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牙狼<GARO>―黄金の嵐(かぜ)―

作者:ハイド
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第一章「失われた黄金」
  #1、牙―Evil shine―

 
前書き
お待たせしました、記念すべき第一話の始まりです。
これから始まる、黄金騎士の物語に・・・
決して目を逸らすな!

12/29に一部修正しました。 

 
Side???

 出会いって言うのはいつも唐突に・・・偶然が重なり合って訪れる。
 何かの本でそう書いてあった気がする。今思えば、オレ・・・ヤシオが『彼ら』と出会ったのはそう言った偶然が重なり合った結果なのかもしれない・・・。

Side OUT

―慎之介が指令を受け取る前日・・・。

 ガタンゴトン。
  ガタンゴトン。
   ガタンゴトン。

 電車に揺られながら蒼いジーパンにアニメキャラがプリントされたTシャツを着た小学生ヤシオは窓ごしに夕暮れの空を見つめていた。学校の帰りである。
「何処へ行くの?待ちなさい。ほら、こっち」
「や!」
 声がした方を見やると、母子がもめているようだ。
「嫌じゃないでしょ!ホラ!」
「やーーーーーーーー!あーーーーーーーーーーー!アァァァァァァァァァァァァン!!!!」
「どうしてママの言う事が聞けないの!全くアンタは!いい加減にしないと怒るよ!」
(もう怒ってんじゃん・・・)
 次第にエスカレートし、子供が泣き出した。それに腹を立て怒鳴る母親。それを見ながら呆れた表情でヤシオは胸中で呟くのだった。

『春日部ー、春日部ー』
 自宅がある春日部に着いたので、降りる。
「ほらぁ!行くよ!」
「やあああああああああ!!」
「ちゃんと歩きな!」
 怒鳴り声が聞こえたので見やると、先ほどの母子がまだやっていた。
(あーあ、まだやってら)
 ため息をつきながら、胸中で呟き再び歩き出そうとする。その時だった。
―ドン!
 背中に衝撃が走る。誰かがぶつかってきたようだ。
「ってーな!気ぃつけろ!!」
 衝撃がした方を振り向き、見やる。そのぶつかったであろう人物を見て・・・固まった。
 年は高校生ぐらいだろうか、赤いツンツンしたヘアーの少年である。顔はイケメンの部類に入る感じだ。・・・それだけなら固まらないだろう。
 だが、格好が異様だった。その少年はどっかのアニメに出てくるような黒いロングコートを羽織っていた。何かのコスプレをしているようにしか見えない。・・・ぶっちゃけ残念なイケメンである。
「・・・何だ、アイツ?」
 ギロリと、その少年に睨みつけられたが、ただにらみつけただけで少年は去っていった。
 一体何故、あんな格好をしているのか・・・?何故、あんな格好をしているのに道行く人は誰も気がつかないのか・・・?謎が多かったが、ヤシオは大して気にもとめず、そのまま帰路へと向かった。


―そして、一方では・・・。

「ほらぁ、いつまでそうしてんの?」
「びえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!」
 先ほどの母親が路地裏でないている子供を叱っていた。一向に子供は泣き止む気配はない。
「ついて来ないなら置いてくよ」
 それでも、子供は泣いているばかりでついてはこない。
「・・・もう知らないからね」
 とうとう業を煮やし、母親は子供を置いて歩き出した。途端に子供の泣き声が止む。
「・・・?」
 泣き止んだのだろうか?そう思い、母親は後ろを振り向いた。・・・そこには、
「五月蝿い餓鬼だ・・・」
 背の高いコートを着た男が子供を睨んでいた。・・・見るからに普通じゃない。そう思った母親は一目散に子供駆け寄る。
「親の言う事が聞けないのなら・・・」
 バキバキ・・・と骨と肉体が変質する音が響く。母子は怯えた様子でそれを見ていた。
「俺が代わりに躾けをしてやる・・・!」
 そう、男が人間以外の『ナニカ』に変質する様を・・・。

