美しき異形達
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第三十二話 伊勢神宮その九
「何かね」
「天照大神がか」
「ええ、そう思えない?」
「言われてみればそうだな」
「そうでしょ、日本の神様って気前よくない?」
向日葵はにこりとした顔で薊、そして他の面々にも話していく。
「こうしたもの与えてくれるって」
「言われてみればな、海老にとろろにな」
「海に山にね」
「それにね」
さらに加えてだった。
「おうどんもね」
「そうだよ、伊勢うどん忘れたらいけないな」
「おうどんもあるからね」
それで、というのだ。
「物凄く贅沢よ、お伊勢さんは」
「また来たくなる位にな、ただ」
「ただ?」
「いや、最初の鯉も凄かったな」
ここに来た時に見た彼等の話もするのだった。
「どの鯉も一メートル位あってな」
「うん、しかも奇麗でね」
「いきなりあの鯉にも驚いたよ」
「あとね」
ここでだ、裕香が言って来た。
「社の中の鶏だけれど」
「ああ、あの子達ね」
向日葵がすぐにだ、裕香に応えた。
「あの娘達は放し飼いにされている」
「神様の使いみたいなものなの?」
「そうしたものなのよ」
「そうなのね、あの子達も毛並がよかったわね」
「伊勢神宮にいるだけにね」
そうだというのだ、日本で随一の社にいるだけはあるというのだ。
「毛並みがいいのよ」
「あれだけなのね」
「正しく言うと羽毛だけれどね」
「白くてね」
「普通の鶏じゃなかったわね」
そうした感じだとも言う裕香だった、そうした話もしつつ赤福餅も食べた一行だった。その話が終わったところでだった。
最後の赤福餅も食べ終えた、ここで薊は満面の笑みで言った。
「いやあ、食った食った」
「満腹したわね」
「ああ、完全にな」
菊にも笑顔で応える。
「もうこれでいいよ」
「食べることはね」
「観るものも観たしさ」
「じゃあこれからどうするの?」
「社は観たけれど他の場所を観るのもいいんじゃね?」
薊は菊にこう返した。
「そうしないか?」
「おかげ横丁の中とか」
「ああ、その周りとかさ」
「そうね、それもいいわね」
「じゃあさ、歩いて回ろうな」
「お土産を買いたいですね」
桜はここでこうしたことを言った。
「家族に」
「そうそう、折角伊勢に来たからね」
菫も桜の言葉に応えて言う。
「白浜でも買ったし」
「ああ、買ったな」
薊も言われてこのことを思い出した。
「寮の方に、それに院長さんにな」
「横須賀に送ったわね」
そうしたとだ、菖蒲も応える。
「薊さんは」
「そうしたよ、さもないとな」
「最低限のことだから」
「駄目だからさ、人として」
恩ある人に時としてものを贈ることはというのだ。
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