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【完結】剣製の魔法少女戦記

作者:炎の剣製
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第六章 正義の在り処編
  第百九十三話  『武だけを鍛えた男。そして暗殺者』

 
前書き
更新します。

設定も含めて全話で総合200話目を達成しました。

そして今回は以前に登場したある人物を出します。

では、どうぞー。 

 
シホがいないために臨時でセイバーズ隊に入れられたヴィータと士郎にキャスター、そしてランとレンは他の隊とともにキリングドールと戦っていた。

「ふっ!」

士郎の放つ矢が次々とキリングドールを貫通させていく。
その様はまさに一発必中。
いかにキリングドールが群をなしていようとも士郎の弓矢による攻撃に加えて全投影連続層写(ソードバレルフルオープン)による追撃で次々と破壊されていく。
シホと同様もしくは男性ゆえに力は士郎の方が上のために力量は同等のものでありユニゾンはできないにしても足手まといになどなろうはずがない。

「炎天よ、燃えよ! 密天よ、狂え! 氷天よ、凍れ! バンバン行きますよー! せーのぉ! 三呪層入り乱れ攻撃ーーー!!」

そして士郎のサーヴァントであるキャスターも負けじと呪符を構えて炎渦巻く炎天、疾風荒れ狂う密天、すべてを凍てつかせる氷天とそれぞれを絨毯攻撃のように放ちコツコツとキリングドールを刻んでいた。

「ラケーテン・ハンマー!」

ヴィータも眼前の敵を打ち砕くためにグラーフアイゼンの噴射口から爆炎を吹かして突撃していく。
一体、また一体と潰しては高速で回転して動きを止めないその猛攻は違う場所で戦いながらも見ている魔導師たちにとってとても勇気づけられるものであり、「俺も!」や「いや、私も!」と血気盛んにキリングドールに突撃していく。
当然キリングドールも負けじと実弾銃を放ってくるのだが、別に急に魔弾みたいに曲がるわけでもなく当たったら爆発するといった炸裂弾系のものはいまのところ確認されていないために弾の軌道を読むことは容易く、さらに練度に関しても今まで鍛えてきた実力をいかんなく発揮しているために次々と避けていく。
言ってしまえばJ・S事件で戦いを切り抜けたものがほとんどのためにガジェッドよりあきらかに低スペックな性能であるキリングドールでは正直に言ってしまえば役不足になってしまうのだ。
だが数だけはいるのでそれぞれが厄介さを感じながらも撃破していく。

そんな中、一本の青白い光の剣が空高く昇っていく。
それと同時にとある女の子の叫びが全域に響いてくる。

「みなさん! 一気に切り裂きますので空に退避してください!」

それは光の剣を構えているランの声であった。
この光の剣、通称『バルムンクザンバー』はスカリエッティの手によって魔改造を施されてあのアインへリアルすらも一刀両断してしまったほどの威力を誇っているのだ。
しかしランの洗脳が解除された後はランの力量不足で使えないでいた代物だったのだが………。ここ最近の特訓でやっとのことで振り回せるほどにランは成長したのだ。
そして、

「バルムンクザンバー奥義! 大・斬・氷・閃!!」

一気にランはバルムンクザンバーを振りぬくと巨大な氷の刃が発生して次々と斜線上にいたキリングドールを切り裂いていく。
まさにアインへリアルを切り裂いた時同様の威力を発揮しているのだ。
大斬氷閃が通り過ぎた後には余波で地面が凍り付いていくというおまけつきであり、殲滅戦では最大の効果を発揮することは請け合いである。
それをランのそばでアウルヴァンディルを構えて反撃の時を予期して待機しているレンはというと、

「すごいなぁ、ラン姉さん………。もう使いこなせるようになったんだね」
「もちのロンよ! ブイ!」

レンの褒め言葉にブイサインをして答えるラン。
そんなときであった。
レンはふとした時に殺気のような視線を感じてとっさにアウルヴァンディルを前方に構える。
次の瞬間には目の前に一人の男性が現れてアウルヴァンディルのシールドに拳を叩き込んでいた。

「うわっ!?」

レンはそのあまりの強烈な拳の衝撃を殺しきれずに後方へと吹き飛ばされてしまっていた。

「レンッ!?」

ランがすぐさまにレンに駆け寄り抱き起した後に拳を放った男性を見る。
その男性は冷酷な視線を向けてきているために二人はビクッ!となる。
その男性とはブリューナク隊のジグルドの参謀であるウィルソン・ターナーであった。

「あ、あなたは!」
「………私はウィルソン・ターナー。ジグルド提督の参謀を務めています。あなた方には消えてもらいます」

そう言いウィルソンは鉄甲が装着されている拳を構えた。
そして一気にランとレンに詰めよろうとして、

「ラン! レン!」

ギンッ!

