東方喪戦苦【狂】
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二十七話 狂気と変化
「なるほどな…そりゃエイジスがオーダーの情報を掴めねぇ訳だぜ…」
「まさか身内に、ましてや…支部長が裏切り者とはな~」
「…」
裕海は、黙ってこそいるが全く何動じない。
「しかし…神那は、気づいていたようだな。」
「…彼女は…優秀だったからな。」
狂夜は紅い瞳で裕海を睨む。
裕海は臆することなく淡々と語る。
「…新月家は、何かとこの幻想郷の真理に迫ろうとしてくる。」
「………」
「神那、継璃、狂夜。その先祖に至るまで関わってきた。」
「…だから神那を殺したのか?」
裕海は、フフッと嘲笑したように言った。
「いや?君をおびき寄せる為のただの材料だけど?」
狂夜は本気で歯を噛み締める。
そして重力を最大まで上げた。
周りの木々が押し潰される。
上げた倍率は、100000000000倍。
深い断層ができる加減だ。
「悪ィがお前の話を聞く気は、もうとう無い。」
狂夜は空中に立って下を見る。
何故か能力を解除していないのに重力が元に戻る。
「そうかい。それは、残念だ。」
裕海は平然と地面に立っていた。
「なっ…」
「さて、じゃあもう話はいいか。」
裕海は飛び上がり、空中で狂夜に深く蹴りを入れる。
「がッ!?」
狂夜の身体は自由を失い、地面に落とされる。
「…」
裕海はゆっくり地面に着地した。
舞い上がった砂煙から狂夜が神速とも言える速さで裕海に突っ込む。
常人から見たら速すぎて見えないほどの攻撃を裕海は全て紙一重で避ける。
「ちぃッ!!」
狂夜は一歩下がり、ポケットからエクスカリバーの模造品『ブレイカーブレード』を出す。
「ッラァッ!!」
狂夜は、ブレイカーブレードを裕海に向かって振り上げた。
裕海は、跳躍して避けた。
「かかった!!」
空中に逃げた裕海を何者かが狙撃した。
「…ッ」
裕海を狙撃したのは、地上に置かれていた固定砲台と空中で留まって狙撃をする人形だった。
裕海は、飛んでくる弾を空中で回避する。
「めんどくさいな…」
裕海は先程の狂夜の速さをものともしないような神速で周りの固定砲台を全て分解した。
そして空中の人形も全て一つの空間に閉じ込められた。
「…もう…いい。」
裕海が狂夜に気づいた時既に狂夜の『溜め』は、終わっていた。
『神空の覇者』制空権を操る魔法
『炎皇の神柱』灼熱の柱を建てる魔法
『死神の警告』必ず殺す魔法
『魂の束縛』永遠に縛り付ける魔法
『黄泉の巡回』来世生まれてこない魔法
全ての魔法が裕海目掛けてとんでいく。
裕海は、「ふぅ…」と息を吐いて言った。
『変化、魔法を全て消滅』
裕海を襲うはずの魔法は、全て形なく消えていった。
「何で…」
狂夜は、目の前の光景に呆然とする。
「何故?魔法なんて簡単に消せるんだよ。」
裕海は、そう言って落ちていた先の尖った木の棒を広いあげる。
「ほら。止めてみなよ。」
裕海は木を鉱石に変化させて狂夜に向かって飛ばす。
狂夜に向かって放たれたそれは、物凄い速さで狂夜の片眼をかすめとって行った。
「うっ…」
狂夜は片眼を抑えて唸る。
裕海は、素早く襲ってくる。
狂夜は素早くブレイカーブレードを盾にして攻撃を避けようとした。
しかし裕海の一撃は、ブレイカーブレードを容易く砕いてしまった。
「!」
もう一度裕海は、技を繰り出そうとする。
狂夜はポケットから代わりの武器になるものを探す。
裕海が攻撃を放った。
狂夜がもう駄目だと思った時一つ刀を握っていた。
狂夜は、その刀の鞘を抜き、その刀で裕海に攻撃した。
その刀は、いとも容易く裕海を斬った。
「…!」
その刀の名前は、『狂乱月』。
しかしそれは、刃ではなく牙を剥きだしていた。
狂乱月は、狂夜に対して素顔を見せたのだった。
『Gjuruuuu…』
獰猛な歯軋りが刀から聞こえる。
まるで狂ったような刀だった。
狂夜は、まるでその刀が見たことがあるかのようだった。
するとその刀を見て何を思ったのかクッと笑った。
「…なるほどね…お前も持ってたのか…その刀…」
「…」
狂夜は、一つおかしいことに気づく。
先程まで何も持って居なかった裕海の手に刀が握られていた。
「俺も持っているよ。お前と同じ専用の刀。『変形葉』」
裕海が変形葉の鞘を抜くと刀がいろいろな変化を始める。
鉄から炎、炎から氷、氷から草、草から雷…と。
狂夜の『狂乱月』と裕海の『変化葉』は、お互いに共鳴しているようだった。
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