Gフォース~正義の行方~
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最終回:戦いは終わらない
数日後
フォードは、ワシントンのアーリントン墓地にいた。
軍服を着て、とある人物の墓の前にいた。
季節は冬で、周囲に雪がたちこめていた。
墓の前には名前が書いてあった。
『ジョアンナ・アイアンズ軍曹』
1974年生、2008年没
ジョアンナの尊い犠牲のおかげで、世界は救われた。
クラウンが暴走させた人工衛星から放たれた6つの核ミサイルは発射されることはなかった。
だが、モナーク上層部はGフォースとフォードに賠償金として1億ドル近くの賠償金を支払うと約束してまた、今回の事件の感謝料としてさらに3億ドルの小切手がもらえることとなった。
兄のサムとフィルは大喜びでこれを受けた。
その条件としてはアイアンズ軍曹の存在を公表しないこと。
どうやら、責任を殺されたシンクレア一人に強引に押し付けることでモナークは生き延びることを選んだようだ。
フォードはふと思った。
ガイガンは悪魔だった、敵だった。
だが、彼のやってきたことは結局無意味だった。
それだけじゃない、ジョアンナの尊い死を公表できないことにも悲しみを覚えた。
人工衛星をとめたのはフォードの功績にされた、マスコミ各社は彼を「暴走した帰還兵」から「濡れ衣を着せられた哀れな英雄」に、さらには「世界を救った真実のヒーロー」として神輿に挙げた。
だが、フォードは納得がいかなかった。
フォードの足元には新聞があった。
『真実の英雄、フォード・ブロディ!また世界を救う!』
世界を救ったのは自分ではないとフォードはわかっていた。
それどころか、フォードは自分が兵士として軍人としてもっともやってはいけないことをやろうとしていた。
それは敵を殺さなかった事、自分の私情を任務より優先させたことだった。
フォードは胸ポケットの中にいる小さな相棒に話しかけた。
「ヒオ。俺なんかよりも彼女の方が正しかったと思うんだ。彼女のいう事に従っておくべきだった。俺は英雄なんかじゃない。軍人失格の愚か者だ。」
「でも、結局アンタ彼女のいう事に従ったんだよね?正しい選択だよ?充分。」
「俺は英雄なんかじゃない。」
フォードは思っていた。
彼は世界を救ったことなど一度もなかった。
ロサンゼルスの時はゴジラが、ゴジラ討伐の時は兄のサムが、そして今回はジョアンナが世界を救った。
フォードはいつも、傍観者だった。
彼はそう思っていた。
だからこそ昇進の話がきても首を横に振った。
自分なんかよりも活躍してる人は世界中にいるからだ。
「俺はいつも助けられてばかりだ、弱い男なんだよ。」
フォードは俯きながらそう言った。
すると、奥にいた妻のエルが近づいてきた。
彼女は喪服を着ていた。
夫を救った恩人であり、初恋の女性。
彼女は、一度墓に行ってみようと思っていたからだ。
「助けられてばかりいるのは、あたしたちの方よ?」
エルはそう微笑みながら告げた。
フォードの胸ポケットにいたヒオも賛同するかのように告げた。
「アンタが怪獣を倒して、あたしたちがそのサポートをする。彼女はアンタのサポートをしたんだって。」
エルはヒオに微笑みを向けると、フォードに近寄ってほほをやさしくふれた。
まるで、ジョアンナが別れ際にしたことと同じように。
「それに、あなたが任務ばかりしか優先しない冷酷なマシーンだったらあたしもその人もあなたのこと好きにならないと思うわ。」
エルは同じ男を愛した女としてジョアンナの気持ちがわかるような気がした。
詰めが甘く、どうしようもなく感情的で、しかし優しく強く何よりもハンサムな夫。
英雄ではなく、18歳から何も成長してない朴念仁。
そんなフォードを愛していた。
ジョアンナもそんなフォードに惚れていたんだろうと。
「きっと、あなたのことを誇りに思ってるわ。彼女。私みたいに。」
エルはフォードの肩に腕を絡ませると夫の唇に唇を重ね合わせた。
そして、熱い舌を絡ませあい互いの唾液と吐息を混ぜ合わせた。
フォードはしばらく、妻のさせるがままにしていたがしだいに彼女を抱き寄せた。
さらに認識した。
俺はこの女を愛している、この女を守りたいんだと。
「ありがとう。」
フォードは感謝の言葉をのべた。
そんな時だった。
フォードのケータイのアラームが鳴り響いた。
着信先はゴードンだった。
ゴードンからの着信が来るときは理由は一つ、Gフォースの出番ということだ。
「出番だな、ごめんエル。先に家に帰っていて!」
フォードは走りながらエルに手を振り別れを告げた。
エルはそんな愛する男を見送りながら、ふとジョアンナの墓を見た。
彼女の墓標には認識票が下がっていた。
そして、エルは同じ男を愛した女に黙とうをささげると去って行った。
日本、大阪。
東京がゴジラによって壊滅された後、この街が日本の首都となっていた。
そして、大阪の天王寺。
ここには日本最大級の建築物があった。
名前を阿部野ハルカス。
だが、そんな阿部野ハルカスは崩れ、足元にあった天王寺のブリッヂはその瓦礫に埋もれていた。
ギシャアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!!!