―話を元に戻し、ヤシオの家。

「ただいまー・・・、って誰もいないか」
 鍵を開け、家の中に入る。時刻は午後6時、お腹がすいたのでコンビニで弁当を買いそれを食べた。その後、テレビを見る。ヒーローモノのアニメだ。
『正義の味方、ふたば仮面参上!』
 双葉をモチーフにした仮面をしたヒーロー、ふたば仮面。過去に放送された『アクション仮面』の流れを汲んだ子供達に人気の特撮ヒーローである。
『おのれ、大地を汚す怪人め!今此処に正義の鉄槌が下される!行くぞ!必殺ふたばパーンチ!!!』
 テレビの中でふたば仮面が怪人に必殺技を繰り出し怪人を撃退する。ヤシオは目をキラキラさせながら見ていた。
『今日もまた世界の平和が守られた、来週も正義の心が芽生えるぞ!』
「やっぱ、ふたば仮面はサイコーだよな。・・・あいつら何も分かってねーんだ」
 番組が終わり、ヤシオは呟きながらチャンネルを変え今日の学校の事を思い出していた。
 
―今日の昼の事だった。

「あーあー、ヤシオの奴又かよ。いまどきふたば仮面なんかマジありえねー」
 クラスメイトの一人がそれを言った事に腹を立て、机を蹴りつける。
「うっせーな、何か文句あるかよ?」
「・・・へっ、ヤシオよう?お前マジ、ガキな。そんなん俺、とっくに卒業したぜ?」
 そんなヤシオを鼻で笑いながら頭に手を置く。
「今時、ヒーローなんてはやらねーんだよ」
「てめぇ!気安く触るな!!!」
 それが引き金となり、殴り合いの喧嘩となった。当然、教室は大騒ぎである。
「何やってるんだ!こら!やめなさい!!!」
 そこへ、騒ぎを聞きつけたのか担任である鎌田がヤシオ達を止める。その後、放課後職員室に来るように言われたが、ヤシオは言うとおりにせずそのまま家に帰ったのである。

「ったく、オレは悪くねーのに何で行かなきゃなんねーんだよ」
 それを思い出し、一人毒づくヤシオ。ふと、ある映像を見てそれに釘付けになる。
『ええ、そうなんです・・・ちょっと目を離したすきにこの子が・・・。気がついたら病院に・・・何がなんだか・・・』
 内容は、刃物を持った通り魔に子供が襲われたとの事でその子の母親がインタビューを受けているというのだが、その親にヤシオは見覚えがあった。
「これって・・・駅の親子!?」
 そう、帰り道泣き喚いていた子供の母親だったのだ。この後、母親の口から語られた一言に衝撃を受ける事になる。
『では、犯人の特徴のようなものは・・・?』
『ええ、はい・・・。黒いコートを着ていて、目つきの悪い男でした』
「!?」
 この特徴を聞いて、あの少年を思い出す。あの目つきの悪い、黒いロングコートを着た少年の事を・・・。
(あいつだ・・・!あの黒いコートを着た目つきの悪い赤いツンツン頭!・・・アイツが犯人だ!!!)

Sideヤシオ
 この時のオレは、何が何でもあの黒いコートの目つきの悪いアイツを捕まえなければ・・・。どうにかしなきゃ・・・ってそう思っていた。
 この判断が、始りだったなんて誰が予想しただろう?そう、ありふれた日常から死と隣り合わせの闇の者との戦いが渦巻く非日常の始りだと・・・。

―そして、話は慎之介が指令を受け取り家を出た後へと戻る。

「ん?」
 暗い路地を歩いていて、ふと気配を感じ後ろを振り向くと、そこには茶色の髪をサイドテールにし、白いロングコートの魔法衣を着た少女が立っていた。
「やっほー、しんちゃんにザルバ」
『よぉ、アンナ』
「アンナ、何故ここに?」
 ニッコリと明るい笑顔を見せながら慎之介に言うアンナと呼ばれた少女。彼女の名は冴島杏奈(さえじま あんな)、かの有名な冴島大牙、冴島鋼牙、冴島雷牙といった数多くの黄金騎士を生み出した冴島家の末裔である。
 彼女は女であるため、魔戒騎士をサポートをする側である魔戒法師をしている。仕事の際には慎之介とコンビを組むことが多く、慎之介のもう一人の相棒と言っても過言ではない。
「しんちゃんのサポートをね。『憎悪』の陰我より生まれしホラー、黄金騎士と協力して討伐すべし・・・って指令が来たの」
『そう言って、実は指令のことを知って番犬に「しんちゃんと一緒に仕事させて!」って頼み込んで貰ったんだろ?』
 赤い封筒を見せながら言うアンナに対しザルバは半眼でアンナを見ながら言った。アンナは途端に顔を真っ赤にさせ、
「ち、違うよー!そんなんじゃないって・・・」
 あわあわと、慌てた様子でザルバに反論する。何を隠そうアンナは、幼少時のある一件から慎之介に好意を抱いているのだが、彼女自身恋愛事が苦手で、シャイな性格の為こんな感じなのである。
「あ!そ、そうだ!しんちゃん、今回のホラーについて情報を仕入れてあるから春日部駅に来てって、レオンから言伝を貰ったんだ!一緒に行こうよ!」
『あ、話逸らしやがった』
「レオンから?何故、アイツが今回のホラーの事を?あいつ、昨日は別の任務についていたんじゃなかったのか?」
「実は、任務の帰りに今回のホラーが人を襲う現場に鉢合わせして交戦したんだって。ニュースに出てたと思ったんだけど・・・」
『・・・そういえば今朝のニュースであったな。だが、アイツの強さから考えるに、そこいらのホラー相手なら遅れを取るはずがないんだが?』
 アンナの言葉に、ザルバがふと疑問に思ったことを問いかける。
「その被害者が怪我をしていたみたいだから、保護を最優先にした結果取り逃がしたんだってさ」
「成る程ね・・・大体分かった、レオンの所に案内してくれ。情報は多いに越したことはないからね」
「うん」
 そして、アンナの案内の元、慎之介は春日部駅へと向かったのであった。

