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女は皆そうする!?

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第一章


第一章

                   女は皆そうする!?
 コシ=ファン=トゥッテ。モーツァルトの有名なオペラだ。
 これを高校の芸術鑑賞で見た。流石に日本語だがそれでもかなり高尚なことではあった。
「うちの学校ってそんなに金あるのか?」
「こんなの平気でやれるんだからあるんだろ?」
 観客席の生徒達の中からこんな声が聞こえてくる。彼等は今市のホールの中にいてそこで舞台を見ているのである。舞台では歌手達が歌っている。
「まあ歌ってる人達はな」
「大学の人達だよな」
「ああ、うちのな」
 この学校はエスカレート式で高校の上に大学がある。なお幼稚園や大学院まである。
「そこの歌劇部の人達だよ」
「その人達の歌か」
 その通りであった。
「それでモーツァルトか。ええと、コシガアッテウマイ?」
「コシ=ファン=トゥッテな」
 言葉が訂正された。
「何でも女は皆そうするって意味らしいぞ」
「で、ああして婚約者がいなくなったら何だかんだで相手を乗り換えるのか」
「そうらしいな」
「で、女は皆そうするか」
 男達はそれを聞いて言うのであった。
「成程な」
「こんなものなんだな」
「女は魔物なんだな」
 実によく言われる言葉もここで出て来た。
「そういうことか」
「そうなると」
 こんな話をしているうちにだ。自然に自分達のことにも思いを馳せるのであった。
「まさか俺のも」
「俺のも」
「だよな」
 こう話していくのであった。オペラを観ながら。
「そうなるとな」
「油断したら危険だよな」
「そうだな」
 そんな話をしていたのだった。そうしてである。その中に一人いた。彼の名は伊藤政行という。
 おっとりとした顔をしており目元が特に優しい感じである。一重であるが目の光が優しいのだ。そして黒い髪をやや長くしており黒い眉はそれぞれ少し上に向いている。何処か中性的な顔をしていてそれもかなり印象的である。そんな彼も今オペラを観ているのだった。
「うわあ、何ていうか」
 そのオペラを観ながら言う彼であった。
「これって凄い話だよね」
「有り得ないって」
「なあ」
 周りではこんな声もあった。
「っていうか展開早過ぎだろ」
「一日でこうなるか?」
「このヒロイン二人どれだけ流され易いんだよ」
 こうは言うしかしであった。こんな風にも言うのは彼等も同じだった。
「何かよ、こうしたことってな」
「やっぱりあるよな」
「だよな、これって」
「なあ」
 そんな話をするのであった。そして政行もである。それは同じ考えであった。
「俺もまずいかな」
「っていうか伊藤よ」
「御前の彼女ってあれだったよな」
「ああ、あれだよ」
 言いながら後ろに方をちらりと見る。そこには黒い髪を肩の長さにしていてクールな目をした小柄な女の子がいる。席から見えなくなりそうな程小さい。しかも童顔である。
「あの娘だけれどよ」
「清浦恵子ちゃんなあ」
「御前も趣味変わってるよな」
「変わってるって?」
 周りからそう言われた政行はまずはその中性的な顔を顰めさせたのだった。
「そうかな」
「ああ、変わってる」
「断言できるよ」
「なあ」
 周りは言うのであった。
 
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