うたた寝
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第一章
第一章
うたた寝
心地よい春の休日。二人は楽しく公園の中を歩いていた。
そこで男の方がだ。女に対して言ってきたのであった。
「ねえ」
「何?」
「少し休まない?」
こう彼女に言ってきたのである。
「ちょっとね」
「休むの」
「ずっと歩いてきたじゃない」
微笑みながら彼女に対して言う。
「今までずっとね」
「そういえばそうね」
言われてそのまま頷く彼女だった。
「それじゃあ何処に」
「ベンチで休む?」
静かにこう提案した彼だった。
「それじゃあ」
「ベンチでなのね」
「うん、少しね」
休むのは少しだけだった。そのつもりだった。
「休もうよ。それからまた歩こう」
「そうね。少しね」
二人は近くにあるベンチに並んで座った。暫く話をしていた。
周りにあるのは緑だけである。人もおらずのどかな日差しの中でぽかぽかとしている。その中で静かにベンチに座っているとであった。
自然にである。うとうととしてしまい。まず男が気付いた。
「おっと」
寝てしまったのに気付いた。それで起きてみるとであった。
女はまだ寝ていた。彼にもたれかかってそのまま寝てしまっていた。眠りは深くそれを見た彼は起こそうとも思ったが止めたのであった。
「いいかな」
微笑んでまた目を閉じた。そのまま再び眠りに入る彼だった。
起きた時はもう夕方だった。気付けば世界は赤くなっていた。
女はその赤い世界に気付いてだ。困った様に言った。
「随分長く寝たみたいね」
「そうだね」
男は女の言葉に微笑んで返した。
「どうやらね」
「お昼だったのに」
しかし気付けばであった。夕方だったのである。
赤い世界の中でだ。また話すのだった。
「気付いたら夜なんて」
「僕もだよ」
彼は少しだけ嘘をついた。
「ずっと寝てたよ」
「そうだったの」
「気付いたらこんな時間になってるなんてね」
その少しだけの嘘をさらに続けていく。
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