戦国異伝
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第百八十七話 舞い乱れる鳥その九
織田の軍勢を防いだ、だが織田の攻めは闇夜の中で激しく。
彼等は守るだけだった、その状況を見てだった。
隆元は遂にだ、二刻程戦ったと思った時に全軍に告げた。
「致し方ない、ここはな」
「退きますか」
「そうしますか」
「攻められぬ」
だからだというのだ。
「退く」
「何処まで退かれますか」
「備中まで退く」
そこまでだというのだ。
「そこで一旦態勢を立て直してじゃ」
「再びですか」
「織田と」
「戦う、今は負けじゃ」
忌々しいが認めるしかないことだった。
「だからな」
「ここは退き」
「そのうえで」
「再戦じゃ、またじゃ」
こう言ってだ。隆元はまだ夜であるがそれでも兵を上手に率いそのうえで織田軍から離れてだった、そのうえで。
備中まで退いた、戦は織田家の勝利に終わった。
夜が明けて信長は周りを警戒させながらそのうえでだった、こう言った。
「毛利家との緒戦はじゃ」
「今ので、ですな」
「勝ちましたな」
「うむ、そうなった」
まだ油断していないがそう思っていいというのだ。
「これでな、そしてじゃ」
「これで、ですな」
明智が信長に言って来た。
「備前、美作、そして因幡の国人達が」
「こちらになびく」
織田家に、というのだ。
「これでな」
「そうなりますな」
「無事備中まで兵を進められる」
備前や美作を手に入れたうえでというのだ。
「そうしてな」
「そして、ですな」
「備中で決める」
毛利家との戦のそれをというのだ。
「完全にな」
「わかりました、それでは」
「この勝ちのことはすぐに備前中に伝わる」
そうなるというのだ。
「そしてな」
「国人達がつき」
「備前での話は終わりじゃ」
これが無事に進められるということだった。
「よい勝ちじゃった」
「まことに」
「しかしじゃ」
ここでだ、信長は家臣達に言うのだった。
「毛利家は戦をせねばならなかった」
「この度は」
「どうしても」
「戦をせずに見ているだけでは毛利は腰抜けと思われてじゃ」
そしてだったというのだ。
「備前や美作を失っておった、因幡もな」
「しかし殿」
ここで信長に言ったのは万見だった。
「この度の負けで」
「どちらにしても備前や美作をじゃな」
「失いましたが」
「そうじゃ、実際にそうじゃが」
「それでもですか」
「負け方というものがある」
同じ敗れるにしてもというのだ。
「戦にはな」
「では夜襲で負けるのではなく」
万見は信長の言いたいことを察してだ、そのうえでこう言った。
「昼に堂々と向かいそのうえで」
「負けるべきだったのじゃ」
「そうすべきだったのですか、毛利は」
「三万の兵で昼に十八万の兵に正面から向かっては敗れる」
絶対に、というのだ。
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