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戦国異伝

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第百八十七話 舞い乱れる鳥その五

「怖くはない、むしろ家臣にすればな」
「その智恵がですか」
「織田家の大きな力となる。そして毛利家二百四十万石が傷つかず織田家のものとなる」
「それは確かに大きいですな」
「それ故毛利家は滅ぼさずじゃ」
 そうして、というのだ。
「軍門に降し組み入れる」
「そうされるのですな」
「だからじゃ。新五郎達の力も使わせてもらうぞ」
 林達政に長けた者のそれもだというのだ。
「毛利家をl組み入れる為にな」
「さすれば」
「そしてその為にじゃ」
「この備前での戦に勝つ」
 毛利家をそのまま軍門に降す、その為にもというのだ。
「よいな」
「さすれば」
 林は信長のその言葉に頷いた、織田軍十八万は備前に入りそれからだった。
 西に進んでいた、その彼等に対して。
 三兄弟が率いいる毛利軍三万は迫っていた、そして。
 隆元はその中でだ、二人の弟達に言った。
「ではな」
「はい、遂にですな」
「織田軍に近付いてきましたな」
 そうなってきたことをだ、元春と隆景もわかって言う。
「それでは」
「このままですな」
「夜に織田軍は寝静まったところで」
「一気に」
「攻めるぞ」
 夜襲をするとだ、ここでも話すのだった。
「それでよいな」
「はい、では」
「今夜にでも」
 そしてだ、隆景が二人の兄に述べた。
「織田軍は山の近くにおります」
「備前も山が多いからのう」
 元春が弟に応える。
「だからそれは当然じゃな」
「はい、そして我等ですが」
 隆景が言うのはこのことだった。
「緑の具足に服、旗に武器に陣笠と」
「全てが緑だからじゃな」
「木の色です」
「そして山は木に満ちている」
「どの木も」
「だからですな」
「ここは」
 どうすべきかというのだ。
「山の木々の間に潜み」
「そこからじゃな」
「夜に攻めましょう」
「そういうことじゃな」
「さすれば幾ら十八万の大軍でも」
 彼等よりも遥かに大きな数の相手でもだというのだ。
「勝てます」
「それが出来るな」
「ですからここは」
「そうじゃな、それがよい」
 隆元も隆景のその考えをよしとして答えた。
「ここはな」
「さすれば」
「この戦に毛利家がかかっておる」
 それならばというのだ。
「山の木々に紛れてな」
「そうして潜み」
「夜襲を仕掛けるぞ」
 まさにだ、そうするというのだ。
「ではよいな」
「はい、では」
「いよいよ」
「今夜じゃ」
 この日にというのだ。 
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