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女は皆そうする!?

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第五章


第五章

「あのさ、女は皆そうするだよね」
「そう」
 その話をするのである。
「それがわかるから」
「そうなんだ」
「最後まで観ればわかるから」
 言いながらこのオペラを観るように話す。
「それじゃあね」
「うん、じゃあ」
 こうして観ながらであった。じっと観ていく。そうして話が進むとであった。
「あれっ!?」
 思わず声をあげた政行だった。
「これって」
「ヒロインは裏切らない」
「そうだね、強かだし芯は強いし」
 しかもである。
「何かヒロイン側はどっちも。それに」
「男側はどう?」
「伯爵って」
 このオペラでかなり重要な人物である。アルマヴィーヴァ伯であるが浮気者であり尚且つかなり諦めの悪い人物なのである。それでいて気品もあり堂々としている。モーツァルトの作品特有であるがキャラクターが非常に魅力的であり光を与えられているのである。
「何か凄い浮気者だし」
「主人公のフィガロも迷う」
「そうだね」
 主人公も自暴自棄になってそうした行動を取るのである。
「何か見ていたら」
「そう。女の子は動かない」
「心はだよね」
「それで」
「ああ」
 話を観ていくとだった。最後にはだ。
 ハッピーエンドであった。女が主導した大団円なのだった。
 そこまで観て政行は。静かにこう言った。
「ええと、これも」
「そう」
 そして恵子も言ってきた。
「これも女なの」
「そうなんだ。同じ作曲家の作品でこんなに違うんだ」
「あれも女これも女」
 恵子の言葉は続く。
「一つの作品だけじゃ言えない」
「そうみたいだね。本当にね」
「他の作品もある」
 そして恵子はさらに彼に言ってきたのであった。
「後宮からの逃走。それはどうするの?」
「どうって」
「時間ある?」
 それも問うのを忘れない恵子だった。
「あったら」
「ええと、まあうちの門限ってね」
 政行はそれを言われて頭の中でそれをチェックしながら答えた。
「終電までなんだけれど」
「じゃあいける?」
「ええと、どうしようかな」
「わかったらいいけれど」
 譲歩めいた言葉も出して来た。
「それで」
「ええと、それじゃあ」
「他のことでも確かめられるし」
 迷いを見せた政行に対して。攻撃を仕掛けた。
「他のことでも」
「他のことって?」
「今、二人きり」
 これまで以上にぽつりと言った恵子だった。
「お家の中に二人きり」
「ってことは」
「シャワーもあるから」
 語ると頬が赤くなってきていた。
「だから」
「つまりは」
「これ以上言わせないで」
 今度は顔が真っ赤になっていた。まるで林檎の様である。
「恥ずかしいから」
「じゃあ今からだよね」
「うん」
 その真っ赤になったままの顔で答える恵子だった。
 
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