普通だった少年の憑依&転移転生物語
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ゼロ魔編
038 〝赤〟と〝白〟って普通は目出度いはず… その1
前書き
4連続投稿です。
1/4
いつもながらの超展開です。
SIDE 平賀 才人
マチルダさんとの話し合いの末、ティファニアに会いに行くのは夏期休講に入ってからになった。……とは云っても夏期休講は直ぐそこに迫っている(?)ので、そう時間が空く事でも無いだろう。
――<プルプルプルプルプルプルプルプル>
そんなある日の、いざ眠らんとしようとした夜の事。自室に備え付けておいた〝電伝虫〟──を模した〝魔獣〟がなんだか気の抜けそうな声(?)を上げた。
「はい、こちらサイト」
『こんな夜遅くに済まないね。僕だ、ウェールズだ』
電話をとってみればウェールズだった。……〝より〟平淡な声音からはあまり判らないが、心無しか憔悴している様にも思える。
「……ウェールズ?」
『サイト、君に頼みたい事がある!』
ウェールズの嘆願に、ハルケギニアに来てから随分と鍛えられた第六感が、けたたましいほどの警報を上げているの承知でウェールズに訊ねる。
「何があった、ウェールズ。取り敢えずは落ち着け。話はそれからだ」
『済まない。少々取り乱していたようだ。サイトのお陰で多少は落ち着いたよ』
「そいつは重畳。……で? 要件は?」
「要件はだね──」
その後ウェールズから語られた言葉は、ドライグと云う強大なドラゴンを宿している事を──俺が≪赤龍帝≫である事を、改めて確信した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「……ウェールズ、最後の確認だ。相手は間違いなく≪白龍皇≫と名乗ったんだな?」
いつぞやと同様にスキル──“腑罪証明”を〝虚無〟と偽り、アルビオンの、ニューカッスル城のウェールズが居る執務室へと転移した。
因みにウェールズを驚かせまいと、ちゃんとウェールズには許可を貰っている。
閑話休題。
「ああ。〝ヤツ〟はいきなり現れて領地の1つを制圧するなり〝一番強い奴──ヒラガ・サイトとやらにに会わせろ〟と聞かなくてね。……サイトは〝ヤツ〟と知り合いかい?」
「……知り合いじゃない──が、一応〝宿敵〟になるのか?」
「〝かな?〟って…僕に訊かれても困るよ」
ウェールズの言う事は尤もだ。だが正味な話、〝それ〟考えた事が無いと言えば嘘になる。
俺はリアス・グレモリーにもソーナ・シトリーにも──誰にも助けられなかった兵藤 一誠の死体から“赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)”を、堕天使レイナーレに殺された彼を蘇生させる代わりに抜いた。……ならばライバルの≪赤龍帝≫を永劫に失した≪白龍皇≫──“白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)”を持つ、【ハイスクールD×D】の原作に於いてのヴァーリ・ルシファーはどうなったのかと──〝それ〟を考えた事が無いと言えば嘘になる。
(……帳尻合わせか)
どうやら〝世界〟とやらは安定を求めるらしく、無理矢理≪赤龍帝≫となった事に対する代価を払う時が来たらしい。……かと言って、そう無駄に気張り過ぎる必要性も無い。俺を呼んだ云う事は意志の疎通が出来る可能性が高いという事だ。……一応、気張るには気張るが…。
(出来る事やって来たんだ。出来ない事は無いはず。……ん?)
ハルケギニアには──【ゼロの使い魔】の世界には居ないはずの人物の襲来。〝こう云う時〟の為にも色々と研鑽してきた。……不思議と気分が高揚している事にも気がついた。いつの間にやら発動していた“咸卦法”が俺を鼓舞する。
「時にウェールズ。〝やつ〟は──≪白龍皇≫は自分の名を名乗っていたか?」
【ハイスクールD×D】の〝原作〟におけるヴァーリ・ルシファーでとは違う可能性があることを視野に入れながらも、ウェールズへと訊ねる。……とは云っても違うなら違うで構わないが。
どちらにしろ、ミネルヴァさんの様な上位存在が一枚噛んでいる可能性も高いだろう。
「あぁ、確か彼はヴァーリと名乗っていたよ」
(成る程……ね)
ウェールズから〝彼〟が待っている場所を聞いてその場所に向かう事にした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「待たせたかな」
「いや、そこまで待ってないさ」
会話文だけ切り抜けば、まるで会瀬の待ち合わせしていた男女のやり取りで、場合が場合なら待っていた方がナンパなり逆ナンされていたりするのだが、周囲に人間は──生物すらも居ない。〝彼〟は常人なら避けてしまう程の覇気を纏っているのだから、それはまぁ当たり前か。
「……アルビオンの王子──この国の王子、ウェールズから聞いたよ。君の名前はヴァーリで間違い無いか? ……≪白龍皇≫」
「やっぱりこの国の名前には、某かの因縁を感じる事を禁じ得ないよ。……ああ、確かに俺の名前はヴァーリだ。……≪赤龍帝≫」
<無視か? 〝白いの〟>
<起きていたか〝赤いの〟。……それにしても随分と敵意を感じないぞ>
<相棒が歴代所有者達を消したからな。それも相俟っているのだろう。……それにそう言うお前からも全然敵意を感じないぞ、アルビオンよ>
≪赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)≫ドライグと≪白い龍(バニシング・ドラゴン)≫アルビオンの──二天龍同士の会話が交わされる。
「ちょうど1年前だったかな? 元の世界でコカビエルという堕天使を運んでいると、急に目の前が真っ暗になってね。〝神〟を名乗る者の導きでこの世界に来たんだ」
ヴァーリは端正な顔を歪め、話を続ける。
「この世界の人間の、吹けば飛ぶ様な弱さには唖然としたよ。……元の世界に戻る方法も判らなかったし、そろそろ自害しようと思っていた頃、またもや現れた〝神〟とやらから平賀 才人──君の話を聞いた」
(……っ!)