崩れたハルカスの中心地には巨大な機械でできた銀色のドリルの鼻を持ったロボット怪獣がいた。
ロボット怪獣は恐竜を思わせるからだと、モグラのような顔をしていた。
怪獣の名前はモゲラ。
身長150m 体重は20万トンあった。
「愚かな、人類どもよ!俺様はミステリアン様だ!フハハハハ!!!」
モゲラの主人はご丁寧にもスピーカーを使って演説をした。
ミステリアンは仮面に身を包んだ男だった。
だが、人々は怯えながら、ビルの陰から怪獣を見ていた。
その中には背中に龍の入れ墨をしたヤクザもいた。
ホームレスや小学生もいた。
その場にいただれもが死を恐怖した。
殺戮者は高笑いをあげながら、その様子を楽しんでいた。
そんな時だった。
空から銀色の、周囲の光を反射する巨大なロボット怪獣が降り立ってきた。
片腕を地面に叩きつけ、着陸するとそれは敵に腕を構えた。
すると、その場にいた多くの人々が歓声をあげそれを迎えた。
一際、大声をあげたのは小学生の男子だった。
彼はヒーローの襲来を喜んだ。
「メカニコング!」
メカニコングの中にいたフォードはふと、微笑んだ。
彼が兵士となった理由。
それは目の前にいる人々を守るため、この世界の人の生活をよくするため。
そして、二度と母親のように理不尽な死を迎えさせないためだ。
彼は心の奥底から微笑んだ。
自分には生きる道がこれしかない。
ジョアンナにできることは、彼女に教わったすべてを使い世界を守る事だ。
シンクレアの大きな正義も、ガイガンの正義もフォードにはわからなかった。
だが、フォードにはそれだけしか今のところ正義としかいえなかった。
「野郎、何者だ!」
フォードは呆れてため息をついた。
頭は悪そうだ。
フォードはヒオをみつめた。
この小さい相棒がいれば、どんな敵でも怖くない。
「君がいれば怖いものはないな。」
「でしょ!」
フォードはさらに微笑んだ。
こういうやつが相手ならとる手段も楽でいい、何よりもあとくされがない。
フォードは思わず言葉を漏らした。
「じゃあ、やるしかないな。」
「やるって何を?」
「俺なりの正義ってもんだ!」
「つまり?」
「世界を守るってこと!」
フォードはメカニコングの操縦に戻った。
メカニコングはゴリラのようにナックルウォークをしながら街中を走った。
それに対抗するためにモゲラは低空飛行をしながら鼻についたドリルを輝かせながら突撃をしてきた。
フォードはそれをみると、上空に飛び上がった。
ミステリアンとモゲラはメカニコングのジャンプ力に驚き、思わず後退した。
「ば、バカな!そんな馬鹿な!こんな事きいてないぞ!」
モゲラの中にいたミステリアンは悲鳴をあげた。
空中高く、300m先にジャンプしたメカニコングは修復した左腕を構えると、9千万ボルトの電流の通った拳を振り上げた。
フォードは決意した。
ジョアンナが例え、死んだ彼女が守った世界を、彼のやり方で世界を守り抜こうと。
例え、どんな物が相手でも。
人間であってもゴジラであっても怪獣であっても。
彼は戦いぬくことにした。
そのフォードの決意を表すかのように、空中高く飛び上がったメカニコングの拳は振り落とされた。
(完)
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