―一方、その頃。

「糞っ!糞っ!皆馬鹿にしやがって・・・!!!」
 学校の帰り道、ヤシオは一人走っていた。そして、今朝の事を思い出す。

「本当なんだって!オレ、見たんだ昨日!!犯人をさ!!!」
 朝、ニュースで見たことをクラスメイトに話した。クラスメイトと協力して犯人を捕まえる為だ。・・・だが、
「まっさかー」
「またいつものあれじゃねーの?ヒーローごっこ、ははっ」
 とまともに取り合ってくれなかった。そこへ・・・、
「ヤシオ」
 声をかけられ振り向くと、鎌田が立っていた。こちらを睨みつけながら鎌田は続ける。
「昨日はどうして来なかった?先生、職員室で待ってたんだぞ?」
「先生、オレ犯人w「いい加減にしろ!!」ッ!」
 ヤシオは必死に鎌田に言おうとするも、怒鳴り声で遮られる。
「・・・これ以上問題を起こさないでくれ。今日こそ職員室に来るんだぞ?いいな?」
 そういって、鎌田は去っていく。去り際に、
「全く・・・いつまでもヒーローなどと・・・」
 そう残して。

「だったらオレがなんとかしてやるッ!!!」
 そう叫んでヤシオは駅へと向かう。犯人をこの手で捕まえる、ただそれだけを胸に・・・。

―一方慎之介達は・・・。

「ここがあの女のハウスね」
「『いきなり何を言ってんだお前さんは』」
 春日部駅にて、意味不明な事を言い出したアンナにツッコミを入れる慎之介とザルバ。
「いや、何か言わなきゃいけないって思ってさ」
「変な電波受信してる場合じゃないだろ?レオンは何処に・・・?」
 アンナにそう言いながら、辺りを見回しているとふと、ある人物が目に入る。黒いロングコートを着た赤いツンツンヘアーの少年だ。・・・読者の方々には分かるかもしれないが、物語冒頭でヤシオが見た少年その人である。
「よお、相変わらずイチャイチャしてるようだな」
「「だ、誰がイチャイチャだ!!!」」
 此方に歩み寄りながら、茶々を入れる少年に慎之介とアンナは異口同音でツッコミを入れる。彼の名は鈴邑零音(すずむら れおん)、慎之介と同じ魔戒騎士である。彼もまた慎之介と同じ称号持ちであるが、どういった称号なのかは後々話すとしよう。
「レオン!まだ、私達はそんな関係なんかじゃないよ!・・・いつかはなりたいと思うけど・・・」
「・・・はい?」
 そう言って、レオンに反論するアンナ。最後らへん口にしたセリフに慎之介は目を瞬かせながら首をかしげた。アンナはハッと気づき、慎之介のほうへと向く。
「あ、あのー・・・アンナさん?今なんて・・・」
「な、なんでもなーい!!!」
「ぶべら!?」
 問いかける慎之介に顔を真っ赤にさせながら鉄拳を喰らわせた。もんどりうって倒れる慎之介。
「はぁ、痴話げんかなら後にしろ。話が進まないんだよ・・・」
「いてて・・・そうだった。情報宜しく頼む・・・」
 ため息をつきながら呆れたように言うレオンに慎之介はそう言ったのであった。

