コンって・・・一体何なんだってばよ?」
「は?」
一体何の話だ
ナルトに聞いても埒が明かないと判断してペインを睨みつける
口パクで狐のこと聞かれたと言われる
・・・あー・・・
「ナルト、ここじゃ話したくない
・・・帰って、2人で話そう」
「・・・ん
・・・ペインの兄ちゃん、オレ、コンと帰るから!」
「あぁ
それじゃ、また明日な」
冷や汗かきながらオレ達を見送ったペイン
ある程度アパートに近づくまでは陰ながらついて来ていたが、部屋に入ると消えた
ナルトは黙ったまま背中にひっついている
ちょっと上着ぐらい脱がせろ
テーブルにお茶を入れてお汁粉を弱火で温めておく
・・・お茶よりホットミルクの方が良いかな
思い直してもう一つの小鍋で牛乳を温める
「・・・なぁ、ナルト
オレのことを何だと聞かれたら、お前や砂の我愛羅と一緒だったってことだな」
「・・・コンも、オレや我愛羅と・・・?」
コップに注いで、ナルトに渡す
・・・お汁粉も、もういいかな
「そう、だからオレ達は一緒に暮らしてる・・・ま、これはオレの推測だけど
オレには、お前と似たような狐が腹にいた」
「・・・いた?」
ホットミルクを飲みながら聞かれる
「腹から引きずり出された
何故だか尻尾2本だけ残されたけどな」
腹部を擦ってみせると顔色を変わった
「引きずり・・・まさか、暁か!?」
イタチや鬼鮫と接触して自分が狙われていることは知ってるんだな
でも、この世界の暁じゃないしな・・・
あぁ、イタチはオレの世界の記憶があるんだっけ・・・
「ま、そこら辺は事情があってな・・・イタチが絡んでる
一応里には九尾に酷似したモノが封印されていたと報告されてる
・・・自来也がしっかり報告していたら、だけど」
「そう・・・だったんだ・・・
・・・コンも、エロ仙人と会うまでは独りだったってばよ?」
聞きづらそうに、だけど、今聞いておかないといつ聞けるか分からない
そんな思いが顔にありありと書かれている
ナルトの様子に苦笑しながら、お汁粉を渡した
「オレが育ったのはある宗教施設、神殿で巫子と呼ばれていた
周囲は大人だけ、両親の顔も知らず、友達もいない、オレがすることは信徒と面会するだけ・・・
白も、オレのところの信徒だったんだ」
「白の、兄ちゃん・・・ん?」
お汁粉を口に含んで首を傾げた
「どうした?」
お汁粉、まだ温かったか?
「面会だけだったら、どうして白の兄ちゃんの葬儀、出来たんだってばよ?」
面会って・・・葬儀・・・・あれ?
面会だけなら葬儀に慣れていたらおかしい?
頭の奥で誰かの声を思い出した
———日の国、太陽神を奉る小国———
———太陽神のもと、御国のために働く月隠れの忍び里———
———貴方はそんな信徒たちの葬儀をする巫子なのです———
仮面をつけた誰か、与えられる月の色の和紙
三日月の型をした紙を、死体に持たせる
誰かが死体を燃やしていく
———本日の面会は、これで終わりですよ巫子さま———
誰だ、この声は誰だ
この記憶はなんだ、こんなの知らない、面会って、何なんだ
「コン!」
眼前にナルトの顔だけが映る
飛び込んできた金色がオレを現実に引き戻した
動悸が激しい、息が上手く出来ない
座り込んで頭を抱えた
まばらな情景が脳裏を擦り抜けてゆく
———巫子殿は、字がキレイですね———
あぁ、この声
手習いの墨の匂い
仮面から垣間見える、写輪眼
———苦ーいお薬もちゃんと飲めましたね、エライエライ———
この声、どうして忘れていたんだろう
最後まで傍にいてくれたじゃないか、暁と戦って死んでいったのに
一度だけ見せてくれた氷遁
忘れられないほど綺麗な術だったのに、忘れてしまった
オレは、お前たちのことを忘れ去っていたのか
———パラレル・・・ワールド?ほう、並行世界という意味か・・・———
———何?名前を・・・?・・・そうか、なら我はこれよりパルコと名乗ろう———
そう、か
そんな記憶も、あったんだな
知らず知らずのうちに涙があふれだす