ヴァーリから濃密な魔力の波動を叩きつけられる。殺気では無い。……が、ただの波動でも指向性を持たせて密度を上げたそれは、最早殺気に近しいものになると身を以て学習した。
「……へぇ、これを受け流すか。少なくとも動けなくなると思ったんだが。どうやら赤龍帝だけあって、中々の強者の様だ」
(ドライグとの特訓が無かったら、呑まれてたな。確実に)
内心、特訓を付けてくれたドライグに感謝している俺をよそに、ギィ、と先程とは違う風に顔を歪めるヴァーリ。
「……そいつは重畳。……でだ、お前は一体何がしたいんだ? ヴァーリ」
「俺は強い奴と闘いたい。……無論、そのカテゴリーに君も入っているよ。平賀 才人」
(……ですよねー)
ヴァーリからひしひしと感じられる〝闘る気〟に自分も呼応していて、いかに歴代所有者の怨念を消そうが、自分も≪赤龍帝≫である事を認識した。
「ふっ…どうやら君もやる気になったようだね。……それにしても君も人が悪い。こんな凄い覇気を隠しているなんてね。……いくぞっ!」
「っ!?」
魔法力と氣を合成させ咸卦の氣を練っていると、ヴァーリは“白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)”を展開して猛スピード突っ込んで来た。
(速いな。……だが〝読める〟ぞ)
ヴァーリの次の動きを〝見聞色〟で察知し、サブの思考にてそんな事をボヤきつつも、俺の顔を目掛けて拳を振りかぶり突っ込んで来るヴァーリにさも慌てず、右足を半歩より気持ち大きめに後ろへと退げ、ヴァーリの腹部が来るであろう箇所に左手をまるでつっかえ棒の様にして置く。
「かはっ……!」
「“退歩掌破”」
“退歩掌破”。歴代所有者の1人が使っていた技で、足を後ろに退げ、手を相手に対して向ける。……先にも軽く触れた通り、要は突っ込んで来た相手に対して自分をつっかえ棒にする──早い話が、相手の力を利用するタイプのカウンター技である。
そのカウンター技を喰らったヴァーリは身体を[く]の字に曲げながら、後方──ヴァーリからして後方へと吹っ飛んだ。
「はぁ…はぁ…、カウンター技か。……どうやら俺は、まだ君の事を侮っていたらしい。……だが、“赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)”も出さず迂闊に白龍皇──俺に触れたのは失敗だったな」
『Divide!』
≪白龍皇≫の〝半減〟の力。俺の力が半減され、その半減された力の半分がヴァーリに行く。
「……平賀 才人、何をした?」
……はずだった──はずだったはずだ。少なくともヴァーリからしたら。
<ヴァーリ、奴は有ろう事か相反発するはずの、精神エネルギーと生命エネルギーを合成している。どちらか単一だけの〝半減〟では無駄だぞ>
「Exactly(その通りにございます). ……まさか初見で見抜かれるとはな。さすがドライグのライバルと称賛すればいいのか?」
<言っていろ。だが、その不可思議の技も俺が解析した。……ヴァーリ、次からは普通に〝半減〟出来るはずだ>
「おっと、そうは問屋が卸さないぞ」
「(ドライグ、〝バージョン2〟だ)」
<(応ッ)>
俺は〝半減〟されてしまう前に“咸卦法”を解除し、今のうちに“赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)”を〝バージョン2〟で顕現させ、〝倉庫〟からデルフリンガーを引き抜く。
<……ドライグ、随分と様変わりしたな>
<下手な同情はいらん。今に見ていろアルビオン! 相棒は今までの所有者とは一味違うぞ!>
「……天龍同士の会話も終わったようだな。それに君も少しはやる気になったようだな」
「ああ、行くぞ! ヴァーリ!」
ドライグの宣言で〝赤〟と〝白〟の、因縁の闘いの第二幕が下ろされた。
SIDE END
後書き
明日もう一話投稿します。
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