美しき異形達
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第三十二話 伊勢神宮その五
「あのべたつきはな」
「厄介よね」
「だからその分さ」
淡水はというのだ。
「これってプールもだけれど」
「後が楽ね」
「それがいいんだよ、じゃあな」
「ええ滋賀ではね」
「また泳ぐか」
薊は滋賀に行った時のことをもう笑顔で話していた、そして。
その中でだ、一向は神楽殿にも行き他にも回って行った、その後でだった。
裕香がだ、社を出てから皆に笑顔でこう言った。
「じゃあお参りも終わったからね」
「いよいよなのね」
「うん、赤福餅にね」
向日葵に応えてだ、裕香はまずこれを出した。
「それでね」
「伊勢うどんもよね」
「食べよう、伊勢うどんってここの名物だけれど」
「真っ黒なのよ、おつゆが」
向日葵が裕香に話す。
「関東のおうどんよりもね」
「関東のおうどんよりも」
「薊ちゃんが詳しいと思うけれど」
関東のうどんについてはだ、向日葵は薊に顔を向けて彼女に話を振った。
「そうよね」
「ああ、前にも話したと思うけれどさ」
「関東のおうどんは真っ黒なのね」
「墨汁みたいだぜ」
関西のうどんのつゆと比べるとだ、関東のつゆはというのだ。
「それこそ」
「そうなのね」
「それで実際に味も辛いんだよ」
つゆのそれもというのだ。
「それが特徴なんだよ」
「お蕎麦もよね」
「そうそう、そっちもだよ」
「それでなのよ」
向日葵は薊の後でまた言った。
「伊勢うどんはね」
「その関東のおうどんよりもなのね」
「おつゆが黒くてしかも量が少ないの」
「量もなの」
「そうなの、少ないの」
このこともだ、裕香に話すのだった。
「そして唐辛子を思いきりかけて食べるの」
「それが伊勢うどんなのね」
「それでも案外辛くないのよ」
これが、というのだ。
「だからね」
「安心して食べていいのね」
「食べられないものは出ないわよ」
向日葵はにこりと笑ってこの現実も話した。
「だからこのことも安心してね」
「それじゃあ伊勢うどんも」
「楽しもうね」
こう話してだった、内宮前のおかげ横丁に七人全員で入った。そこで向日葵はにこにことしてこんなことも言った。
「伊勢うどんも欠かせないけれど」
「他にも美味しいものあるのね」
「漁師汁にね」
菊に最初にこの料理を紹介する。
「それにね」
「それになのね」
「そう、穴子と麦とろろも食べよう」
これもというのだ。
「伊勢は海の幸と山の幸の両方があるのよ」
「山海の珍味ってやつね」
「そう、まさにそれだから」
「どれも食べるのね」
「そうしようね」
「何か向日葵さんお伊勢さんに随分と」
桜はにこにことして話す向日葵を見て述べた。
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