「・・・ナルト、オレ、もしかしたら独りじゃなかったのかも・・・」
「え?」
「イルカ先生みたいな、奴らがいたみたいなんだ・・・
なんだか、記憶があやふやなんだけどな」
涙をぬぐい取り、笑いかけてみる
手を取り合って2人で布団に潜り込んだ
段々と、記憶が鮮明になっていく
しかしどうしても六歳の誕生日だけ思い出せない
ところどころ記憶が溢れてきているというのに、あの日だけ思い出せない
思い出そうとするとまどろみが襲う
ナルトが笑いながらオレの頬を抓った
「エロ仙人がいて、シュロやイカリがいて、シナイ先生がいるってば
オレにもイルカ先生やサクラちゃん、カカシ先生・・・ついでにサスケがいる
・・・オレ達、独りじゃなかったってばよ」
笑顔が眩しい
・・・そうか、サスケはついでか
「・・・ペインは?」
泣くぞあいつ
「ペインの兄ちゃんも!・・・なら再不斬も」
「・・・一気に大家族だな」
親の顔も知らないオレに、家族が出来る・・・いや、オレの親はシュロとイカリか・・・
「・・・シュロが、サスケを家族に誘ったってさ
きっと、末の弟だ」
ナルトが真ん中な
そういうと笑った
「ニシシッ
じゃあきっとアイツ、長男のコンの前じゃ大人しくなるってば」
・・・もうお前ら双子で良いんじゃないか
2人でケンカして、イカリが止めに来てくれて、シュロが煽って・・・
2人してオレに愚痴言いに来たり・・・な
「きっとマザコンだろうなぁ・・・」
手を堅く握りしめて・・・瞼を閉じる
この他愛ない会話が現実になればいいのに
今頃、サスケは里抜けを決心しているんだろうか
復讐なんて、どう声をかければいいのか
何をすればいいのか
分からない
でも、いつか帰れる場所になれたらいいな
◆◇◆シュロ◆◇◆
夜
人っ子ひとりいない暗い夜道
門の入り口で、奴が来るのを待つ
・・・来た
「・・・シュロ・・・」
荷物を背負ったサスケ
・・・そうか、やっぱり里抜けか
「こんな深夜の外出は・・・お父さん怒っちゃうぜ?」
別に家族ゴッコでも良いじゃないか
本当の両親じゃなくても、温もりがあれば良いんじゃないか
少しだけ、期待していた時もある
「・・・お前も、サクラと同じで止めに来たか?」
「うんにゃ、復讐したけりゃしに行けよ
・・・別に止めたりしない」
ただ、オレが言いたいことは・・・
「里を抜けたら、”木の葉のうちは一族”は滅亡するぜ
復讐だけに囚われて忘れちまったか?もう一つの夢を」
「それでも・・・オレは行く」
真っ直ぐ眼を見てそう言われたら、どうにもできないような気がした
サスケに向かって歩き出し、身構えた奴を無視して通り過ぎる
「ま、それならそれで良いんだけど・・・
ただ、暁には気をつけろよ」
背中を押して、聞こえたか分からないぐらいの小さな声で呟いた
しばらく歩いて振り向くと、もうあいつはいなかった
「原作介入・・・したかったんじゃないの?」
木の後ろからイカリが出てきた
原作介入か
本当ならここらでしたかったんだけどな
でも
「・・・気持ちを知ったからには、人の意思を尊重するよ」
思い出すのは決意が込められた眼
もう二度と戻っては来ないだろう
ナルトがどう言っても駄目なぐらい、全てが終わるまで、あいつは帰ってこない
「物語のキャラだからって思い通りに行くわけじゃない
・・・やりたいことをやらせてやるのも良いだろ・・・」
見守るのも友情だと、言った奴がいる
ナルト達が止める友情なら、それならオレは見守る
そして、いつの日か・・・
「・・・帰る場所なら、オレ達が作ろう・・・」
あいつが帰りたいと思った時用に、作ろう
「そうか・・・なら、私達でやれることをしよう」
そうだな
ならまずは————書類から攻めるぞ
************************************************
思い出したようで思い出せていない狐っ子
独りじゃないことを気付かせる狐っ子
狐っ子2人の話と
正直木の葉の忍びとしてはダメダメな夫婦な話
ページ上へ戻る