 一方のヤシオも、春日部駅に到着していた。が、ここである問題が発生する。
「・・・手掛かりがねぇや」
 そう、手がかりである。あの少年につながる手掛かりがなければ探す事もできない。何か手がかりとなるものはないか・・・?そう思い、辺りを見回すと・・・。
「!?」
 あの少年を見つけた。・・・しかも、仲間らしき男女が2人も居る。
(まさか・・・次の獲物をどうするのか話し合っているのか・・・?)
 その3人の様子を見ながらヤシオは胸中でつぶやくのであった。

「これが、俺の知っている今回のホラーの情報だ」
「成る程ね・・・ん?」
 ふと視線を感じ辺りを見回す。どうやら何者かがこちらを見ているようだ。
「アンナ、レオン・・・ちょっと歩くぞ」
「・・・?」
「え、しんちゃん?ちょ、ちょっと待ってよ!」
 慎之介は2人にそう言うと、目を瞬かせる彼らを他所に一人何処かへと歩きだした。
「一体どうしたの?」
「尾行されてる」
 パタパタと着いていきながら、問いかけるアンナに慎之介はちらりと彼女のほうを見ながら答えた。
「尾行?」
「ああ、誰かがこちらを見てると思って移動してみたがどんぴしゃりだ。一旦駅を出た曲がり角で待ち伏せするぞ」
「う、うん」
「分かった」
 アンナと慎之介は駅を出て曲がり角の所へ曲がりその何者かを待ち伏せする。・・・そして、
「おい、お前」
 自分達を追って曲がってきたその何者かに声をかけた。野球帽を被った小学生だった。
「子供・・・か、何で俺達をつけてくる?」
「ッ!!」
 自分の尾行がバレたと悟ったのだろう。小学生は目を見開くと脱兎のごとく一目散に逃げ出した。
「おい待て!!っち・・・何処に行った!?」
『ッ!慎之介、ホラー反応が急激に強まった!』
 小学生を追いかけ、見失った慎之介にザルバが声をかける。
「ホラー反応が!?まさかあの子が・・・」
『いや、違う。あのガキの近くだ!まずいな・・・あのガキ狙われてるぞ!!!』
「・・・となると、あのホラーか!?」
「・・・急ぐぞ皆!」
「うん!」
 

「はぁ・・・はぁ・・・」
 あのツンツン頭の仲間であろう、おかしな格好をした2人組みから逃げた後、ヤシオは自販機の物陰に隠れ息を整えていた。
(け、警察に電話を・・・)
 そう思い、携帯を取り出して警察に連絡を取ろうとする。だが、
ガシッ!!!
 携帯を何者かにつかまれてしまった。あいつらか!?そう思い見上げれば・・・、
「か、鎌田先生!!!」
 担任である鎌田であった。ちょうど良かった、犯人と仲間であろう人物2人を捕まえてくれるかもしれない。そんな希望を胸に抱き、口を開く。
「ちょうど良かった!オレ、そこで犯人を・・・」
 だが、そんな希望は鎌田の次の言葉で打ち砕かれる事になる。
「言ったはずだ・・・ヤシオ、今日こそ職員室に来いと。やはり、お前は俺の話など聞いてなかったんだな?」
「え・・・?先生・・・?!」
「何故だ・・・?何故ガキは言う事を聞かない。・・・どうしてドイツもコイツも生意気な事ばかり言うんだ・・・?」
 そういって、ヤシオの携帯を握りつぶす鎌田。そして、ある変化が訪れた。
「ああ・・・憎い!憎い!憎いィィィィィィィィィィィィィィ!!!!」
 叫びと共に鎌田の肉体がバキバキと音を立て変質していく。・・・そう、人間ではないナニカへと・・・。
「ヤシオ・・・お前は俺が躾けなおしてやる・・・」
 人を喰らう魔獣『ホラー』へと。
「ば、化け物!?う、うわあああああああああああああ!!!」
 鎌田がホラーへと変質した事に恐怖し、逃げ出そうとするも足がもつれ転んでしまう。その隙を逃さずホラーと化した鎌田はカマキリのような腕を振り下ろそうとする。
(だ・・・誰か・・・!?)
 振り下ろされる鎌を見ながらヤシオは、きつく目を閉じ助けを願う。その刹那だった。
―ガキィン!!!
 響き渡る金属音。おそるおそる目を開けると、そこには・・・。
「大丈夫か?」
 剣でその鎌を受け止めるあの3人の一人である黒いコートを着た青年が立っていた。