迫ってきていた拳をとっさのところで士郎のブレイドテミスによって防がれていた。

「間に合ったか………」
「士郎さん!」
「助かりました! でも、キリングドールの迎撃は!?」
「今はキャスターがなんとか頑張っているので大丈夫だ。それより………」

二人に安心感を感じさせる笑みを浮かべた後に士郎はウィルソンに鋭い目を向けると、

「お前がジグルド提督の参謀というのは聞こえていた。ならばお前を倒せば少なくとも戦力低下は免れないという事だな?」
「ふっ、確かにその通りでしょう。ですがそう簡単にはやられませんよ? 八神士郎二等空尉」
「ほう………。私のことを知っていたか」
「もちろん。ジグルド提督から伺っておりましたからね。あなたも私と同じく武の才能がないという事もね」
「む………」

それを聞いて士郎は眉を細める。
どこでその情報を入手したのかは知らないが、だからといって自身のことをそう簡単に語られるのも面白くない。
そう士郎は感じ、

「………確かに私には武の才能も魔術の才能もなかっただろうさ。だがな、努力し続けることを止めなかったから今の私があるのだ」
「ほう………それは羨ましい。私もですね、魔導の才能がなかった。そして世界に新たに魔術という第二の力が出てきたことにより私にもチャンスはあるかもしれないと、そう思った。しかし、私には魔術回路は宿らなかった………ですから二流でもリンカーコアも魔術回路も両方備えているあなた方には嫉妬の感情を覚えるばかりです」
「なんだ………? 不幸自慢でもしたいのか? 今はそんなことをしているほどお互い暇ではなかろう?」

ウィルソンの自虐発言に士郎は付き合ってられんとばかりに突き放す。
それにウィルソンは「確かに」と笑みを浮かべる。
そして拳を構えて、

「だが、八神士郎二等空尉。あなたが言ったように私もこの拳だけを今までずっと鍛えてきた。
そしてジグルド提督はそんな私の努力を認めてくれた。そんなあの人だからこそ私はいままでずっと着いてきたのです。
その努力の成果を、あなたに体験してほしい、味わってほしい」
「なるほど………。自身の居場所だけは明確なのだな。いいだろう。………ラン、レン」
「は、はい!」
「なんでしょうか?」
「こいつは私が片を付ける。お前たちは引き続きキリングドールの殲滅を頼む」
「わかりました!」
「了解です。士郎さんもお気をつけて!」

それでランとレンの二人は戦場に戻っていった。
そして士郎とウィルソンの二人は対峙する。

「さて、では始めるとするか。お互い才能なし同士。なに、簡単なことだ。実力を見せつければよいのだからな」
「同意ですね。では、いざ………」
「ああ。いくぞ?」

同時に二人は駆け出した。
士郎はブレイドテミス・ソードフォームの双剣を。
ウィルソンはただひたすらに両の拳を構えて疾駆する。

「はぁ!」

ウィルソンが拳を振るうと士郎は右手の剣で受け止め左手の剣でがら空きの胴に切りつける。
しかしさすが魔導が基本の世界で武だけを鍛えてきたウィルソン。
剣を拳で弾き飛ばす。
しかし、士郎とてこのような手合いや実戦は過去に幾度も行ってきた。
そして今でこそたくさんの自身より上位者の能力を保持する者たちが機動六課にはゴロゴロしているために料理人であるが暇なときはよくオリヴィエやアルトリア、ランサーとは何度も模擬戦をやってきてさらなる練度の向上を目指してきた。
そのおかげでさすがに本気のサーヴァントとの戦いでは負けてしまうが、試合レベルでならシホともどもいいところまで喰いつけるまで成長したのだ。
だからここで負けるわけにはいかない。
英霊エミヤにも勝った………ライゼルにも自身の正義を示して勝利した。
ゆえにこんなところで負けてやるほど士郎は甘くないのだ。
そして、だからこそウィルソンの実力に敬意を評し本気で倒すことを決めた。
ブレイドテミスを待機モードに戻し一瞬で干将・莫耶を投影する。
そしてある言霊を唱える。

