俺はやはり間違った選択をした
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確かな物
前書き
お久しぶりです
そしてあけましておめでとうございます
みなさんはお正月は満喫できましたか?
ちなみに自分は元旦から高熱を出し最悪の正月となりました
それでは短いですがどうぞ
俺は探知魔法を展開して一番大きなビルの中に入った
先生の事だから今回も何か用意しているんだろうと思い念には念をと数個のサーチャーも飛ばす
なぜ俺がここまで初撃に気を使うのかというと、先生の負けず嫌いな性格に起因している
前にも俺が勝った次の模擬戦の時などチート地味た仕掛けを使う事がしばしばあったのだ
しかも先手必勝、一撃必殺の類が多い
それに加え今回は先生の作った仮想演習システムだ
仕掛けはいくらでも付けることが可能だろう
「マスター、2つ反応があります」
俺はすぐさまマップを確認して映像を出す
どちらもどこからどう見ても先生だ
魔力反応も違いがない事から映像だけでは判別できない
かと言ってこちらが下手に動くと場所がばれる
「フォル、誘導弾2つ生成」
俺がそう言うとそれぞれの銃口の先に魔力弾が1つだけ生成される
今回は先生の策にあえて乗ることにしよう
二丁の銃を構え発射体勢をとり誘導弾をそれぞれに放った
しかし背後から妙な視線があることに気付く
「マスター!」
フォルの声を聞き、後ろを振り返ると俺に切りかかろうとしている先生の姿が目に入った
俺は咄嗟に右に回避する
先生はそのまま突っ込んだのか大きな煙が立ちどのようになっているのかわからない
だが、俺の頭の中はどうして探知魔法やサーチャーに引っかからなかったのかでいっぱいだった
「うーん、初撃はうまくいくと思ったのだが……」
そう言いながら先生は頭をかきながら出てきた
汚れ一つない綺麗な白衣姿のままだ
「……どうやって俺の探知網を抜けてきたんですか」
「それは教えられん。企業秘密と言う奴だ」
先生は悪戯っぽく笑うと大太刀を俺に向けてくる
ともかく今は距離を取らなくてはいけない
接近戦においてこちらが圧倒的に不利なのは明確だ
飛行魔法を展開して宙に浮くと先生も飛行魔法を展開してこちらに接近してきた
俺は一番近い窓から外に出る
だが予想外だったのは先生が壁を吹っ飛ばしたことだ
おかげで煙がそこらに舞って視界が悪い
俺は距離を取るため少し後方に下がった
だが、そこが俺が一番油断した時だった
「マスター!」
フォルが咄嗟に警告を俺に促すがもう間に合わない
俺は後頭部に強い衝撃を感じながら気を失った
☆☆☆
目をさますとそこは先ほどまでいた研究室の天井だった
周りを見渡すとポッドのような物でカップにお湯を注いでいる先生の姿だった
先生はそのまま注いだカップを持って俺が寝ているソファまでくると近くの椅子に座りカップを差し出してきた
「気がついたようだな」
俺はそのまま手渡されたカップを少しばかり口に含んだ
口の中には甘さが程よいミルクティーの味が広がった
中々美味しかったのでもう1度カップを口に運んだ
「「……」」
妙な間が空いてしまってなんだか気まづくなってしまった
俺は先生の方にちらと目をやるとなんだか気まずそうにそわそわしているのが見て取れた
この状態が続くのもあまり良くないと思ったのか先生が先に口を開いた
「その、あの……す、すまなかった」
先生はそう言うと頭を下げた
いきなりのことだったので俺は中々声が出なかった
プライドがそこそこ高い先生が頭を下げるなんて思わなかったからだ
「きょ、今日は久しぶりの模擬戦だったから。なんかこう舞い上がってしまってな……お前と会うのも久しぶりだったし。だ、だからだな……その、あまり私のことを嫌いにならないでくれ」
「ぷっ。はははっ」
俺は思わず笑ってしまった、なんせ先生が真剣に話し出すものだから何かとても大事な話でもするのかと思ったのに肝心の話の内容が嫌いにならないでくれとは可笑しさ半分驚き半分といったところだ
「わ、笑うんじゃない! 私にとっては重要なことだ!」
俺はあたふたしている先生を見るがこれはこれで可愛いなと思ってしまった
なんせ先生にこんな少女のような一面があるとは誰も思うまい
「別に嫌いになったりしませんよ。それに先生は命の恩人です、むしろ俺が嫌われないか心配ですよ」
「そ、そうか。それはよかった!実によかった!」
先生はホッと胸をなでおろしていた
「でも先生が頭を下げるなんてびっくりしました。先生、俺よりかなり年上みたいな感じだし」
「私は礼儀をわきまえているぞ。自分が悪いと思ったら頭を下げるのは当たり前だ。だが私はまだ全然若いぞ」
そう言う先生は少し誇らしげだがよくよく考えてみると先生の正確な年を俺は知らない
女性に年の話をするというのはタブーと言うがいい機会だ、この際聞いておこう
だが、俺が聞くより先に先生が話を振ってきた
「でもなぁ。私はどうも年長者だと思われがちで困る」
願ってもない年の話だった、俺は絶好のチャンスだと思い恐る恐る年を聞いてみることにした
「そういえば先生の年って俺知らないなぁ~」
「そういえばそうだったな。私はまだ『17』だ」
「……はぁ?!」
先生はそれがどうしたと言った顔をしているが俺にとってはとんでもない事実だった
今までかなり年上だと思っていた女性が実は結構年が近かったなんて聞いたことがない
「そんなに驚くことか?」
「当たり前ですよ、というよりそう言う事は早めに言っておいてくださいよ。びっくりしたじゃないですか」
「そうか、すまなかったな。そう言えば式、時間は大丈夫か?」
先生がそういうので時計を見ると夜の8時をまわっていた
「じゃ、そろそろ帰りますね」
俺はそう言ってベッドから立ち上がり帰る準備を始める
その最中不意に先生に話しかけられた
「そういえば式。君はこの頃何かいい事があったか?」
「?、特にありませんけど」
俺がそういうと先生は嬉しそうに笑いながらこちらに近寄ってきた
「君は本当に素直じゃない」
そう言って先生はポンと俺の頭に手を置いたあと気をつけて帰りたまえと言って部屋の奥の方に言ってしまった
先生との別れ方はいつもこうだ
決して見送るということはしない
だがいつも不思議と安心するのだ、またここに来れば会えると……
先生とはそう言った言葉では語れないような確かな物がある
ただの俺の思い込みや願望かもしれない
それでもここは心休まる暖かい場所だ
彼らとはこういう関係には絶対に慣れない
俺が信じえない物を彼らは持っているから、例え仮染の理想だったとしても彼らはそれを信じられるから
だから俺が同じ場所に踏み込むことは絶対に有り得ない
だってそれは俺が1度手にして、諦めてしまった物だから
俺は手にする資格さえ持ち合わせていない
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