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バニーガール

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第五章


第五章

「どういうって」
「不潔よ、不潔」
 今時珍しい言葉を出す真理奈であった。
「どういうつもりなのよ」
「そういう高橋さんだって」
 売り言葉に買い言葉の調子で高谷君も言い返す。
「どうしてそんな格好しているんだよ」
「それはその」
「僕はただ付き合いだったのに」
「えっ!?」
「そうだよ」
 それまで黙っていた相手の男が高谷君の言葉で少し言葉を止めた真理奈に対して言ってきた。
「俺が無理にって連れて来たんだよ」
「そうだったの」
「そうだよ」
 高谷君は憮然として真理奈に答えた。
「メイド喫茶みたいなものだからって言われて来たんだよ」
「そんな・・・・・・」
「こいつそういうのには真面目でね」
 相手の男はここでも苦笑いを浮かべて真理奈に言う。
「本当は嫌いなんだけれど俺が無理にって連れて来たんだよ」
「それを早く言ってくれれば」
「その前に問い詰めてきたのはそっちじゃないか」
 高谷君はそのいい形の唇を尖らせて言うのだった。
「全く。困るよ」
「御免なさい」
「それより高橋さん」
 形勢は完全に真理奈にとって不利になっていた。高谷君は目を少し怒らせて彼女に問うてきたのだ。
「聞きたいことがあるんだけれど」
「ええ」
「どうしてここにいるの?」
 聞きたいことはやはりそれであった。
「どうして?何でなの」
「それは・・・・・・」
 まさかここで言える筈がなかった。他ならぬ高谷君の為だからだ。真理奈はその高谷君を前にしておろおろとするばかりであった。
「言えないの?」
「それはその」
 視線も泳ぐばかりだ。どうしていいかわからない。そうしてただ戸惑ってばかりいるところに和歌子がやって来た。そうして真理奈と高谷君の間に入るのであった。
「はい、そこまで」
「和歌子」
「君も確か」
「御主人様、そうしたサービスはこの店にはありませんよ」
 にこりと笑ってこう言うのであった。
「サービスって」
「御主人様は御主人様です」
 その言葉で今にも動こうとしていた店の人達を止めてみせたのである。
「ですからクラスメイトとかそうしたことはセーラー喫茶に行って下さいね」
「セーラー喫茶って」
「そういう店もあるんだよ」
 高谷君の連れであるその相手の男がここで言う。どうやら彼はそうした店もチェック済みであるらしい。
「そこじゃこんなサービスもあるんだよ」
「そうだったのか」
 これまた高谷君の知らない世界であった。さらに驚くばかりであった。
「そんなのまで」
「おわかりになられましたか、御主人様」
 その連れの男の援護射撃を受けて和歌子はまた高谷君に言ってきた。
「ここは御主人様として。寛大に御願いします」
「わかったよ」
 高谷君も分別はある。ここで騒ぐのはよくないと冷静になってわかったのだ。そうして今は。和歌子のその言葉に従うことにしたのであった。
「それじゃあ」
「コーヒーおかわりは如何ですか、御主人様」
 和歌子はさらにその場を取り繕う為に高谷君達に言ってきた。それまで無意識のうちに立ち上がって真理奈を問い詰めていた高谷君も何とか気を鎮めて座っていた。
「それじゃあもう一杯」
「僕はいいよ」
 連れの男はその申し出を受けたが高谷君は断った。
「これでね」
「何だよ、気分を悪くしたか?」
「まあね」
 それは否定しなかった。
「どうにもこうにも」
「そうか。なら仕方がないな」
 彼も高谷君のその言葉を聞いて納得するのだった。
「じゃあそれでいいさ」
「悪いな」
「いや、悪いのは俺さ」
 ここで相手の彼は自分が悪いと言うのだった。
 
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