「―――鶴翼(しんぎ)欠落ヲ不ラズ(むけつにしてばんじゃく)

干将・莫耶をあらぬ方向へと放り投げて再度干将・莫耶を投影してウィルソンに切りかかる。
それに初めて見る先方にウィルソンは眉を顰める。
だが士郎の猛攻は止められない。

「―――心技(ちから)泰山ニ至リ(やまをぬき)

ウィルソンの拳で弾かれた干将をすぐに破棄して莫耶もまた空へと投げる。

「―――心技(つるぎ)黄河ヲ渡ル(みずをわかつ)

再度干将・莫耶を投影。
さすがにこう何度も武器を放棄するのにウィルソンも困惑の目を浮かべる。

「―――唯名(せいめい)別天ニ納メ(りきゅうにとどき)

そこでウィルソンの危機察知能力が危険を示す。
そしてふと気づく。
なにかが自分に迫ってきていると。
それで横目で見てみると左右あちこちから今までウィルソンが弾いた干将・莫耶がすべて向かってきているのだ。
さらには士郎の持つ干将・莫耶が一メートル以上に巨大化してギザギザな刃を突き出す。
これこそ士郎自身の秘奥義、『干将・莫耶オーバーエッジ』、そして『鶴翼三連』。

「まさかこれ狙いか!?」
「気づいたか。だが、遅い!―――両雄(われら)共ニ命ヲ別ツ(ともにてんをいだかず)……!」

一気にウィルソンに干将・莫耶オーバーエッジを振り下ろす。
なんとかウィルソンは両手の鉄甲で防ごうとする、だが勢いは止まらなくこのままならウィルソンは士郎の刃に切り裂かれるだろう。
しかし士郎は殺してはならないと咄嗟に剣の刃を平らにして切り裂くのではなく叩きつけた。
これによって腕を切り裂かれる代わりにウィルソンは地面に叩きつけられていた。

「がっ! 無念。ジグルド提督、すみません……うっ………」

そしてウィルソンはあまりの衝撃に無念の言葉を吐きながらも気を失ってしまった。
戦いは終わった。それで周りに散らばっていたウィルソンを襲うはずの干将・莫耶の群もそれに呼応して消え去った。

「ふぅ………この技はある意味初見ゆえの必殺なのだがな。私も手加減するようになったな」

そう士郎はごちる。
こうしてウィルソンは捕縛されて敵の指揮は崩壊だろうと思った時だった。

「八神二等空尉!」
「どうした………?」

一人の魔導師が血相を変えて話しかけてくる。
士郎は嫌な予感がしてすぐに事情を聴く。
すると予想もしないことを言われた。

「………その、なんと申してよいものか。残存していた敵魔導師はすべて撤退。不自然な撤退でおかしく思い、施設の警備に連絡を取ってみたところ………」
「なにがあったんだ?」
「はっ………それが突如として骸骨のような仮面をつけた集団に襲われたらしく的確に最高評議会のメンバーだけをナイフで殺して去って行ってしまったそうです………」
「なんだと!?」

それで士郎は考え込む。
そんな芸当をできるのは以前シホ達を追い込んだ仮面の集団………すなわちアサシンのサーヴァントの仕業だと断定したのだ。

「くっ………やられた。まさかアサシンが紛れ込んでいたとは!」

それで士郎は苦虫を噛んだような表情で、しかし、

「………至急全員に通達だ。もう敵はいないとな」
「はい。わかりました!」

それで魔導師はその場を離れていく。
そして一人士郎は考え込みながらも、

「(アリサ嬢とアサシンに連絡をするか。あるいは志貴だけでもなんとかなるかもしれないが、『気配遮断』のスキルは私達にとって天敵だからな………アサシンに対抗するにはアサシンをぶつけるしかない)」

そう結論付けたのだった。
そしてその後、はやての担当した警備の方でもとある者の乱入でおかしな事態になったそうだが、なんとか抑えることはできたと連絡が来たために一刻も早く機動六課に戻って緊急会議をしないといけないと士郎はセイバーズ隊の機動六課メンバーにそう伝えるのであった。


 
 

 
後書き
と言うことでウィルソンを捕らえました。
しかし警備はアサシンに抜かれてメンバーは殺されてしまいました。
はやての方はなんとか防いだそうですが、あちらでも何かあったと思います。




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では。 
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