執筆手記
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没ネタその3 注意マザーズロザリオ二週目・クラディールにまた憑依しました
ある日、目が覚めたらまた赤ん坊だった。
それから数年が過ぎ、見覚えのある親と見覚えのある家。
俺は間違いなくSAOの世界に生まれ、そしてまたクラディールに憑依したらしい。
前回は此処がSAO世界だと気付いたのは、茅場晶彦が世間に顔を出し始めた中学の頃だった。
だが今回は違う。前回は色々とお節介を焼いたが、今回は好き勝手やらせてもらおうか。
更に数年後。二千十一年。俺はとある場所に来ていた。
主役達も今は四歳~五歳くらいだ、シリカも生まれて数ヶ月。今の俺を止められる者は茅場ぐらいのものだろう。
まだ生まれてないが言わせてもらおうか。
「ハッピー☆バースデイ。俺のささやかなプレゼントだ」
俺は重力に身を任せ――――――深い眠りについた。
………………
…………
……
どれくらい眠っただろうか? 起きて見れば真っ白い部屋に寝かされていた。
『わたしの声が聞こえますか?』
「あぁ、聞こえてる」
『今そちらに向かいますので、少し待っていて下さい』
男の声が途切れると、白衣を着た――――――いかにもお医者さんと言う様なアバターが目の前に現れた。
「はじめまして、わたしはあなたの担当医で倉橋と言います」
「担当医? 神様じゃないのか?」
「いえいえ。突然の事で驚かれたのでしょう、わたしは神様ではありません。暦とした医者ですよ」
「身体がゲームのCGみたいになってるのはそのせいか?」
「そのとおりです。あなたは今も眠り続けていて、脳に直接アプローチを掛けているんです」
「へー、科学の進歩はすごいな。それで俺に何か用か? 夢から覚めないんで起こしに来たとか?」
「まぁ、そんなところです。 ですがどうです? このまま起きるのは少し損だと思いませんか? もう少し夢の中で遊んで見ませんか?」
「遊ぶのは良いけど、何やって遊ぶんだ?」
「ボードゲーム等、何種類かインストールしてありますから、一緒にやってみましょうか」
それから数年。俺は倉橋医師と白い部屋で過ごした。
倉橋医師は他の仕事が入ると出て行ってしまうので、ボードゲームを広げてCPUを相手に暇を潰したり。
偶にオンラインに接続して倉橋医師以外の人とも遊んだりもした。
白い部屋には両親もやってきて、色々と言われたが特に気にする話は無かった。全て解りきっていた事だったから。
そうやって、俺の時間は過ぎて行った。
……
…………
………………
ゆっくりと目が覚めていく。
夢と現実のまどろみの中、どんな夢を見ていたかなんて思い出せないけど。ボクは幸せを噛み締めていた。
「ユウ君。そろそろ起きろ。朝食を食べる時間が無くなるぞ」
「食べる。ママのごはん食べる」
ボクは身体を起こして姉ちゃんに挨拶をする。
「おはよう。姉ちゃん」
「うん。おはようユウ君。早く支度をしろ。父が出勤してしまうぞ」
「パパとも一緒に朝ごはん食べる!」
すっかり目が覚めた。パジャマを着替えて姉ちゃんと一緒にキッチンに向かう。
「藍。ユウは起きた?」
「あぁ、今起きた所だよ」
「今起きたー!」
「早く顔を洗ってらっしゃい。朝食が冷めちゃうわ」
「はーい!」
廊下を走る僕の足音が家の中に響く。
テレビから今朝のニュースが流れている。ママが朝食を作ってパパがコーヒーを飲みながら新聞を読んでる。
顔を洗うと何時もどおり姉ちゃんがタオルを渡してくる。
「ほら。早く席に着くぞ」
「うん!」
パパが新聞を畳んで全員が食卓に着いた。神さまに感謝を祈り十字を切る。
「父と子と聖霊のみ名によって。アーメン」
今日もママの美味しい朝食を食べて一日が始まる。パパや姉ちゃんと家族揃っての朝食はとても楽しい。
「ユウ君。学校での調子はどうだ?」
「絶好調だよ。勉強も首位だし。校内マラソンもぶっちぎりで一位取れたし。初等部じゃ歯応え無くてつまらないよ」
「そろそろ大切な時期なんだ。事故には気を付けてくれよ?」
「うん。わかってるよ。姉ちゃんの方はどうなの? 大学院って面白い?」
「毎日モニターと資料との睨めっこだ。ユウ君には無理だろう」
「むー。ボク、頑張って勉強すれば大学院に行けるよ、姉ちゃんとは双子だもん。飛び級だって楽勝だよ!」
「………………今だともう時間が無い。わたしだって二年無駄にした。だがもう少しで会える筈だ」
「…………会える……かな」
「会えるさ、必ずな」
姉ちゃんがボクの頭をやさしく撫でてくれる。
………………そうだよね、そうだよ。ボクも姉ちゃんももっともっと幸せになるんだ。
今までの分――――――全部取り返すんだ。
「――――ユウ君。キミは真実を知る覚悟はあるか?」
「真実を知る? 姉ちゃん、何言ってるの?」
「真実を知る覚悟があるのなら、明日、わたしに着いて来い」
「………………大切な事なんだね?」
「あぁ、わたし達は知らなければならない――――目を背けていた真実を……」
「姉ちゃん。この病院って…………」
「――――そう。わたし達家族が最期を迎えた病院だ」
「此処に入るの? もうボク達は健康だよ? こんな所に近付きたくないよ」
「そう言うな。わたしだって目を背けていた――――だから、気付かなかった。いや、考えたが気付かない振りをし続けた」
「…………姉ちゃん」
「なぁ、ユウ君。わたし達家族が健康に暮らしているこの世界で…………果たしてあの病院のあの病室には誰が居るんだろうな?」
「姉ちゃん――――それは別の誰かだよ。ボク達みたいな子があの病室に居るだけだよ…………きっとそれだけだよ」
「魔が差したんだ。あの病室には今誰が居るんだろうと…………何故わたし達は健康で居られるのかと…………」
「姉ちゃん。それは考えちゃいけないよ。この世界でボク達は健康なんだ――――全部取り替えそうよ、出来なかった全部」
「違う。違うんだそんな心算じゃなかったんだ。ユウ君。わたし達は行かなくちゃ、あの病室へ行かなくちゃ」
――――――――――没ネタ此処まで。
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