「何とか・・・間に合ったみたいだな」
 チラリと、小学生を見ながら慎之介は呟く。
「シタナ!ナサリシチサ!?ヂャナヨツムア!ロメバヤシオインルザラム!ロナレヂャアリ!!(訳:貴様、魔戒騎士か!?邪魔をするな、俺はヤシオに用がある!!貴様じゃない!)」
「残念、お前が何と言おうと、俺はアンタに用があるんだよ、ホラーさん」
 喚き散らすホラーに慎之介はそういうと、鎌を弾き後ろ回し蹴りを叩き込む。グハッ!?と悲鳴を上げながら後ずさるホラー。それを見ながら、ザルバに問いかける。
『おや、こいつは・・・』
「ザルバ、奴を知っているのか?」
『ああ、奴はカマギュラス。子供を「躾」と称していたぶって殺しその死体を喰らうホラーだ』
「・・・何とも悪趣味な(ホラー)なこって。アンナ、この子を安全な場所へ。奴の相手は俺がする」
 ザルバの言葉に頷くと、ホラー『カマギュラス』を睨みつけ後ろに居るであろうアンナに言う。
「分かった、気をつけてねしんちゃん」
「ああ」
 アンナはそういって、小学生を連れて安全な場所に避難させた。
『それと、レオンがここへの道を封鎖してくれたようだ。通行人に見られる心配はない。「鎧」を呼べるぜ!』
「ああ・・・そのようだな。行くぞ、ホラー」
 魔戒剣を天空に掲げ、頭上に円を描く。円から、眩い光があふれ出し慎之介を照らしていく、刹那だった。そこからパーツのようなモノが降り注ぎ、慎之介の体に装着され、一つの鎧となった。
 うなり声をあげ、顕れたそれはそれは狼だった。正しき怒りをその顔に浮かべ燃える焔のような深紅の瞳、漆黒と金色に彩られた刃金の狼。その名は・・・、『黄金騎士・牙狼(ガロ)
「パ・・・パサア!?ロルゾユシチ・・・ガコォ!?ブッサクチケリカオサ!?(訳:ば、馬鹿な!?黄金騎士・・・だとォ!!?復活していたのか!?)」
「まぁな。・・・アンタの陰我、断ち切らせてもらうぜ」
 黄金騎士だと知り、うろたえるカマギュラスに慎之介・・・否、牙狼は魔戒剣が変化した『牙狼剣』を構える。
「ボダセ!アマパ、トオセリブ・・・ブカカピロメザカキシッケスメムヤ!!!(訳:ほざけ!ならば、その系譜・・・再び俺が断ち切ってくれるわ!!!)」
 叫びながらカマギュラスは牙狼に肉薄、鎌と化した腕を振るう。それを回避し、受け流す牙狼。
「どうした?その程度か?」
「シタナァ、ロメオヂャナヨ・・・ツムアァ!!!(訳:貴様ァ、俺の邪魔を・・・するなぁ!!!)」
 牙狼の挑発に声を荒げながら、カマギュラスは大きく鎌を振るった。それを回避し、擦れ違いざまに一閃。
「ぬうっ!?」
 当たりはしたものの、剣は甲殻にキズをつけただけで大したダメージは与えられていなかった。
「・・・硬いな」
『シン、甲殻の隙間を狙って斬るんだ!』
「分かった!」
 ザルバのアドバイスにそう頷き、牙狼は牙狼剣を構えるのであった。

 ヤシオは、ただ目の前の光景に目を奪われるばかりであった。それもそうだ、TVでしか見れないヒーローが実際に目の前で・・・、変身して戦っているのだ。
「行けェー!牙狼ー!悪い奴なんかぶっ飛ばせー!」
 気がつけば、牙狼に声援を送っていた。

