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美しき異形達

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第三十一話 相性その一

                  美しき異形達
              第三十一話  相性
 鈴蘭と黒蘭の姉妹と怪人達の戦いがはじまった、両者はそれぞれ間合いを詰めていく。その状況を観ながら。
 裕香は薊にだ、眉を曇らせつつ問うた。
「あの」
「ああ、ここのこともってことだよな」
「それってどういうこと?」
「つまり地の利なんだよ」
 薊は笑みを浮かべて裕香に答えた。
「つまりは」
「地の利って」
「そう、地の利だよ」
 まさにそれのことだというのだ。
「それがどうかなんだよ」
「地の利っていうけれど」
 裕香は今の自分達のいる場所を見た、そしてだ。
 次に怪人達を見てだ、そして言うのだった。
「あの、ここって海に近いから」
「だからだよな」
「うん、岩場だから足場も悪いし」
 それにだった。
「しかも怪人達はね」
「海の生きものだよな」
「ウツボとシオマネキだから」
 それで、というのだ。
「あちらの方が有利じゃないかしら」
「まあそうだな」
 薊は明るく笑って裕香にも答えた。
「普通に考えたら」
「普通に、なのね」
「これがな、地の利ってのはさ」
 それがどうかとだ、薊は戦いがはじまったのを観ながら裕香に話した。二人は接近戦でそれぞれの相手と闘っている。
 その中でだ、彼は言うのだった。
「変わるんだよ」
「その都度なのね」
「考え方次第で」
「そう、だからな」
 それでというのだ。
「鈴蘭ちゃん達はそれがわかっているから」
「勝つのね」
「絶対にな」
 そうなるとだ、薊はまた断言した。
「だから安心して観ていようぜ」
「それじゃあな」
 こう話してだ、そしてだった。
 裕香もここで二人の戦いを見守るのだった、そして。
 その中でだ、二人はというと。
 怪人達と激しい接近戦を繰り広げていた、その中で。
 鈴蘭は日本刀で怪人に攻撃を加えつつ言った。
「流石にやるわね」
「そうだろ、ウツボの武器は牙と素早さだけれどな」
「それだけでもないわね」
「そうさ、俺は怪人だからな」
 ウツボの能力に加えて、というのだ。
「これだけじゃないぜ」
「手もあればね」
「これもあるぜ」
 こう言ってだ、そのうえで。
 怪人は右足でソバットを仕掛けて来た、鈴蘭はその動きを目だけで見てだ。
 身体を右に動かしてかわした、ソバットはかわされそしてだ。
 微かに掠っただけで終わった、怪人はそれを見て舌打ちしてから言った。
「やるねえ」
「今のは見えていたわ」
「だからかわせたんだな」
「見えていたらかわすことは簡単よ」
 そうだとだ、動きをかわしても構えを取ったまま言うのだった。
「それだけでね」
「そうだな、けれどな」
 それでもだとだ、怪人は余裕を持ったままの言葉を出してみせた。
「これだけじゃないぜ」
「ソバットで終わりではないのね」
「言ったな、俺はウツボだぜ」
 ウツボの力を持っている怪人だというのだ。 
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