執筆手記
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没ネタその4 リーファのそーどあーとおんらいん
「――――くん。伊織くん」
…………眠い。もう少し寝かせてくれよ――――先生。
薄目を開けると、先生が馬鹿でかい箱を持っていた。
「――――伊織くん。ソードアート・オンラインが届いたぞッ!」
「…………おー。流石せんせー。俺の中のそんけーポイントが更にアップしたぜ…………眠いが少しログインして来る」
「少し待ってくれ、今インストールを終わらせるから」
先生がキーボードをカタカタと叩き始めインストール作業を開始する。
――――またあの世界に戻れるのか…………今度も上手くやらないとな。
「伊織くん。終わったぞ」
「…………おー。それじゃ、せんせー。全力で楽しんでくるから、後の事はよろしく」
「ああ。好きなだけ楽しんで来ると良い」
「…………じゃあな、せんせー。…………リンクスタート」
………………
…………
……
はじまりの街をすり抜けて、見かけたモンスターに初歩のソードスキルを発動させて叩き込む――――良し、鈍ってない。
「…………戦士の帰還だ。盛大に祝って貰おうか――――お前らの消滅エフェクトでな」
視界に入ったモンスターを次々と殲滅する。この程度のソードスキルを連発するぐらい、どうと言う事は無い。
レベルが上がり全てSTRに極振りする――――片手剣の耐久値が切れそうだ――――街で大量買いするか。
街に戻り、ほぼ廃品同然となった片手剣を売り払い、全身を覆う外装と残りの金で両手剣を買えるだけ買った。
――――さて、鐘が鳴るまで狩を続けるか。
………………
…………
……
鐘が鳴り、強制テレポートではじまりの街に戻される――――チュートリアルが終わり、外に駆け出す寸前――――。
明らかに見覚えのある顔。まず間違いない。何故彼女が此処に居るのか――――直接聞けば判るか。
彼女の腕を突いて振り向かせる――――間違い無い。
「…………おねーちゃん。一人? 知ってる人は居ないの?」
「君も一人? それとも迷子かな? 知ってる人の名前はわかる?」
背の高い彼女は少し屈んで俺に目線を合わせると、不安そうに問いかけてきた――――記憶持ちじゃないな。
「…………俺は一人だよ、知ってる人はこのゲームには居ない――――おねーちゃん。俺と一緒に第百層目指さない?」
「………………ごめんね。あたしは…………まだどうしたら良いのか、わからないんだ」
「…………そう。おねーちゃん強そうだから声を掛けただけだよ――――それじゃあね」
一歩引いて、そのまま踵を返し、予定通りの逃走ルートへ向かう。
「ちょっと待ってッ!? 何処行くのッ!?」
「…………第百層だよ――――じゃあね」
「待ちなさいッ! 本当に死んじゃうんだよッ!? もうゲームじゃないんだよッ!?」
「…………解ってるよ…………だから、さよなら――――おねーちゃん」
全力で駆け出し、混雑する一階の入り口を避け、階段を駆け上がり、二階から外に飛び降りる。
――――目指すは迷宮区、第一層の敵なら好きなだけ無双できる。
はじまりの街を出て、迷宮区の方角へ一直線に走る――――立ち塞がるモンスターを斬り飛ばしながら。
「――――ちょ、ちょっと待ちなさいってばッ!!」
――――振り返ると、彼女が居た――――驚いた。俺の全力疾走に着いて来れるとか、前の世界よりスペック高いんじゃないか?
「…………おねーちゃん、どうしたの? 良く着いて来れたね?」
「――――色々と言いたい事は山ほどあるけど――――君、このまま本当に第百層を目指す気?」
「…………そうだよ? 俺の強さは見たでしょ? 今から迷宮区に向かってレベル上げだよ」
「君もしかして、βテスター? あたしも参加してたけど、君みたいな子、全然噂にならなかったよ?」
「…………へー。おねーさんβテスターだったんだ――――俺も似た様なものかな――――だから心配しなくて良いよ?」
「そう言う訳にも行かないでしょ、君は確かに強いけど、死んじゃったらどうするの?」
「…………別に? 死ぬ時は死ぬんじゃないかな? やりたい事を我慢して死ぬより、やりたい事をやって死んだ方が良くない?」
「それは――――人それぞれだと思うけど――――あたしは君が心配なの」
「…………心配しなくて良いよ? どうとでもなるし」
「とにかく、あたしとパーティー組なさい――――これは決定事項だから!」
「…………無理やり誤魔化そうとしてない?」
「してないわよ」
「…………うん。解った。良いよ――――ただし――――迷宮区まで着いて来れたらね」
彼女の返事を待たずに全力で走り出す。
「――――ちょっとッ!? 待ちなさい――――待ちなさいってばッ!?」
………………
…………
……
第一層迷宮区。
はじまりの街から迷宮区はそんなに遠くは無いが、モンスターがある程度強い為、
レベル上げやクエストで装備を整える必要があるから遠回りする羽目になる。
だが、装備やクエストなんて些細な事を気にしなければ、直ぐにでも迷宮区に篭れると言う訳だ。
あれから徹夜で走り続け、迷宮区の入り口まで辿り着いた――――彼女は――――俺の隣で倒れてる。
「…………夜が明けちゃったねー。まあ、中の安全域で寝れば良いかー」
「…………………………や、約束。パーティー組むって、約束した…………でしょ…………」
「…………あれ? そうだっけ? おねーさんが勝手にそう思い込んだだけじゃない?」
「――――――約束ぅうぅッ!!」
「…………はいはい、冗談だよ。おねーさん強情だね」
メニュー画面からパーティー申請を送る。
「――――よろしくね、えっと、クラディール君」
「…………よろしく、リーファ――――あ、言い忘れてたけど俺とっくに成人してるから、背が低いだけだよ。君付けは要らないから」
「え? あたしよりも――――お兄ちゃんよりも年上っ!? でも、おねーちゃんって呼んでたでしょッ!?」
「…………お嬢ちゃんとか、お嬢の方が良かった?」
「えっと、それは…………ちょっと」
「…………さあ、気を取り直して、二週間ぐらい篭ろうか――――まずは手持ち武器の耐久値が切れるまで」
「――――ええッ!? ご飯と睡眠はどうするのッ!?」
「…………安全域で寝れば良いし、不味いパンで良ければ、三食とまでは行かないけど、それなりに有るよ?」
「いやッ! 絶対嫌よッ!! 街に戻るのッ!! やわらかいベットで寝て、美味しいご飯食べるのッ!!」
「…………じゃあ帰れば? 俺は此処に住むよ、何時でもレベル上げ出来る環境って素敵じゃん?」
「――――そう言う事じゃなくて…………――――わかったわよ。一緒に行くよ…………」
「…………あ、髪型ぐらいなら変えられるみたいだから、金髪ポニーテールが良いな、リーファって名前にも合いそうだし」
「うぅ…………まあ、良いけどね――――元々は金髪ポニーだったし」
リーファがメニュー画面から髪型を操作し決定した。
「…………さて、改めてレベル上げに行きますか」
「もう好きにしてよ…………」
――――――――――――没ネタ此処まで。
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