「っちぃ!ガキが、黙れェ!!!」
 ヤシオの声援に腹を立てたカマギュラスは標的を牙狼からヤシオへと変え、鎌を振るおうとする。だが、
「させるかっ!」
 すんでの所で牙狼に邪魔をされた。鎌を牙狼剣で受け止める。
「邪魔するな黄金騎士!アレは獣だ!野に放たれた獣そのものだ!やつ等は矯正せねばならん!!それの何が悪い!?」
「その前に、アンタがどれだけ狂ってるか・・・理解しやがれッ!!!」
 牙狼はそういうと、鎌を弾き腹部甲殻の隙間を狙い牙狼剣を一閃させる。
「ぎゃあああああああああああああっ!!!?」
 カマギュラスは上半身と下半身を綺麗に両断され、消滅。代わりに人魂のようなものが現れ牙狼の目の前を漂っていた。憑依された鎌田の顔を浮かび上がらせて。
『い、嫌だ・・・死にたくない・・・俺はただ・・・立派な教師になりたかっただけなのに・・・』
「ホラーに憑依された時点で人間だったアンタは死んでいる。・・・諦めな」
 助けを乞う鎌田に冷徹にそういうと、牙狼はそのまま牙狼剣で一刀両断した。そして、今度こそ鎌田は消滅する。
「来世では・・・いい教師になれよ」
 それは懺悔なのだろうか?天を見上げ、そう呟くと鎧を解除し、ヤシオの元へ向かう。
「大丈夫か?ヤシオ君だっけ?怪我はない?」
 ヤシオにそういうと、微笑みながら頭に手を置く。・・・と、
「き、気安く触んな!!!」
 何故か顔を真っ赤にして、慎之介の手を振り払う。
「それにオレは『君』じゃねぇ!!!」
 そういって、帽子を脱ぐと・・・ファサっと、腰まで届きそうな長い髪が溢れる。
「オレは『八潮ミサト』!れっきとした女だ!!!」
「・・・・・・ゑ?」
 衝撃の事実、ヤシオこと八潮ミサトは男ではなく女だったのだ。衝撃の事実に固まる慎之介。まぁ、無理もない、どう見ても男の子としか見えない服装ならば誰だってそう思う、作者(おれ)だってそう思う。
「バーカ!バーカ!!!」
 そんな慎之介に意も介さず、ミサトは罵声を浴びせながら去っていった。アンナはそれを可笑しそうに笑いながら言う。
「面白い子だね、あの子」
「あ、アンナさん。アンタ気づいていらっしゃったのでせうか?」
「さぁね~」
 ふふんと笑いながらアンナは言う。表情からして知ってたのだろうが。
『俺様ですらあのガキが女だとは知らなかったのに。・・・アンナ、恐ろしい奴だぜ』
 余談だが、ザルバもザルバで知らなかったようだ。
「ねぇ・・・しんちゃん」
「ん・・・?」
 ふと、アンナが真剣な表情で慎之介に言う。
「5年くらいになるんだよね・・・。しんちゃんが牙狼の称号を継いで」
「・・・ああ、だけど・・・『おじさん』にはまだまだ及ばないけどね・・・」
 慎之介は微笑みながら師であり命の恩人である先代牙狼であったアンナの祖父を思い出しながら言う。
「でも、いつか・・・俺は『おじさん』みたいな牙狼になってみせる。・・・そして、もう一度鎧の輝きを取り戻してみせる」
 あの日、彼女と交わした約束。彼女の祖父が人々を守る為に、その命と黄金の輝きを引き換えにしたあの日。一人ぼっちになってしまったアンナの笑顔を取り戻すために交わした約束。
 彼女はそれを聞き一瞬、目を瞬かせた後・・・微笑む。あの日と同じ笑顔で。
「約束だよ、しんちゃん」

『あー、二人ラブラブな所悪いが・・・』
「何か忘れてないか?」
「「ら、ラブラブじゃないっ!!!」」
 そこへ、ザルバといつの間にか戻ってきたレオンの一言に、二人は顔を真っ赤にさせながら反論する。
「まぁ、そんな事はどうでもいいけどよ。・・・八潮って言ったか?あいつの記憶処理・・・忘れてないか?」
「「あ」」
 レオンの言葉に、固まるお二人。ミサトが女であった事の驚きで記憶処理をするのを忘れていたのだ。・・・肝心のミサト本人は、何処かへ行ってしまった。
「「・・・ま、いっか」」
「良い訳ねーだろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」
 もう、こーなった以上どうする事も出来ないので二人は考えるのをやめた。当然、レオンの怒号が響いたのは言うまでもない。


つづく。 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
ちゃんと原作GAROのような感じになってるでしょうか・・・特に、バトルシーンとか(汗)
後、キャラクターなどの説明についてはキャラクター紹介なるものを作りたいと思っております。

それでは次回予告、勿論ナレーションはザルバです。

ザルバ『花嫁のブーケから察知したホラーの気配。シン達は、花嫁に憑依したホラーを狩る為、結婚式場に乗り込む。今宵、愛を誓い合う場所で金色と銀色の刃が煌く!次回「銀-Zero-」黄金騎士と共に戦った伝説の銀の牙、降臨だぜ!!』

次回も楽しみに、それでは~(0w0)ノシ 
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